「メルケル後」のドイツでは、社会民主党(SPD)、緑の党、自由民主党(FDP)が12月にも初の三党連立政権を樹立する公算が強まっている。新政権は二酸化炭素(CO2)排出量の削減に拍車をかけるために脱石炭を8年前倒しするとともに、再エネ拡大に力を入れる方針だ。
目次[非表示]
9月26日の連邦議会選挙では、保守政党キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が得票率を前回の選挙に比べて9ポイント近く減らし、敗退。CDU・CSUの首相候補だったアルミン・ラシェット氏は、CDU党首辞任の意向を表明している。これに対しSPDと緑の党、FDPが得票率を増やした。
三党は10月15日に準備協議を終えて、政策合意文書を公表。10月27日に連立のための正式交渉を開始する。SPDのオラフ・ショルツ首相候補(現財務大臣兼副首相)は、「11月末までに交渉を終えて連立契約書を完成させ、12月の最初の週には新政権を発足させる」と述べており、本交渉が決裂しない限り、ショルツ氏がメルケル首相の後継者になることは確実だ。
Start der Koalitionsgespräche: Neue Regierung schon Mitte Dezember? | tagesschau.de
環境保護政党・緑の党は1998年~2005年のシュレーダー政権に参加した時以来、16年ぶりに政権入りする可能性が強まっている。同党は前回の選挙に比べて得票率を5.9ポイント増やし、41年前の結党以来最も高い得票率を記録して第3党の地位に就いた。
連立政権が誕生するかどうかの焦点は、緑の党とFDPが合意できるかどうかだ。その理由は、両党の路線の違いにある。緑の党はSPDと同じ左派中道政権である上、エコロジーを重視している。同党は政府主導で、法律による強制化や禁止措置によってCO2削減を進めようとしている。これに対し企業経営者を支持基盤とするFDPは、「小さな政府」を重視し、イノベーションや市場メカニズムによって地球温暖化に歯止めをかけるべきだという立場を取っている。法律による義務化や禁止措置は企業に不必要なコストをかけるので、なるべく避けるべきだというのだ。
だが10月15日に発表された合意文書を読むと緑の党の筆跡が濃い。日本の衆院選挙とは対照的に、今回の連邦議会選挙では、「地球温暖化と気候変動にどのようにして歯止めをかけるか」が最も重要な争点の一つだった。緑の党は合意文書の中に、選挙マニフェストに記した公約の内容をかなり盛り込むことに成功した。
Papier für Ampel-Koalition: Worauf sich die Sondierer geeinigt haben | tagesschau.de
たとえば同党は、他の二党を説得して、「理想的には、石炭火力・褐炭火力発電所の全廃を2038年から8年間早めるべきだだ」という一文を文書に盛り込むことに成功した。メルケル政権は、2038年までに脱石炭を実現する方針だが、緑の党は一貫して2030年の実施を求めてきた。つまりこの一文が文書に盛り込まれたことは、緑の党にとって、重要な勝利だ。電力業界や産業界にとって厳しい内容であり、FDPは譲歩したと言わざるを得ない。また緑の党の次の公約も合意書に採用された。
だがこれらの政策は、緑の党が選挙マニフェストの中に明記していた気候保護政策のほんの一部にすぎない。合意文書には、次の公約が入っていない。
一方で電力の安定供給のために、近代的なガス火力発電所の新設も・・・次ページ
エネルギーの最新記事