第11回 電力レジリエンスワーキンググループ 地震や台風、豪雨に対応できる電力システムを構築する | EnergyShift

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第11回 電力レジリエンスワーキンググループ 地震や台風、豪雨に対応できる電力システムを構築する

第11回 電力レジリエンスワーキンググループ 地震や台風、豪雨に対応できる電力システムを構築する

2020/07/16

審議会ウィークリートピック

日本では、2018年、2019年と続けて、地震や台風などの自然災害に見舞われ、電力供給に大きな被害が起きた。2020年の新型コロナウイルスによる感染拡大もまた、自然災害といえるだろう。こうした災害に対し、いかにレジリエンスを高めるかは重要な課題だ。
今回は、第11回「電力レジリエンスワーキンググループ」において検証された、レジリエンス対策の進捗状況について報告する。

2018年の自然災害を機に設置された新しいワーキンググループ

2020年6月16日に、第11回「電力レジリエンスワーキンググループ」(以下、電力レジWG)が開催された。電力レジWGは2018年10月に新たに設置されたWGである。2018年は、西日本豪雨や台風21号、北海道胆振東部地震など多くの自然災害が発生し、電力供給に大きな被害を与えた年である。

電力インフラのレジリエンス(強靭性)を高め、停電の早期復旧に向けた取組や国民への迅速かつ正確な情報発信等、災害に強い電力供給体制を構築するための課題・対策を議論することを目的として、総合資源エネルギー調査会「電力・ガス基本政策小委員会」と、産業構造審議会「電力安全小委員会」の下に、合同ワーキンググループとして電力レジWGが設置された。

2018年には数回のWG開催を経て、一旦その年の11月に「中間とりまとめ」が作成・公表された。

しかしながら、翌2019年には台風15号が関東に上陸し、千葉県を中心とした広域に甚大な被害を与えたことにより、約1年ぶりに電力レジWGが開催され、前年に取りまとめられた対策の取組状況のフォローアップ等がおこなわれた。

また、レジリエンス強化のために、電力レジWGだけでなく、「持続可能な電力システム構築小委員会」、「令和元年度台風15号における鉄塔及び電柱の損壊事故調査検討WG」、「再生可能エネルギー主力電源化制度改革小委員会」、「石油・天然ガス小委員会・鉱業小委員会」など、複数の他の審議会等においても、同時並行的に制度面での対策検討がおこなわれた。そして2020年1月には、台風15号の停電復旧対応を中心とした、検証報告書が取りまとめられた。

第11回では2018年、2019年の対策進捗とフォローアップが目的

今回の第11回電力レジWGは、2018年・2019年報告書で取りまとめられた対策の進捗状況の確認、フォローアップを目的としている。

電力レジWGで検討された対策の論点は無数にあるため、ここでは代表的なものだけを抜粋した(図1)。被害状況の迅速な把握・情報発信や早期復旧、復旧までの代替供給など、広範囲にわたる論点が検討されている。東京電力パワーグリッドなどの一般送配電事業者による対策、政府による対策(法制度の整備等)が一体となって検討・実行されている。

出所:第11回電力レジリエンスWG資料より筆者作成

今年6月には、レジリエンス強化の観点から電気事業法が改正されているが、これは2018年の中間取りまとめをベースに、災害時における一般送配電事業者間の連携を制度的に求めるためであった。

改正電気事業法の災害時連携計画に関する制度については、台風シーズンに備えるため今年7月1日を施行日とした。これにより、一般送配電事業者は電力広域的運営推進機関(以下、広域機関と呼ぶ)を経由して、速やかに災害時連携計画を国に届け出を行うことが求められる。
後述するように、第11回電力レジWGでは、その「災害時連携計画(案)」が公開された。

災害復旧費用の相互扶助制度

電力レジWG検証取りまとめ(2020年1月10日)により、電気事業法改正において、一般送配電事業者の復旧費用や電源車派遣における相互扶助制度が創設された。自然災害が発生した特定エリアの一般送配電事業者だけが費用負担するのではなく、全国で扶助しあうことを目的とした制度である。一般送配電事業があらかじめ一定の金額を広域機関に拠出しておき、発災時には広域機関が被災事業者に対して災害復旧に係る費用の一部を交付する仕組みである。

とはいえ、仮にどのような災害でも費用全額が扶助されるならば、モラルハザードの問題が生じ得る。よって、相互扶助制度を詳細設計するにあたり、以下表1の左側の論点について扶助対象とする一定の基準をあらかじめ定めておく必要がある。

第11回WGでの議論の結果、表右のように、例えば停電軒数は10万戸以上の場合とするなどの要件がおおむね合意された。

出所:第11回電力レジリエンスWG資料より筆者作成

東京電力からの報告

東京電力(ホールディングスおよびパワーグリッド)からは、2019年台風15号対応を踏まえた今夏までに検討すべき課題の対応状況が報告された。対策実施の一例がスマートメーターの活用である。

停電復旧に関して、台風15号では全容把握に時間を要したこと、工事力の有効活用ができなかったことの反省から、家庭など低圧線以下の停電状況の把握向上策の一つとして、スマートメーターが活用されている。

従来は、家庭の需要家からの停電連絡を受けてその都度、作業者が現地に出向していたが、現地到着時点ではすでに停電が解消していたこともあった(結果として、出向が無駄になっていた)。本来優先的に出向すべき地点が分からず、結果として停電解消が遅くなるという問題が生じていた。

対策実施後は、スマートメーターの電圧・電流値データを活用し、各戸を停電中/停電解消に分類できるようになった。これにより、出向前に電話確認することによって不必要な出向を回避できるようになった。また、スマートメーターデータを別途新規開発した「見える化」システムと連携させることにより、視覚的に停電箇所の確認が可能となった。これにより、需要家から連絡を受けていない停電継続中の家に対しても、「プッシュ型」の現場出向・停電解消対応が実施されることとなった。

出所:第11回電力レジリエンスWG資料

電気事業連合会からの報告

電気事業連合会(電事連)からは、「災害時連携計画(案)」が報告された。災害時連携計画では、一般送配電事業間の応援要請の手続きが定められている。
例えば、連絡体制フロー(抜粋)は、以下のようなものである(表2)。

出所:第11回電力レジリエンスWG資料(凡例 : ● 起点箇所、〇 関係箇所)

また2019年台⾵15号の際には、復旧⽅法は「仮復旧⼯法を原則」とすることの認識が各社で統⼀できておらず、仮復旧⼯法の作業⼿順が統⼀されていなかったため、現場での復旧作業指⽰の混乱・輻輳が生じた。この反省を踏まえ、⾮常災害時の他社応援は、応急送電の迅速化を目的とした、「仮復旧」をおこなう⽅針で統⼀された。

また従来から、一般送配電事業者の各社間で、使用している工具等・設備仕様が異なることが指摘されていたが、台風15号の際にはこれが原因となり、復旧に時間を要することもあった。
このため、仮復旧に用いる機材・⼯具の統⼀としてまずは優先的に、全国の電線径に対応した、「電線被覆剥取⼯具(マルチホットハグラー)」を作製し、各社が今夏までに配備することとなった。また、各社「電源⾞」の操作マニュアルを整備するとともに、今後の新規購⼊の電源⾞仕様統⼀に向けた検討が開始された。
これらの仕様統一・共通化は、停電復旧の迅速化に有効なだけでなく、設備購入費用の低減、ひいては託送料金の抑制にも役立つはずである。

全国電力関連産業労働組合総連合からの報告・要請

電力会社の労働組合の全国組織である「全国電力関連産業労働組合総連合(電力総連)」からは、災害復旧時に現場で働く作業員の観点から、全力で復旧作業に従事できるような環境整備が強く要請された。特に今般の新型コロナ禍のなかで、感染リスクの存在を前提とした感染予防対策を講じながらの業務に理解を求めた。

新型コロナ等の感染症リスクが存在する中では、都道府県を跨ぐ移動や宿泊施設等の確保が困難となることや作業員の受け入れ拒否といった事態も想定される。感染拡大の防止と被災地の停電復旧のいずれを優先するのかは当該自治体の判断となるが、国から自治体に対して要請・指示する責任の明確化が求められた。

今後、「自然災害による停電」と「感染症拡大」の複合災害が発生しうるなか、電力レジリエンスの強化には、非常に難しい舵取りが求められるだろう。これは決して国や一般送配電事業者だけの課題ではなく、新規参入の小売電気事業者や発電事業者、一般消費者すべてのアクターが備え、連携し、対処すべき問題と考えられる。

(Text:梅田あおば)

梅田あおば
梅田あおば

ライター、ジャーナリスト。専門は、電力・ガス、エネルギー・環境政策、制度など。 https://twitter.com/Aoba_Umeda