FIT発電所と地域の共生を図る:第21回「再エネ大量導入小委」 | EnergyShift編集部

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FIT発電所と地域の共生を図る:第21回「再エネ大量導入小委」

FIT発電所と地域の共生を図る:第21回「再エネ大量導入小委」

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審議会ウィークリートピック

経済産業省では再エネの主力電源化の課題を議論・検証する「再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」が行われている。 毎回多様な議題が検討されているが、第21回での会合で行われた「地域に根差した再エネ導入の促進」と、「回避可能費用に係る激変緩和措置の取扱い」の2点について取り上げたい。どちらもFITと地域間での問題となる。

再エネの地元理解の促進に向けた取組

2020年10月26日、再エネを主力電源化するにあたり、発電側・電力系統側の双方から、必要となる制度を検討し措置する審議会である「再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」(以下、再エネ大量導入小委)の第21回会合が開催された*。
毎回多様な議題が検討されているが、今回は主に「地域に根差した再エネ導入の促進」と、全く異なるテーマであるが「回避可能費用に係る激変緩和措置の取扱い」の2点について取り上げたい。

分散型電源である再エネが大量に存在する社会とは、あらゆる自治体・地域社会に、地域特性に応じた様々な再エネ電源が存在する社会であると考えられる(再エネには熱生成・利用設備もあるが、単純化のためここでは発電・電源に絞った記述をおこなうことをご了承願いたい)。

化石燃料電源と比べれば相対的に環境負荷の小さい再エネであるが、今まで存在しなかった「発電所」が地域社会に身近に作られ存在することは、地域社会となんらかの軋轢を生む可能性もある。再エネが一過性のものではなく、持続可能な電源・事業として導入が拡大していくためには、再エネが地域社会から「受容される」ことは、最低限満たすべき課題と考えられる(本来は単なる「受容」ではなく、地域社会が主導する事業が望ましいと考える)。
そのためには発電事業の開始前の段階から、発電段階、事業終了まで一貫して、再エネ事業が適切に運営されることが不可欠である。

FIT法では、自治体条例を含む関係法令を遵守することがFIT認定の条件であることはもとより、FIT事業計画策定ガイドラインにおいては、地域住民との適切なコミュニケーションを図ることが努力義務化されている。

それでも不適切な発電事業への懸念が残ることから、資源エネルギー庁はWebサイト上に、「不適切案件に関する情報提供フォーム」を設置して地方自治体や住民からの懸念事例の相談を受け付けている。2016年10月から2020年9月までに受け付けた相談件数574件の内訳は図1、図2のようなものとなっている。

出所:いずれも再エネ大量導入小委事務局資料

相談内容としては、

  • ① 地元の理解を得ないまま事業が進んでいくこと(事業者の情報が不透明、説明会の開催や住民への説明等の対話が不十分)
  • ② 適正な発電事業が一貫しておこなわれるか(柵塀・標識の未設置やメンテナンス不良、事業終了後の廃棄)
  • ③ 安全に関する取組(構造強度への不安、パネル飛散等)

等への懸念が寄せられている。

これらの懸念に関して多くの地方自治体では、FIT認定後ではなくFIT申請時点から発電事業者としっかり連絡を取りたいと考えている。よってこれら課題への対策の一つとして今後、国は自治体との連携強化・情報提供の一環として、電源が立地する自治体に限り、FIT認定申請があった事業者名、設置場所等の法令遵守状況の確認のために必要な情報を共有することとした。

また、従来のFIT法では再エネ発電事業計画に記載された事項の一部のみが経済産業省ホームページにおいて公表されているが、改正再エネ特措法(再エネ促進法)では、再エネ発電事業計画に記載された事項に留まらず、認定計画の実施の状況に関する情報の公表に関する規定が設けられた。これにより、発電設備の稼働 / 未稼働の状況や廃棄等費用の積立てに関する情報等が新たに公表される予定である。

柵塀・標識の未設置事業者への対応

FIT法では、発電設備に標識および柵塀等の設置が義務付けられている。

資源エネルギー庁では、住民や自治体から情報提供フォーム等に寄せられた情報をもとに、口頭指導や現場確認を行い、未設置の事業者に対して改善を促している。2019年11月以降に対応した件数は295件におよんでいる。しかしながら、柵塀等設置状況調査(2019年度実施。162件)によれば、調査対象事業者のうち、柵塀は5.6%が、標識については44.4%が未設置であった。

よって今後資源エネルギー庁では、外部委託等も活用しながら通報案件への対応体制を強化するほか、新たに低圧太陽光発電設備についてはFIT認定申請時に、柵・標識の設置場所の提出を求めることとした(高圧以上は従来から措置済み)。また全ての案件に対し、供給開始までに柵・標識を設置することについて、新たに誓約書を求めることとした。

事後的な太陽光パネル過積載等への対応

太陽光発電において「事前に」過積載すること自体は決して否定されるものではなく、系統容量の有効活用の観点ではむしろ望ましいことと考えられる。他方、事後的に太陽光パネル容量を一定規模以上増設することは、認定時点で想定していなかった追加的な国民負担を生じさせることとなるため、調達価格の変更事由となる。事後的な蓄電池の追加についても原則、調達価格の変更事由となる。

200%を超える過積載をおこなう場合でも、設備利用率は23~24%が上限となると考えられる。ところが認定設備容量と実際の発電量の比較において、設備利用率が30~40%にも上る太陽光発電所が存在する。これらは無届でパネルの増設・蓄電池増設等をおこなっている疑いが持たれている。

これら設備利用率が極めて高い案件(無断増設疑義のある案件)については、報告徴収等を実施し、変更認定申請を促す予定である。

*正確には、第9回再生可能エネルギー主力電源化制度改革小委員会との合同会議

FIT回避可能費用 激変緩和措置の終了

これは主に小売電気事業者(特に新電力)に関係する議題であるが、間接的に既存のFIT発電事業者にも関係する論点である。回避可能費用とは、小売電気事業者がFIT電気を調達する際の実質的な調達費用である。

出所:筆者作成

図3のように、2016年度以前のFIT電気の買取義務者であった小売電気事業者は、FIT調達価格(例えば2012年度太陽光であれば40円/kWh)をFIT発電事業者に支払うが、同時に費用負担調整機関から「交付金」(例えば32円/kWh)が交付される。交付金(32円/kWh)は、買取費用40円/kWhと回避可能費用(例えば8円/kWh)の差額として事後的に導出された金額である。

回避可能費用とは、非常に単純化して言えば、「燃料の焚き減らし」額に相当する。電力会社はFIT電源由来の電気を買い取ることで、その分、火力発電所等の出力を減らすことが可能となる。この電力会社が節約できた(回避できた)費用、主に燃料の焚き減らし相当額が回避可能費用である。

何を幾ら回避できたのか? という考え方は過去に2度変更されており、これが表1で年度によって回避可能費用単価の算定方法が異なる理由である。

出所:再エネ大量導入小委事務局資料

この算定方法の変更に伴い、買電する小売電気事業者の事業環境変化を緩和するために、「激変緩和措置」が設けられた。これは2020年度末までの時限措置とされており、予定通り激変緩和措置を終了させることが今回の小委で確認された。

図4のように、旧算定方法(2012年度:青色線)と市場連動価格(緑色線)は、例えば2017年時点では4円/kWh程度の差があったが2019年度では0.5円/kWh程度まで縮小しており、激変緩和措置廃止の小売電気事業者に対する影響は相対的に小さくなったと考えられる。

出所:再エネ大量導入小委事務局資料

FIT発電事業者に対する影響

図4の緑色線はJEPXの市場価格を表している。つまり2017年当時、小売電気事業者はFIT電気を青色線の価格(6.4円/kWh程度)で、JEPX価格よりもかなり割安に調達することが可能であった。

これにより小売電気事業者、特に新電力はFIT電気の買電にあたり、FIT発電事業者に対して一定のプレミアム金額を上乗せして支払うことが可能であった。

激変緩和措置が終了するということは、小売電気事業者にとって、FIT電気の調達価格がJEPX価格と同額となることを意味しているため、このようなプレミアムを支払う余裕は無くなると考えられる。

激変緩和措置が終了するにあたり、従来からプレミアム額を受け取っていたFIT発電事業者の多くは、すでに新電力から買電契約の改定(プレミアムの減額・廃止)もしくは買電契約終了の通知を受け取っているものと考えられる。

FIT発電事業者は、少しでもよい契約条件を求めて新たな売電先(新電力)を探すと考えられるが、状況はどの新電力も同じであるため、徒労に終わる可能性もある。

結果として、「安心」を求めて旧一般電気事業者へ売電先を切り替えるFIT発電事業者も現れると予想される(現時点切り替えた場合、買い手は旧一電・送配電事業者となる)。

激変緩和措置の終了は、一部のFIT発電事業者と新電力の関係終了へと繋がる結果となった。

(Text:梅田あおば)

梅田 あおば
梅田 あおば

ライター、ジャーナリスト。専門は、電力・ガス、エネルギー・環境政策、制度など。 https://twitter.com/Aoba_Umeda

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