脱炭素から波及するエネルギー価格上昇に日本の製造業は耐えられない?! ウクライナ侵攻が契機に | EnergyShift

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脱炭素から波及するエネルギー価格上昇に日本の製造業は耐えられない?! ウクライナ侵攻が契機に

脱炭素から波及するエネルギー価格上昇に日本の製造業は耐えられない?! ウクライナ侵攻が契機に

2022年04月08日

ウクライナ侵攻や関東圏で起きた停電危機が、日本の製造業に脱炭素化を促す「クリーンエネルギー戦略」の見直しを迫っている。エネルギー価格をはじめとした資源高がインフレを加速させる中、脱炭素に伴うコスト負担に企業が耐えられず、産業競争力を失いかねないためだ。

再エネ転換は産業界にどれほどのコスト負担を強いるのか

経済産業省が3月23日開催した第5回グリーントランスフォーメーション推進小委員会で、座長を務める白石 隆 熊本県立大学理事長は、ウクライナ侵攻を機に変貌したエネルギーの安全保障について、「ついこの間までCO2削減こそが人類最大の課題であり、世界のすべての人々が脱炭素に向かっていくであろうという期待があったが、ほぼ崩れたのではないか。今一度立ち止まり、クールに日本のエネルギー政策を考え直すべきだ」と語った。

天然ガスなどの資源高はさまざまなモノの価格を高騰させており、2050年どころか2030年までの間でさえ、大きなボラティリティ(価格変動)が起こりうる。経済成長の低迷とインフレが同時に起こる「スタグフレーション」への警戒感は増し、企業業績への影響が危惧されている。

こうした中、日本の製造業はエネルギー消費の7割をCO2排出量が多い化石燃料や石油製品でまかなっている。脱炭素に向けた水素や再生可能エネルギーへの転換は、産業界にどれだけのコスト負担を強いるのか。どうすればそのコスト増を乗り越えられ、脱炭素を日本の経済成長につなげることができるのかが課題となっている。

6月をめどに、製造業の脱炭素化を促すクリーンエネルギー戦略の策定を目指す小委員会は、この日、デロイト トーマツ コンサルティング、マッキンゼー・アンド・カンパニー、そして野村 浩二 慶應義塾大学教授を招き、脱炭素がもたらすエネルギー価格の上昇および製造業への影響分析を議論した。

その見通しは、「2030年にはセメント製造において、エネルギー価格が最大290%上昇し、製造コストが約2倍に跳ね上がる」「水素・アンモニア、CCSなどの高コスト技術の導入が迫られる2030年以降、1トンあたりのCO2削減コストはEUの36倍にまで拡大する」「エネルギー価格高騰への日本経済の耐性は脆弱化しており、再エネ転換や省エネを無理に強いれば、鉄鋼や化学などのエネルギー多消費産業を海外に追いやり、日本の賃金水準の低迷を深めるだけだ」といずれも厳しく、クリーンエネルギー戦略の見直しを迫るものであった。

2030年、46%のCO2削減を目指すと日本企業はどうなる? 3者の分析と見解とは・・・次ページ

藤村朋弘
藤村朋弘

2009年より太陽光発電の取材活動に携わり、 その後、日本の電力システム改革や再生可能エネルギー全般まで、取材活動をひろげている。

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