国際エネルギー機関(IEA)が2021年11月に発表したレポートによると、世界には合計19基のDACプラントが稼働しているが、現在のDACの回収・除去能力は年間約1万トンしかないとされている。
さらに、現状では、IEAが試算するCO2回収の役割は、天然ガス、バイオマスの寄与が今後大きくなるとされており、DACの割合は相対的に低いとしている(図2)。
図2:CO2回収の割合
出所:IEA
DACの最大の課題として、まず1つ目に、回収に大量のエネルギーがかかるという点があげられる。地球環境産業技術研究機構 (RITE)によると、大気からのCO2分離回収は、回収エネルギーの9割以上をCO2脱着エネルギーが占めるため、発電所等の大規模発生源に比べて1桁増えるとの試算がでている。そのため、再生可能エネルギーを使わない限り、カーボンマイナスにはならない。こうした背景から、新規吸収技術の開発(エネルギー低減)が実用化に不可欠となる。
2つ目の課題は、経済合理性である。すでにDACはコストがかかりすぎるという批判もあるという。DACの場合、大気中のCO2濃度は400ppmと、非常に薄いため、火力発電排ガスの5~12%に比べて、回収コストは、少なくとも排ガスの約3倍は高いとされている。現在、CO2を1トン回収するのに500~1,000ドル(約5万7,000~11万4,000円)ほどかかるとみられ、500ドルとしても日本のCO2の年間排出量10億トンを回収するには57兆円と国家予算の半分以上がかかる。
また、DACは設置場所に基本的な制約はなく、燃焼排ガスのような前処理設備 (脱硫等)が不要であるというメリットがある一方、気温や湿度、天候による影響が存在する。これらの影響も考慮し、低コストでCO2を回収可能なプロセス・ 装置技術を開発し、実証的な運用を進める必要がある。
3つ目は、回収したCO2をどこに貯留するか、である。日本は国土が狭いため、漏洩リスクがなく、長期間安定して貯蓄できる場所探しが課題だ。回収したCO2の利用や貯留にも事業を広げていくことが同時に不可欠である。
このように、DACは実行すれば単純にCO2がマイナスになるというだけでなく、課題も多い。カーボンマイナスの実現には、再エネの大幅な拡大が必須であり、同時にその利用拡大を促す蓄電池、水素、合成燃料などの技術革新も必要だ。
脱炭素の潮流により、今後も企業にとって成長を続けるために脱炭素ビジネスは欠かせない戦略となる。今後のDAC技術開発の推進のためにも費用がかかるため、政府からの助成金や税額控除など、公的な支援も重要な鍵となり、官民一体となった取り組みが求められている。CO2濃度10~数%程度からの分離・回収技術の確立など、今後の研究開発の行方にも注目したい。
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