投融資先の企業がどれだけ温室効果ガスを排出しているのか。環境省は金融庁と組み、金融機関による脱炭素への働きかけ(エンゲージメント)などの強化に向け、CO2排出量の測定・分析手法づくりに乗り出す。8月6日から金融機関の参加を募集し始めた。
企業の脱炭素に向けては、金融機関による資金供給やエンゲージメントなどが喫緊の課題となっている。特にCO2排出が多い鉄鋼や化学などの重厚長大産業や、資本力が決して厚くない中小企業にとっては、金融機関などによる資金提供などがなければ脱炭素化を進めることが難しいためだ。
背景にあるのが、排出量の多い産業や企業に対する国際世論や金融機関から厳しい視線だ。日本のメガバンクもCO2排出が多い石炭火力発電などの投資から撤退する動きが広がりつつある。さらに欧米などでは「炭素国境調整措置」の導入が議論されており、日本においてもカーボンプライシングの導入機運が高まりつつある。
また環境省では大手企業のみならず、中小企業の脱炭素化を推進している。
トヨタ自動車が2021年6月、直接取引する主要部品メーカーに対して2021年の温暖化ガス排出量を前年比3%減らすよう求めるなど、中小企業を含めたサプライヤーに対する削減圧力が高まりつつあるためだ。脱炭素が遅れれば、中小企業も取引先から外される可能性が出てきている。
金融庁もまた気候変動リスクを「現在対応すべき最も重要な課題」と位置づけており、脱炭素に向けて銀行や機関投資家などの金融機関が、投融資先企業の取り組みを支援するよう求めている。
さらに金融庁は東京証券取引所とともに、2022年4月に株式市場を再編し、東証1部を引き継ぐ「プライム市場」に上場する企業に対し、気候変動リスクの情報開示を求める方針だ。
今後ますます脱炭素という基準が重要視されていく中、投融資先の企業がどれだけCO2を出しているのか、正確な把握が急がれている。
そこで環境省は金融庁を組み、金融機関に対して脱炭素を促し、投融資先のCO2排出量の測定・分析を支援する体制の構築を目指し、8月6日から「ポートフォリオカーボン分析パイロットプログラム支援事業」に参加する金融機関の募集を始めた。支援に際し、CO2排出量の把握や分析手法づくりにも乗り出す。
まずは金融機関3社を選定し、個別勉強会や面談形式のカーボン分析支援などを通じ、脱炭素を促す考えだ。
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