「減らす省エネ」から「需要の高度化」への転換:第29回「省エネルギー小委員会」 | EnergyShift

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「減らす省エネ」から「需要の高度化」への転換:第29回「省エネルギー小委員会」

「減らす省エネ」から「需要の高度化」への転換:第29回「省エネルギー小委員会」

2020/09/18
 

審議会ウィークリートピック

2020年8月7日に開催された、第29回省エネルギー小委員会の議論をお伝えする。省エネルギーについては、電力システム改革の影で、語られる機会は少なくなったが、CO2排出削減にあたっては、コスト削減につながりやすく、再生可能エネルギー以上に取り組みやすい。そして、近年は単純な省エネルギーではなく、デマンドレスポンスなどとともに考える必要が出てきている。

省エネと新エネの垣根を超えて、エネルギー最適化へ

太陽光や風力などの自然変動型再エネ電源を有効に活用するには、電気料金をダイナミックプライシングにすることやデマンドレスポンス(DR)による系統安定化など、需要の高度化・最適化が不可欠である。また再エネ主力電源化の実現のためには、「電化」や「水素化」等の需要の高度化と共に、AIやIoT等のデジタル化の促進も不可欠である。
そして、これを需要家に働きかける主体として、小売電気事業者や送配電事業者が果たすべき役割が期待されている。

今回の「審議会ウィークリートピック」で取り上げるのは「省エネルギー小委員会」(以下、小委と呼ぶ)であるが、「省エネ」という言葉に対する固定観念を打ち破るために、冒頭からやや結論めいたことを述べさせていただいた。

省エネルギー小委員会は、総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会の下に設置された小委である。第29回小委の冒頭で茂木正部長からは、もはや省エネと新エネは別々の概念ではなく、一体としてどう取り込んでいくのかというフェーズであり、「省エネルギー・新エネルギー部」の「・(中ポツ)」を取り去って、省エネと新エネの垣根を超えて、いかにエネルギー利用を一体化、高度化、最適化していくか、省エネを超えた政策の検討を進めたい、という趣旨の発言があった。

従来型省エネは今後も重要であるが、本稿では第29回小委の中から、電力小売や発電に関するトピックを中心にご紹介したい。

省エネ目標とその進捗

現行のエネルギーミックス(長期エネルギー需給見通し)において、2030年電源構成に占める再エネ比率が22~24%とされていることはよく知られている。省エネ目標としては、最終エネルギー需要2013年度3.61億kl(原油換算)から、1.7%の経済成長を前提として想定した2030年度の最終エネルギー需要3.76億klに対し、約13%・5,030万kl程度の削減を目標としている。

省エネ「13%」と聞くと、再エネ24%と比べると小さく感じるかもしれないが、実はそうではない。同じく原油換算すると、2030年時点の再エネによる発電量の増加分は約1,300万klとなる。つまり省エネ量5,030万klは、再エネの約3.9倍の大きさであることが分かる。最終エネルギー需要には、電力以外にも運輸や熱需要が含まれており、これらすべての合計として13%減らすことを目標としているためである。

ちなみに電力需要としては、2030年自然体11,769億kWhに対して、約17%・1,961億kWhの削減が目標とされている。この目標はあくまで現行のエネルギーミックスの数値であるため、運輸等を含む電化の推進次第では、次のエネルギーミックスでは逆に電力需要が増加することも考えられる。

以下、電力小売や発電に関連する個別のトピックをご紹介したい。

国内の民生・家庭部門

第5次エネルギー基本計画では、住宅についてはZEH(ゼッチ)「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の数値目標として、2020年までにハウスメーカー等が新築する注文戸建住宅の半数以上、2030年までに新築住宅の平均で、ZEHの実現を目指すとしている。

しかしながら、2019年度の新築注文戸建住宅(約28万戸)におけるZEH供給戸数実績は5.7万戸 (20.3%)に留まる。また、2018年度の新築戸建住宅着工数(約42万戸)における太陽光発電設備導入率は27.6%に留まっている。

住宅の断熱性能は、家庭の空調(暖房)電力消費と直結している。図2のように、国内の住宅の断熱性能としては、昭和55年基準以下の住宅がいまだに約7割を占めている。

住宅の断熱性能の違いにより、エアコンの負荷がどのように変化するかを示したのが図3である。昭和55年基準の住宅では、平成11年基準を超える最新の住宅と比べ、エアコン(暖房)の電力消費量は約3倍も多く、平均負荷(kW)も約2倍大きい。

エアコン単体での性能向上も重要ではあるが、ある需要家が断熱性能のよい家に引っ越すと、突然、その需要家の電力消費量が激減し、契約容量が小さくなる、ということが起こり得る。これは小売電気事業者から見れば大幅な減収となり、無視できない変化である。
同様に、送配電事業者の立場から見ても減収であるほか、中長期的な配電設備形成上も無視できない変化となる。

全く荒唐無稽な粗い試算ではあるが、仮に3,500万戸(5,000万戸のうち7割)の住宅が一斉に断熱性能を上げることにより、各戸が年間3,000kWhほど省エネすると、国全体で1,000億kWhほど減少することになる。現状の電力需要が1兆kWh程度であることと比べ、とてつもなく大きな削減ポテンシャルと言える。

海外の家庭・業務向け省エネ政策

第29回小委では、諸外国で実施されている家庭・業務向け省エネ政策が具体的に紹介された。その代表例が、「エネルギー供給者義務制度」と呼ばれるものである。

国や州により詳細は異なるが大枠としては、規制機関が電力・ガス小売事業者や配電事業者といったエネルギー供給者に対して、その顧客・需要家の省エネ達成を義務付ける制度である。

上述のように、需要家の省エネは電力小売事業者の減収要因となるため、省エネは事業者にとって短期的には厄介者となる。だからこそ、義務的措置としてこれを導入している国々が存在する。

まず、国・規制機関はエネルギー供給者(電力・ガス小売事業者、送配電事業者)に対して、年間数%のエネルギー節減義務を課す。エネルギー供給者は法的義務遵守のため、自社もしくはESCOを通じて、需要家の省エネプログラムを実施する。例えば高効率ボイラーへの変更や住宅断熱改修であり、これらを直接的に実施(機器購入・設置等)することもあれば、省エネアドバイスの提供、補助金提供などをおこなう。削減目標が未達成の場合、エネルギー供給者には罰金等のペナルティが課される。個社の目標達成のため、省エネ量を「証書」として売買取引する仕組みも国によっては存在する。(フランスのホワイト証書制度等)

エネルギー供給者は、需要家が省エネに要した費用を電気料金に上乗せして回収する。

エネルギー供給者が需要家と直接的な接点を持っていることや、省エネに関して一般消費者と比べ相対的に専門的な知見を持っていることが、このような制度が導入されている理由と考えられる。このスキームのもと、エネルギー供給者は単なる電力小売を超えた、幅広いサービスを提供することとなる。

日本でこのような義務的措置が馴染むか否かは不明だが、費用対効果のよい省エネ技術を付加価値サービスの一環として提供することは、単なる価格競争を脱し、顧客ロイヤルティの強化の観点や、新たなVPP(仮想発電所)リソース確保など新規事業育成の観点から、有効な取り組みとなる可能性がある。

これを個社それぞれの取り組みに終わらせることなく、何らかの制度的措置(例えば国から事業者に対する支援策)を講ずることには価値があると考えられる。

むしろ、小売電気事業者の側から国に対して、日本版「エネルギー供給者義務制度」を早急に導入せよ、という戦略的な提案をおこなう事業者が居てもよいのではないかと筆者は考える。「変化」や「土俵変え」は常に、ビジネスチャンスの種である。

今回の第29回小委の議論は、その検討の第一歩であろう。

“Beyond 省エネ” 「需要高度化」への転換

従来は、エネルギーの価値、またエネルギー消費を減らすことの価値は、時間帯によって大きな違いは無かった。ところが変動型再エネや分散型・需要側リソースの普及とともに、エネルギーを「いつ」「どこで」「どの程度」使用し/減らすのかということをマネジメントすることが重要となってきた。これを賢くタイムリーに実施するには、AIやIoT等のデジタル技術が不可欠であろう。

従来の、kWh観点での「単に減らす省エネ」やアンペアダウン等のkW観点での「節電」から、価格シグナルを活用した需要の上げ/下げ双方の管理による、ΔkW(調整力)やkW価値の提供など、従来の「省エネ」や「DSM(デマンドサイドマネジメント)」の言葉には収まらない、新たな取り組みが多く生まれつつある。

運輸や熱などのセクターカップリングを目指した、需要側の電化・水素化等、エネルギー転換を含む「エネルギー需要の高度化」が “Beyond 省エネ”として求められている。 (※念のため、“Beyond 省エネ”は筆者の造語である)

さらに、需要側/小売側の垣根を超えた一体的取り組み、部門間の壁、省庁の壁を超えた一体的な取り組みが進むことを筆者は期待している。

(Text:梅田あおば)

梅田あおば
梅田あおば

ライター、ジャーナリスト。専門は、電力・ガス、エネルギー・環境政策、制度など。 https://twitter.com/Aoba_Umeda