系統混雑解消のための再給電方式は2022年度導入か? 第5回地内系統の混雑管理に関する勉強会 | EnergyShift

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系統混雑解消のための再給電方式は2022年度導入か? 第5回地内系統の混雑管理に関する勉強会

系統混雑解消のための再給電方式は2022年度導入か? 第5回地内系統の混雑管理に関する勉強会

2021/01/19

短期集中的に議論が進められてきた「地内系統の混雑管理に関する勉強会」(以下、勉強会)であるが、その第5回会合において最終報告書案が取りまとめられた。勉強会ではすでに、短期的には「再給電方式」を導入することを前提としながら、将来の選択肢として「ゾーン制」や「ノーダル制」についても同時並行的に検討を深めることとしている。本稿では2020年11月6日に開催された第4回および12月9日に開催された第5回の勉強会から、主に再給電方式の課題等の整理を報告する。

第1回「地内系統の混雑管理に関する勉強会」のレポートはこちら
第2回・第3回「地内系統の混雑管理に関する勉強会」のレポートはこちら

再給電方式の類型

送配電事業者(系統運用者:TSO)が主体となり地内系統の混雑を解消する再給電方式にも、幾つかのバリエーションが存在する。

表1のように、計画段階においてバランシンググループ(BG)が一定の関与をおこなう類型が提示されたが、勉強会の結論としては類型Ⅰの最もベーシックなものを「再給電方式」と呼ぶこととした。

表1.再給電方式の類型


出所:第4回地内系統の混雑管理に関する勉強会

類型Ⅰは、ゲートクローズ(GC)後にTSOが系統混雑を把握し、TSOから電源に対して給電指令を出すことにより潮流を調整することで混雑処理をおこなう方式である。ここでは計画段階ではなく実需給段階で混雑処理をおこなうため、再エネの出力変動や時間前市場により混雑状況が変化しても、その変化も含めた合理的な調整量とすることが可能である。

再給電方式の調整電源確保の在り方

従来、系統混雑とは送電設備の事故等の例外時のみに発生するものであったが、今後は平常時にも発生するものとなるため、混雑発生を前提とした調整力の確保等をあらかじめ検討しておく必要がある。

系統混雑を解消するには、混雑系統内の電源の出力を下げると同時に、混雑系統以外(非混雑系統)に立地する電源の出力を上げることで調整する必要がある。つまり調整対象となる電源は、下げ調整用は混雑系統内に立地する電源を確保し、上げ調整用には非混雑系統に立地する電源を確保することが必要である。

図1の右側(ピンク色で網掛された系統)で混雑が発生した場合、その混雑系統内に存在する電源Fで下げ調整をおこない、非混雑系統(左側)に存在する電源Aで上げ調整をおこなう。

図1.系統混雑に対処する上げ/下げ調整電源のロケーション


出所:第5回地内系統の混雑管理に関する勉強会

当面の間、上げ/下げの対象となる電源は、送配電事業者によりあらかじめ「調整力」として確保された電源が想定されている。

現在調整力には、30分コマ内の「電源脱落(直後)」、「時間内変動(需要・再エネ出力)」、「残余需要予測誤差(需要・再エネ出力)」という3つの事象に対応することが求められている。今後は4つ目の役割として、系統運用容量を超過した際の送電混雑処理が加わることとなる。

ただし、現在(2021年度以降も含む)の調整力には、その電源がどの系統に属しているかというロケーションの概念を持たない。このため混雑管理という目的に照らした場合、現在確保されている調整力はロケーションの不適合により、必要量が確保されていない可能性がある。特に問題となり得るのが下げ調整力の不足である。

例えば図1の調整電源Fで30、調整電源Dで40、事前に確保した合計70の下げ調整力をすべて使い切ったとしても、元々の混雑が120であれば、混雑はまだ50残ったままとなる。

この問題は、その系統に属する電源の多くが再エネ等の非調整電源である場合などに起こることであり、今後の再エネ増加に伴い、下げ調整力不足はますます発生頻度が高まることが予想される。よって従来は非調整電源とされていた電源についても、何らかの順位付けにより下げ調整をおこなうことが必要だと考えられる。

他方、上げ調整力の確保については、相対的に問題は小さい。

図1の中でも電源A・Bが上げ調整対象となるほか、実際にはこの図で描かれた範囲以外にも、エリア内には他の非混雑系統に接続した電源が多数存在すると考えられるためである。

将来、多くの系統に大量の太陽光発電所が接続し、昼間帯にそれら系統で一斉に混雑が発生することで、電源を上げ調整可能な非混雑系統が少数となる可能性も否定できないが、当面はここまで極端なことは起こらないと考えられる。

系統が混雑するとは、系統内の発電(kW)が需要(kW)を上回る状態であることから、ピーク需要の時間帯に混雑が発生するケースは少ないと考えられる。日本のように太陽光発電が再エネ電源の中心である場合、図2のように太陽光の出力が大きく、需要が減少してきた時間帯に混雑が発生しやすいと予想される。

図2.系統混雑が発生しやすい時間帯


出所:第5回地内系統の混雑管理に関する勉強会

なお従来からの調整力確保量の考え方として、ピーク需要に対応できることが大前提として置かれている。よって混雑が発生しやすい非ピーク時間帯であれば、上げ調整余力は相対的に豊富であると考えられる。

需給調整市場・容量市場でのリクワイアメント

需給調整市場に応札した電源は、TSOの指令に応じて上げ/下げ調整力を提供することがリクワイアメントを満たす条件となる。ところが図1の混雑系統内に存在する調整電源D・Fの場合、上げ調整をおこなうことは出来ない。よってこの点だけを見ると、電源D・Fはリクワイアメント違反となってしまう。

ただし現実的には、系統混雑を把握しているTSOが敢えて電源D・Fに対して増出力指令を発信することは無いため、TSOからの指令に不遵守ということ自体が発生せず、リクワイアメント違反となることも無い、と考えられる。

容量市場で調達する供給力(kW)についても、年間最大想定需要を踏まえて決定されている。最大需要時に混雑が発生することは考えにくいことから、確保された電源が供給力を発揮できないケースは当面の間は限定的であり、容量市場でのリクワイアメント違反に該当することも無いと考えられる。

よって当面の間は、再給電方式の導入により調整力・供給力のいずれも大きく損なわれることは無いと考えられるが、系統によっては再エネが極端に多いなどのバラツキが生じうることから、調整力・供給力の評価については今後再検討が求められる。

電源立地に対する価格シグナル

再給電方式では、混雑管理費用は一般負担(託送料金をつうじて広く需要家が負担)である。このため電源を新設する事業者に対して、混雑系統を回避して非混雑系統への立地を選択させる価格シグナルを発信することが出来ないことが、再給電方式の欠点の一つとして指摘されてきた。

ゾーン制やノーダル制であれば市場において決定される価格そのものがシグナルとなるが、TSO主導型の再給電ではこれは当てはまらない。

このため代替的な仕組みとして、混雑系統-非混雑系統間の「値差」を公表することが提案されている。図3の場合、マージナル(限界)電源が混雑系統で10円/kWh、非混雑系統で12円のとき、この10円・12円を公開するのではなく、その「値差」2円/kWhを混雑費用として公開するという案である。こうした情報は簡易的ではあるものの、将来ゾーン制等が導入された際にはその電源自身が負担する費用となるため、混雑系統に接続する電源の投資予見性に役立つものと考えられる。

図3.混雑系統-非混雑系統間の「値差」イメージ


出所:第4回地内系統の混雑管理に関する勉強会

簡易的な再給電方式の検討

再給電方式のメリットは、ノーダル制等と比べて短期間・低コストで導入できる点にある。再給電方式であっても凝った仕組みとすれば、このメリットは大きく損なわれてしまうため、一定の割り切りをもった「簡易的な」再給電方式の導入が検討されている。第5回勉強会では関西電力送配電から具体的な仕組みが提案された。

既存の運用システムを活用しシステム改修を抑制することで、低コスト・短期間での導入を目指すと同時に、手作業(人間系)による処理の負担増加を抑制することを目指している。

このため、時間に余裕のある計画段階(前日からゲートクローズまで)は、一定の人間系処理を想定しつつ、時間制約の大きい実需給段階では原則簡易的な自動処理をおこなうことが想定されている。

図4は左半分が混雑系統であり、右半分が非混雑系統である。

理想的再給電では上げ側・下げ側全ての組合せの中から、費用最小となる最適な結果を計算する。ループ系統の分流比を考慮したメリットオーダーに基づく理想的な再給電の場合、電源G1を100kWh抑制し電源G3を100kWh焚き増しすることで、混雑処理費用は400円となる。【(12-8)円×100kWh】

これに対して簡易的再給電では、上げ側再給電費用のメリットオーダー(G4:11円<G3:12円)に基づき電源G4を一旦選択固定してしまうため、混雑処理「量」が増加してしまい、総額450円となる。【(11-8)円×150kWh】

図4.ループ系統における簡易的な再給電の費用例


出所:第5回地内系統の混雑管理に関する勉強会

この簡易的再給電の場合、数ヶ月程度で導入可能であること、つまり最短2021年度から導入可能であることが関電から説明された。

他方、2022年度から新しいインバランス制度が開始されるが、この簡易方式の場合、混雑発生時にはインバランス料金に影響が生じてしまう。これを回避するためには別途システム改修が必要となり、要件定義後1年半程度を要する見込みである。つまり2022年4月には間に合わない。ただし現実的には2022年時点では系統混雑自体がまだ発生しないことが予想されるため、この遅れは実質的には問題とならないと考えられる。

第5回勉強会や最終報告書案では、混雑管理手法として本命視されているノーダル制等の課題についても説明がなされたが、紙幅の都合上、次稿に譲ることをご容赦願いたい。

参照
電力広域的運営推進機関 地内系統の混雑管理に関する勉強会

梅田あおば
梅田あおば

ライター、ジャーナリスト。専門は、電力・ガス、エネルギー・環境政策、制度など。 https://twitter.com/Aoba_Umeda

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