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第1回「地内系統の混雑管理に関する勉強会」:送電線の利用をメリットオーダーへ

第1回「地内系統の混雑管理に関する勉強会」:送電線の利用をメリットオーダーへ

2020/08/27

審議会ウィークリートピック

電力広域的運営推進機関(OCCTO)で、電力系統利用ルールの見直しがスタートした。「地内系統の混雑管理に関する勉強会」では、電力系統に空きがなくて接続できないケースや、接続しても出力が抑制されるといった、再生可能エネルギー拡大の為の障害について議論していく。

電力系統利用ルールの抜本的見直しへ

電力系統利用ルールの抜本的な見直しが開始された。

「系統が一杯で接続できない。出力が抑制される」。再エネ発電事業者の悩みの一つであろう。

また今年7月17日に梶山経済産業大臣からは、非効率石炭火力のフェードアウトや『再エネ経済創造プラン』の一環として、基幹送電線の利用ルールの見直し、中長期的な系統整備などを通じて再エネ導入の制約とならないようインフラ整備を進めていく、という発言があった。

これらはいずれも、電力系統の利用ルールの一つである「混雑管理」に関係している。

今回の「審議会ウィークリートピック」では、7月に電力広域的運営推進機関(以下、広域機関)に新たに設置された「地内系統の混雑管理に関する勉強会」(以下、勉強会)についてご紹介したい。

現在の「系統混雑」管理ルール

「系統混雑」とは、送電線の運用容量の制約により、発電所・発電機の運用に制約が生じている状態のことである。系統混雑が発生すると、発電出力の抑制(出力制御)を行い、潮流が送電線の運用容量以内に収まるようにしている。つまり「混雑」が発生すると、その系統に接続している発電所(の一部)は、出力を抑制する必要が生じる。

なお送電線の運用容量は、熱容量、同期安定性、電圧安定性、周波数維持それぞれの制約要因を考慮して決定されている。

発電事業者の都合で考えると、せっかく作った発電所なのだから常にその最大出力、もしくは希望する出力で発電したいと考えるだろう。実際に、垂直統合体制の旧一般電気事業者が独占していた時代には、発電所の新設と送電系統の整備は一体として計画的に検討・整備されていた。よって、系統事故時を除く平常時には、発電所は最大出力を常時送電できるよう送電線が建設されてきた。送電容量は発電容量に対して、過大でもなく過少でもない、ちょうどよいバランスが取れている状態であった。

その後の発電部門自由化等を経た現在も、日本の電力系統は、平常時に系統混雑が生じないよう設備形成することが原則とされている。またこのことは送電線だけの範疇にとどまらず、電力の市場制度や料金制度などの電力システムはすべてこれを前提に制度設計されている。

系統混雑を発生させないことを大前提とした場合、数十年前から電源と送電線をセットで開発済みの系統に対して新たな発電所を接続しようとすると、 ① 偶然に空き容量があった範囲で接続する、もしくは ② 空き容量がほぼゼロなので、送電線を増強するための工事完了を待ったうえで接続する、この2つしか選択肢が無かった。 ① についても、自由化当初に早く発電所を建設・接続できた者はよいが、その空き容量が埋まってしまえば ② の選択肢しか残されていない。

既存の発電所はこのような困難に直面することは無いため、ある種の既得権益が生じている。また新しい発電所に対しても早い者が優遇されるという意味で、「先着優先」ルールとなっている。

なお、この「平常時には混雑を発生させない」ルールの例外は地域間連系線である。

地域間連系線だけは、従来から平常時の系統混雑発生を許容していた。2018年10月以前は先着優先の考えを前提としつつ、残りの空き容量はJEPXスポット市場で落札できた者が利用するというルールのハイブリッド方式であった。いわば部分的な間接オークションの実施であった。

2018年10月以降は全面的な間接オークション導入により、経過措置を除き、先着優先ルールは廃止された。JEPXスポット市場はメリットオーダー(発電コストの安い順)によって落札が決まるため、地域間連系線の利用も電源のメリットオーダーに応じた利用となる。

地域間連系線に関しては、後述する図3の「市場分断(ゾーン制)」による混雑管理がすでになされている。 よってこの勉強会の名称には、敢えて「地内系統の」という言葉が冠せられている。

また、現在すでに九州エリアでは、再エネ電源に対する出力制御(抑制)が頻発しているが、これは系統全体の需給バランスの観点から安定供給上の必要性からおこなう出力制御である。これは「需給上の制約による抑制」であって、上述の「系統制約・混雑による抑制」とは異なるものであることに留意願いたい。

試行ノンファーム型接続のメリットと限界

効率的な送電設備の形成や利用を目的として、日本版コネクト&マネージ(C&M)が開始されている。ノンファーム型接続は日本版C&Mの一つで、東京電力エリアの千葉等ではすでに試行的なノンファーム接続が開始されており、2021年中には全国でノンファーム接続を本格開始することが予定されている。

ノンファーム接続により、系統増強を待たずとも速やかに、巨額の工事費用負担無く、系統接続できるようになったという大きなメリットがある。しかしながら、現在の試行ノンファーム型接続では、系統混雑発生時は、後着者であるノンファーム電源が抑制されるルールとなっている。発電費用の安さ/高さは無関係である。新しい電源を系統に接続する時点では、ノンファーム接続が大きな解決策となったが、系統接続後の電源の運用の面では、まだ先着優先が適用されている。

つまり現在は電源運用のメリットオーダーが徹底されておらず、先着者が優先的に発電を継続し、限界費用ゼロの太陽光等を抑制するという、社会全体として見れば無駄なことが行われている。

第1回勉強会では、まずはメリットオーダーによって電源を運転させる、系統を利用させるということの重要性が再確認された。

今後の検討の方向性

メリットオーダーは重要な原則であるが、電力は発電におけるkWhコストが安ければそれでよいというものでもない。電源と系統は常にセットでの存在であり、電源と系統の全体最適化が必要である。コストの観点で見ても、発電コストだけでなく系統費用を足し合わせた全体費用に着目する必要がある。

接続時点において、接続費用や系統増強費用というかたちで発電事業者に対して価格シグナルを発信することにより、空き系統への電源立地を促すことと同様に、電源運転開始後は混雑管理の仕組みの中で、後述する値差等の価格シグナルによって、発電事業者が自らの選択により、適切な系統に・適切な電源が接続されることも期待される。

今後の系統・電力流通設備形成や利用ルールの在り方として、勉強会事務局からは、以下のような「目指すべき姿」が提示されている。

地内系統の混雑管理に関する勉強会事務局「地内系統の混雑管理について」2020年7月27日

このイメージ図は、いわゆるエネルギーの3Eに対応しており、 ① 安定供給(Energy Security)、 ② 経済効率性(Economic Efficiency)、 ③ 環境への適合(Environment)のバランスの取れた実現を目指している。

では、今後の新たな混雑管理ルールの対象とすべき系統はどこであろうか。

結論としては、まずは基幹系統を対象として検討を開始することとした。電源種ごとの連系電圧のイメージは以下の図2のようなものとなっている。

地内系統の混雑管理に関する勉強会事務局「地内系統の混雑管理について」2020年7月27日

ローカル系統や配電系統といった下位電圧の系統では、太陽光だけしか連系していないなど電源種は限られるが、基幹系統には、高圧など下位に接続した電源も含め様々な電気が混在している。

このように複数の電源種が利用している基幹系統にこそ、新たな混雑管理ルールの適用が急がれる。すでに試行ノンファーム型接続も基幹系統を対象としており、早期に「試行」から脱却し「本番」適用が求められていたことも基幹系統を優先する理由である。

ただし、決してローカル系統(特別高圧)が検討の対象外という意味ではなく、ローカル系統への拡大を想定した検討が進められる予定である。

なお、この勉強会は年内に一定の結論を得ることを目指しており、かなり時間がタイトであることも当面の検討対象を基幹系統に絞っている理由である。

諸外国で実施されている「混雑管理」の類型

事務局からは図3のように、すでに諸外国で導入されている代表的な混雑管理の仕組みが資料として紹介されたが、第1回勉強会ではそれぞれの具体的内容についてはまだほとんど論じられていない。

地内系統の混雑管理に関する勉強会事務局「地内系統の混雑管理について」2020年7月27日

それぞれの混雑管理の方式により、必要となるシステム等の複雑さが異なるほか、発電事業者に対する価格シグナルの強さも異なる。大まかには、送配電事業者が主導する「再給電」方式と比較すれば、値差が生じる「市場分断(ゾーン制・ノーダル制)」方式のほうが、価格シグナルは強くなる。

ドイツで実施されている「再給電」方式の場合、混雑費用は一般負担(つまり託送料金によって広く需要家が負担する)となっており、発電事業者に対する価格シグナルとなっていない。この仕組みの場合、発電事業者が混雑系統を回避するインセンティブは働かず、一般負担方式でよいのか考えるべきという指摘があった。

JEPXの取引システム機能上、ゾーン制への変更対応は容易であることが報告されたが、図3ではゾーン制はローカル系統への適用が難しいことが示されており、将来的にローカル系統への適用を前提とするならば、ゾーン制を選択肢とすることは難しい可能性がある。

地内系統の混雑緩和は石炭火力をフェードアウトできるか

第1回勉強会では、従来の先着優先方式を脱し、メリットオーダーに基づく混雑管理を目指すこと自体への反対が無かったことは、大きな第一歩となった。

今後、仮に「市場分断」方式等のメリットオーダー混雑管理に変更されるならば、入札価格が安い電源・事業者が、限られた送電容量を使用可能となる。限界費用ゼロ円の再エネが落札され・稼働し・送電線を利用し、例えば入札価格5円で不落となった石炭火力は稼働せず送電線を利用できない、ということが自然に起こる。

一般的に石炭火力の限界費用は火力の中では小さいため、この施策だけで非効率石炭火力をフェードアウトさせることは難しいが、電力市場とセットである混雑管理ルールを変更することは、経済合理的に石炭火力をフェードアウトさせる一つの施策となり得るだろう。

(Text:梅田あおば)

梅田あおば
梅田あおば

ライター、ジャーナリスト。専門は、電力・ガス、エネルギー・環境政策、制度など。 https://twitter.com/Aoba_Umeda

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