バイオマス発電のこれから ~食料競合回避・ライフサイクルGHGとは:第6回「バイオマス持続可能性ワーキンググループ」 | EnergyShift編集部

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バイオマス発電のこれから ~食料競合回避・ライフサイクルGHGとは:第6回「バイオマス持続可能性ワーキンググループ」

バイオマス発電のこれから ~食料競合回避・ライフサイクルGHGとは:第6回「バイオマス持続可能性ワーキンググループ」

EnergyShift編集部
2020/10/12
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審議会ウィークリートピック

昨年10月に「中間整理」が取りまとめられて以来、約10ヶ月ぶりとなる2020年8月4日に、第6回「バイオマス持続可能性ワーキンググループ」(以下、WGと呼ぶ)が、続く9月17日には第7回WGが開催された。今回は、第6回WGの内容を中心にお伝えする。

バイオマス燃料に求められる持続可能性

元々FIT制度ではバイオマス発電に対して、その認定基準の一つとして燃料の安定調達のほか、中長期的な観点から持続可能なかたちで生産された燃料であることを求めている。

燃料の持続可能性については、国内燃料は森林法等に基づいて確認を行い、輸入燃料は第三者認証(FSC等)を用いて確認を行うこととしている。特に、バイオマス液体燃料(パーム油)については、RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)等の第三者認証によって持続可能性の確認を行うこととしていた。

FIT開始以降、発電事業者や業界団体から、新しい種類の燃料(バイオマス)をFITで認定してほしいという要望が相次いでいる。

キャノーラ油(菜種油)、大豆油、落花生油、ヒマワリ油、脱炭酸PAO(パーム酸油)、カシューナッツ殻油、EFB(パーム椰子果実房)、ココナッツ殻、カシューナッツ殻、くるみ殻、アーモンド殻、ピスタチオ殻、ひまわり種殻、未利用ココナッツ、照葉木果実、ミフクラギ果実、コーンストローペレット、ネピアグラス、ソルガム、ベンコワン(葛芋)種子、ジャトロファ種子、稲わら・麦わら

資源エネルギー庁「バイオマス発電燃料の持続可能性の論点について」2020年8月 より筆者作成

このため調達価格等算定委員会からの要請を受け、バイオマス燃料の持続可能性を専門的・技術的に検討するために、総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会 新エネルギー小委員会の下に、2019年4月に「バイオマス持続可能性WG」が設置された。

本WGでの持続可能性の確認内容は以下のようなものである。

資源エネルギー庁「バイオマス発電燃料の持続可能性の確認方法を検討するに当たっての論点」2019年4月 より筆者作成

2019年の「中間整理」では、環境、社会・労働、ガバナンスの観点について、第三者認証が満たすべき評価基準を明確化し、第三者認証については、主産物は農園から発電所までのサプライチェーンを、また副産物は燃料の発生地点から発電所までのサプライチェーンの把握を求めることとした。

食料競合を防止するための方策として、第三者認証には明示的な基準がないことから、国全体の量的な確認(マクロ的確認)や、燃料価格に直近の動向を反映できる方策を検討することとされた。

そして今回第6回WGでは、昨年度からの積み残し・継続検討となっていた課題や新たな課題として、食料競合やライフサイクル温室効果ガス(GreenHouse Gas:GHG)に関して議論された。

バイオマス発電燃料の食料競合について

現時点、FITの調達価格等算定委員会では、食料競合への懸念が認められる燃料については、食料競合のおそれがないことが確認されるまでの間は、FIT制度の対象としない、と整理されている。発電事業者の立場で見れば、この確認がなされない限り、新しい燃料(表1)を用いたFIT発電事業を開始することが出来ない。よって速やかな、食料競合の判断のための基準策定が求められていた。

多くの場合、「後発者」である日本は海外の先行事例を有効に活用することが出来るが、残念ながらバイオマス燃料に関する食料競合については、欧米においても現時点で共通の統一的な判断基準は存在しない状況である。ただし、EUの「EU-RED Ⅱ(欧州再生可能エネルギー指令)」では、一定の判断基準に基づき、食用のバイオマス種や間接的土地利用変化の影響が大きいバイオマス種の利用について制限を課している。

資源エネルギー庁「バイオマス発電燃料の食料競合について」2020年8月

図1のように、食料競合の観点では「土地利用変化」の有無が重視されている。直接的土地利用変化(バイオマス燃料生産のために従来は森林であった土地を農地に転換すること)が制約されるのは当然のこととして、さらに「間接的土地利用変化」にも制約を課している。

例えばバイオマス燃料としての「トウモロコシ」を生産・増産するときに、森林ではなく、隣の「ニンジン」畑をつぶしてトウモロコシ畑とする。この時点では森林の減少は無い。ところが玉突き状態的に、ニンジンを栽培するために森林をニンジン農地に転換すると、結果として森林が減少する。これを「間接的土地利用変化」と呼ぶ。

今回のWGの結論としては、EUの制度を参考に、

  • 当該バイオマス燃料が、可食のバイオマス種か否か
  • 間接的土地利用変化の影響はどうか

について検討を進めることとした。

ただし、「食べられるかどうか」という括りは、かなり大きなグレーゾーンが存在すると考えられる。委員からは、家畜「飼料」となるものや農業用「肥料」となるものはどうするのかという指摘や、「主産物/副産物」で分ける提案などがあった。

詳細は今後の議論となるが、WGでは「明らかに非可食」のバイオマス種を選定することから検討が開始される。つまりグレーゾーンに該当するバイオマス燃料は当面の検討対象外となる見込みである。これは多様な新規燃料認定を求める事業者から見れば落胆する結論かもしれないが、明らかな非可食バイオマスについては、一歩検討が進むことは朗報かもしれない。

EU-RED Ⅱでは食料競合の論点において土地利用変化、結局はCO2排出量が重視されているようである。第6回WGでは、農林水産省担当部署からは、たとえ非可食であっても農地をエネルギー生産に転用することには慎重であるべきとの意見が表明された。

農地利用に関しては、CO2排出量の観点以外にも、生物多様性や一般市民の心理面での受け止め方など、幅広い評価基準作りが求められる可能性を筆者は感じている。

バイオマス発電のライフサイクルGHG排出量

バイオマス燃料は、燃焼時のCO2排出がカーボンニュートラルになる(CO2排出量はゼロ)と整理されているが、原料の栽培や燃料製造、輸送時等にも温室効果ガスが発生している。この原料の栽培から最終的な燃料利用に至るまでのGHG排出量の総量をライフサイクルGHGと呼んでいる。

一般的には「カーボンニュートラル」と認識されているバイオマス発電ではあるが、燃料種類や前提条件によっては、ライフサイクルで見た場合、化石燃料火力発電と同等もしくはそれ以上のGHGを排出すると試算されている(図2)。つまりライフサイクル全体では、カーボンニュートラルとはならないケースが頻発し得る。

仮にバイオマス発電によってGHG排出量が増加して気候変動を加速してしまうならば本末転倒であるうえ、それをFITという消費者の賦課金により支えられた制度によって支援することは制度目的に反すると言えるだろう。

資源エネルギー庁「環境への影響について」2019年4月

よって、バイオマス発電に関する持続可能性担保のためには、ライフサイクルを通じた正確なGHG排出量を知ることが出発点となる。これが本WGに与えられたミッションの一つでもある。

ところが、バイオマス燃料に関するライフサイクルGHG排出量の算定方法には様々な手法があり、世界共通的な算定方法はまだ存在しない段階である。

先行するEUでは、上述のEU-RED ⅡにおいてライフサイクルGHGの計算方法や、ライフサイクルGHGのデフォルト値を規定しているが、算定手順・データ収集方法は規定していない。

また国内では、輸送用燃料(バイオエタノール)のライフサイクルGHGを算定する方法がエネルギー供給構造高度化法によって規定されているが、発電用燃料はその対象外である。

よってまずは、バイオマス発電のライフサイクルGHGを算出するための計算式(算定式)を作成することから始める必要がある。そのうえで、FIT制度におけるバイオマス発電の持続可能性の評価基準となるライフサイクルGHG排出量の「基準値」を定めることとなる。表3のように、例えば対象ガスはどうするのか(CO2だけでなく、メタン等も対象とするか)ということを決めていく。

資源エネルギー庁「バイオマス発電のライフサイクルGHGについて」2020年8月

世界的に求められる持続可能性の項目およびその水準は、日々進歩している。本来は社会情勢の変化に応じてタイムリーに見直しを検討すべきである。

しかしながらFIT認定期間は20年間と長期にわたるため、一度FIT認定された発電所や燃料が「過去」の基準に合致しながら20年間発電を継続することが想定される。仮にその満たすべき基準を遡及適用的に変更した場合、発電事業者や燃料提供者にとっては大きなリスクとなり得る。

これら事業者のリスク低減の観点からも、2040年時点において、バイオマス発電燃料の食料競合、土地利用変化、ライフサイクルGHGを取り巻く環境がどのようになっているか、今の時点で慎重かつ前向きな検討が求められる。

なお、第7回WGでは、バイオマス燃料の第三者スキームの追加、および認証機関・海外政府に対するヒアリングが実施されている。

(Text:梅田あおば)

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