2021年10月31日から11月13日にかけて、英国のグラスゴーで開催されたCOP26(気候変動枠組み条約第26回締約国会議)は、多くの課題を残しつつも、「石炭の段階的削減」などを盛り込んだ文書を採択、カーボンクレジット市場につながるパリ協定第6条の詳細についても合意され、閉幕した。一方、会場の外ではさまざまなサイドイベントが開催されており、気候変動をめぐる金融や農業、生態系保全、持続可能な成長などをテーマに議論が交わされていた。シリーズの第3回は、注目のサイドイベントを紹介する。
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2015年のCOP21におけるパリ協定の採択と前後して、COPそのものの性質は大きく変化してきた。というのも、それまでのCOPの主役はあくまで政府であり、政府間交渉がどのようにまとまるかが焦点だった。
しかし、近年はむしろサイドイベントの方が大きな意味を持つようになってきており、国連機関や各国政府、自治体、民間団体などがさまざまなテーマで開催、情報交換を行っている。また、サイドイベントが政府間交渉に与える影響も大きくなっている。
例えば、パリ協定採択を後押ししてきたのは、グリーンファイナンスを進めてきた金融業界とそれを母体にしたNGOである。
政府間交渉は現状をどうにか追認するような交渉が進められていることと比べると、サイドイベントで語られているのは気候変動問題の未来だということができる。
今回のCOP26でもさまざまなサイドイベントが開催されているが、傾向としていえるのは、広い意味での生態系保全にフォーカスがあたるようになってきたということだ。政府間交渉でも、生物多様性条約と気候変動枠組み条約をリンクさせる動きが目立ったが、サイドイベントがその点では顕著だったということだ。
実際に、気候変動は生態系に悪影響を与える一方、生態系の保全と回復に取り組むことが気候変動を緩和することにつながる。また、こうした取組みが持続可能な地球につながっていくということだ。
開催されたサイドイベントのうちでも、注目されたものの1つが、国連のイニシアチブ「レジリエンス・フロンティア」によって立ち上げられた「レジリエンス・ラボ」だ。必ずしも生態系保全のみをテーマとするわけではないが、持続可能な地球の実現に向けて、「考え方を変え、未来を形作る」という包括的テーマと8つの経路をめぐる変革について、9日間にわたって議論された。議論された順に並べると、具体的には、以下のテーマとなる。
問題意識としては、過去2世紀にわたる人類の活動が地球にカオスをもたらしたこと、具体的には酸性雨や気候変動、コロナウイルスの感染拡大などにおよぶことがある。こうした課題に立ち向かい、持続可能な方策の実装に向けていくということだ。
初日となる11月2日は、包括的テーマをめぐって、ラボを立ち上げた国連気候変動枠組み条約の適応部門ディレクターであるユーセフ・ナセフ氏の演説で始まった。この日の議論の結論は、おおまかに言えば、人類のこれまでの社会のあり方の修正を求めるものだったといえるだろう。
例えば、人類は自然環境に対する認識が欠落しており、あらためて自然とのつながりを意識する必要性があることであり、あるいは新自由主義と誤った社会的仮定に基づく経済システムによるコミュニティの連帯の解体という問題の解決だ。
このような、包括的に社会を変革していく視点は、現在の政府間交渉に期待できるものではないが、複雑な環境問題と持続可能な社会の実現にあたっては、欠かせないものとなっていくだろう。
こうした視点は、11月3日の「自然と人類との関係の変革」をめぐる議論にも引き継がれた。国連生物多様性条約事務局のジョーティ・マシューフィリップ氏は、イベントの参加者に向けて「自然が反映し、悲惨な気候ニュースがもはや現実ではなく、生物多様性が私たちの文化と生活の中心にある世界を想像」することを促した。
また、この日、浮かび上がった包括的テーマは、進化から子孫、地球上の全ての生命におよぶ、時間的・空間的に包括される正義と尊厳の重要性、そして生物圏には境界はなく、誰もがつながっているということだった。
様々なサイドイベントが行われた中でも注目すべきは金融ネットワークの変革・・・次ページ
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