この分野でもう1つ注目されるのが、気候変動枠組み条約事務局に設置された、ナイロビ作業プログラム(NWP)によるイベントだ。これは、生物多様性に対する、気候変動の影響、脆弱性、適応に関するプログラムだ。
ここでも、金融システムを自然に対してポジティブな影響を与えるものに改革するといったことが語られ、英国が自然関連の財務情報開示に関するタスクフォースに取り組んできたことも紹介された。また、一方的な気候変動対策や適応が生物多様性の保全に対する悪影響を及ぼさないようにするべきであることも指摘された。
気候変動に直接結びつくものとしては、森林保全がある。実際に、森林保全を通じてカーボンクレジットを獲得するプログラム(REDD+)も導入されている。それでも、この分野に限っても、資金を拡大する必要があるということが指摘された。
国連環境計画のミレイ・アタラー氏は、気候変動に関する自然保護に向けられる資金は気候資金のわずか2%であるということを指摘した。
気候変動資金そのものが不足している中で、それ以上に自然を守るための資金が不足しているということだ。
金融に関するサイドイベントはこれ以外にも行われている。潘基文氏が所長兼議長であるグローバルグリーン成長研究所(GGGI)主催のイベントでは、持続可能な金融が議論された。
GGGIのイングビルド・ソルバン氏によると、世界のグリーンボンド市場は急成長し、1兆ドルに達したものの、債券市場全体の123兆ドルに比べるとごく一部にすぎないという。また、ブルー・ライク・ア・オレンジ・サステナブル・キャピタルのジーン-マリー・マッセ氏によると、グリーンボンドの約8割は中国によって発行されており、多様性が課題だという。
一方、クライメイト・ボンド・イニシアチブの報告書によると、気候プロジェクトへの投資は2030年までに90兆ドルに達する必要があるという。
COP26ではあらためて、生物多様性と気候変動問題との関係がクローズアップされたといえる。とはいえ、政府間交渉では資金の使途について、ようやくGHG削減だけではなく適応について拡大されるという合意が得られた段階だ。生物多様性の保全に向けた資金確保は簡単ではないだろう。そうした中、森林保全については取り組みやすいものだろう。とはいえ、生物多様性そのものが経済的評価はしにくいことには変わらない。したがって、経済社会が変わっていく必要があるのかもしれない。
次回は、COP26を特徴づけるもう1つのテーマとなった、メタン排出抑制について紹介する。
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