Amazonら設立の気候変動イニシアチブ「The Climate Pledge」にUberやマイクロソフトなど18社が加盟 2040年までにネット・ゼロカーボン目指す | EnergyShift

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Amazonら設立の気候変動イニシアチブ「The Climate Pledge」にUberやマイクロソフトなど18社が加盟 2040年までにネット・ゼロカーボン目指す

Amazonら設立の気候変動イニシアチブ「The Climate Pledge」にUberやマイクロソフトなど18社が加盟 2040年までにネット・ゼロカーボン目指す

2020年12月15日

AmazonとGlobal Optimismは2020年12月2日および9日にかけ、2040年までにネット・ゼロカーボンの実現を目指す、気候変動イニシアチブ「The Climate Pledge」に、ウーバー・テクノロジーズはじめ、マイクロソフトやユニリーバなど合計18社が加盟したと発表した。18社は再生可能エネルギーの導入や持続可能な建築物への投資、2040年までにネット・ゼロカーボンを実現するためのサプライチェーンの構築などを実施していく。

ジェフ・ベゾスが共同設立した「The Climate Pledge」とは

AmazonとGlobal Optimismは2020年12月2日、2040年までにネット・ゼロ(実質ゼロ)カーボンの実現を目指す、気候変動イニシアチブ「The Climate Pledge」に、超音速旅客機メーカーの米ブーム・テクノロジーズ、スペインの配車サービス大手キャビファイ、格安航空会社の米JetBlue、電気自動車(EV)メーカーの米リビアン・オートモーティブ、そしてウーバー・テクノロジーズの5社が加盟したと発表した。

また12月9日には、マイクロソフトやユニリーバ、コカ・コーラ・ヨーロピアンパートナーズなど13社が加盟したと発表、これによりThe Climate Pledgeへの加盟企業は31社となった。

The Climate Pledgeは、Amazonと気候変動枠組条約(UNFCCC)の第4代事務局長を務めたクリスティアナ・フィゲレス氏が創設したGlobal Optimismが、2019年9月に共同で設立した気候変動イニシアチブである。Amazonは20億ドル(約2,085億円)のClimate Pledge Fundも創設しており、このファンドを通じて脱炭素社会に対する革新的な技術やサービス開発などを支援することで、パリ協定の目標を10年前倒しし、2040年までにネット・ゼロカーボンの実現を目指している。

The Climate Pledgeの一環として、Amazonは2024年までに再生可能エネルギーの電力比率を80%、2030年までに100%に転換することに取り組んでいる。


ジェフ・ベゾス氏(左)とクリスティアナ・フィゲレス氏(右) The Climate Pledge ウェブサイトより

輸送部門の脱炭素化は重要な課題のひとつ

気候変動対策において、より持続可能な輸送方法を確立することは最も重要かつ、挑戦的な課題のひとつである。EVや持続可能な航空燃料(SAF:Sustainable aviation fuel)など、CO2排出量を削減するための新たな技術導入が進んでいる。

Amazonは2019年に、今回加盟したリビアンに出資しており、2021年からリビアン製電動ピックアップトラックを10万台導入し、物流部門での脱炭素化を推進するが、今回、ウーバーなど運輸セクターの企業5社が加盟したことで、持続可能な輸送方法の確立に向けた取り組みはさらに強化されるという。

Amazonの創設者兼CEOのジェフ・ベゾス氏は、「The Climate Pledgeに署名することにより、世界中の企業は気候変動の壊滅的な影響から地球を守るために大胆な取り組みを行っています。運輸部門は、CO2削減目標を加速させるうえで、重要な役割を果たします。ブーム、キャビファイ、JetBlue、リビアン、そしてウーバーが2040年までにネットゼロカーボンへのジャーニーに参加することを歓迎します。The Climate Pledgeに署名した企業はこれで18社となり、脱炭素経済への転換においてリーダーシップを発揮するでしょう」と述べている。

ウーバー、2040年までに全世界の車両をEVに

ブームは2020年2月、試作中の超音速旅客機「XB-1」のテストプログラムが、SAFとカーボンオフセットの使用を通じて、カーボンニュートラルになると発表。今後はXB-1を発展させた55人乗りの超音速旅客機「Overture」を開発、テスト、運用においてネット・ゼロカーボン航空機にすることを目指している。

ブームの創設者兼CEOのBlake Scholl氏は、「世界最速の旅客機を構築するにあたり、ブームは持続可能性に対して包括的なアプローチを取っています。持続可能性を企業の優先事項としてきたことで、私たちはその当初から環境保護のベストプラクティスをプログラムに組み込むことができました。The Climate Pledgeに参加し、スピードと持続可能性が両立することに興奮しています」と述べた。

キャビファイは配車車両の電動化を推進しており、スペインでは2025年までに、ラテンアメリカでは2030年までに100%EV化することを目指している。またブロックチェーン技術などを活用して、チリ、ペルー、そしてブラジルにおける環境保護の強化と再生可能エネルギーの促進にも注力するという。

キャビファイの創設者兼CEOのJuan de Antonio氏は、「効率的な都市モビリティは、気候変動との戦いの鍵です。私たちは配車車両の電動化をサポートしながら、運転手とオペレーションから排出されるCO2の実質ゼロを実現します」と述べた。

JetBlueは、航空会社として初めてThe Climate Pledgeに参加した企業であり、2020年7月には、すべての国内線でカーボンニュートラルを達成した唯一の航空会社でもある。また同年7月には、サンフランシスコ国際空港からのフライトにSAFの使用を開始し、従来のジェット燃料と比較してCO2排出量を最大80%削減したという。

JetBlue CEOのRobin Hayes氏は「空の旅は人と文化を結びつけ、世界経済を支えています。脱炭素社会の実現に向けて事業を転換するにつれ、サスティナビリティへの取り組みはさらに重要になっています。気候危機は航空業界が直面している最大の脅威のひとつです。今こそ、SAFの採用や、航空分野におけるカーボンニュートラルを実現するための明確な戦略設定など、事業を再構築するときです」と語った。

ウーバーはすでに2030年までにアメリカ、カナダ、ヨーロッパの都市で100%EV化し、自社の事業活動から排出するCO2を実質ゼロにする目標を設定済みだ。今回新たに全世界での車両を100%ゼロエミッション車とし、2040年までにゼロエミッションプラットフォームになるとした。

これら目標を達成するために、2025年までに数十万人のドライバーがEV化するのを支援するため8億ドルを投資し、さらにマルチモーダル・ネットワークにも投資し、自家用車に代わるサスティナブル車両を提供するという。

ウーバーのDara Khosrowshahi CEOは、「2020年9月に発表したように、今まさにこの瞬間がパンデミックからのグリーンリカバリーを遂げる機会です。世界中のすべての企業がThe Climate Pledgeに参加することができれば、気候危機に対しさらに積極的に取り組むことができるでしょう」と述べた。

Global Optimismの創設パートナーであるクリスティアナ・フィゲレス氏は、「The Climate Pledgeに参加することは、署名者は未来へのコミットメントを表明するだけでなく、雇用を創出し、イノベーションを促進し、自然環境を再生し、消費者がサスティナブルな製品をより多く購入できるようにする重要な行動と投資への道を切り開きます」と語った。


ブームの開発している超音速旅客機「Overture」

「カーボンマイナス」掲げるマイクロソフトも加盟

12月9日には、マイクロソフトやユニリーバはじめ、Atos、Brooks、Canary Wharf Group、コカ・コーラ・ヨーロピアンパートナーズ、 ERM、 Groupe SEB France、Harbour Air、ITV、 Neste、 Rubicon、Vaudeの13社がThe Climate Pledgeに加盟した。

中でもマイクロソフトは2020年1月、2030年までに毎年排出するCO2より多くのCO2を除去する「カーボンネガティブ」を達成し、さらに2050年までに、1975年の創業以来排出してきたCO2をすべて回収する、「カーボンマイナス」を実現すると発表していた。さらに、世界中のサプライヤーやユーザーがカーボンフットプリントを削減できるよう、CO2の削減・回収・除去技術における開発を支援するため、10億ドル規模の気候イノベーションファンドも設立している。


2030年までにカーボンネガティブになるという計画を発表したマイクロソフト コーポレーション プレジデント、ブラッド スミス、CFOエイミー フッド、CEOサティア ナデラ (2020 年 1 月 15日、写真:Brian Smale)

2030年までに再生可能エネルギーへの100%転換を目指すユニリーバは、2020年6月、2039年までに原料調達から製品の店頭販売まですべての過程で生じる温室効果ガスを実質ゼロにすると発表していた。

マイクロソフトやユニリーバなど13社の加盟を受け、Amazonのジェフ・ベゾス氏は、「ゼロカーボン経済の構築に貢献するテクノロジーに対する需要が急速に高まっているという重要なシグナルを市場に発信し続けていく」と述べた。

これまでもThe Climate Pledgeには、メルセデス・ベンツやシュナイダーエレクトリック、シーメンスなどが加盟していたが、今回のウーバーやマイクロソフトなどの加盟により、The Climate Pledgeの参加企業は一気に31社となった。

特にGAFAの一角であるAmazonとマイクロソフトが気候変動対策で協調することによって、脱炭素社会の到来は近くのか。あるいはThe Climate Pledgeが世界にどのような影響力を行使していくのか、注目されている。

参照
The Climate Pledge
Amazon Press release "Uber, Rivian, JetBlue, Cabify, and Boom Supersonic Sign The Climate Pledge" 2020.12.2
Amazon "Unilever, Microsoft, and Brooks are among 13 additional companies to join The Climate Pledge" 2020.12.9
Amazon "Amazonが20億米ドルのClimate Pledge Fundを創設" 2020.7.14
Rivan Press Release "Rivian announces $1.3 billion funding round led by T. Rowe Price" 2019.12.23
Microsoft "2030 年までにカーボンネガティブを実現" 2020.1,21

(Text:藤村 朋弘)

藤村朋弘
藤村朋弘

2009年より太陽光発電の取材活動に携わり、 その後、日本の電力システム改革や再生可能エネルギー全般まで、取材活動をひろげている。

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