Part.1では、アジア数ヶ国に珠玉のリトリートを展開するソネバの際立ったコンセプトである“インテリジェント・ラグジュアリー”をベアフット(裸足)体験を通してお伝えした。Part.2ではさらに踏み込み、哲学的ともいえる思想と共にソネバが実践する数々の取り組みを紹介したい。
ソネバリゾートが、その確固たる理念と共にゲストに提供する「本質的で、よりゆったりとした、より感謝の気持ちを表すライフスタイル」の経験は、前回お伝えしたようにリゾートに到着後 “No News, No Shoes”と書かれた袋に靴を預け、足裏で直に砂の感触を感じることから始まる。
「都市の箱の中」から、解放感溢れるソネバに訪れたゲストはその束の間の余暇、ソネバでの非日常という贅沢を味わうことに集中し、滞在中はスマートフォンのチェックや日頃気遣う都会での服装など、都市での生活様式を忘れて過ごすことが出来る。そうして過ごすうちに、各人が自然との調和を取り戻し、自分達が生きる星に思いを寄せ、自然環境に意識を向ける気持ちが増幅されていることに気がつくのだ。
ベアフットでサンセットディナーを愉しむゲスト
ソネバのサステナビリティのなかでも最も象徴的なのが、ソネバが世界で初めてペットボトル禁止を宣言したリゾートだという事実だ。実は、世界中のアイランド・リゾートにおいて必須の課題となるのが、ゲストに十分に提供できる飲料水の確保である。通常は、飲料用のミネラルウォーターを確保するために各リゾートは大量のペットボトルを船、もしくはセスナ機などで島に運び込む。あたりまえだが、美しい海に浮かぶ小さな島では、運び込まれた分に相当する量のプラスチックごみが排出されている。そして今、島々を取り巻く海には、近隣のアジア諸国から流れてくるものが大半だが、決して自然には還らないプラスチックごみが浮遊・沈殿し、海洋生物の生態系にまで影響を与えているという事実がある。
ソネバがペットボトル禁止を宣言したのは2008年、それと同時に、リゾート内にミネラルウォーターの工場が設立された。水は採取後、殺菌、ミネラル添加、浄水のプロセスを経て、ガラス瓶に詰めてゲストに提供される。この、今でもまだ大胆に感じられる策が、13年も前に確立されたプロジェクトだということに驚く人も多いだろう。このシステムによってペットボトルに入ったミネラルウォーターは不要となり、その結果、年間20%の支出も節約。ボトルに換算すると、一年で実に約16万6,000本分という膨大な量のプラスチックごみの削減に成功している。
クラシックな瓶はもちろんリサイクルして使われる
ソネバの実践のさらなる素晴らしさは、そのペットボトル禁止によって生まれた余剰金と、別途設立された「ソネバ基金」を利用して、近隣の島々にまで同様のリサイクル活動を伝え、ソネバ式のエコセンターを作り広げている点である。それまで、それらの島で排出されたあらゆるゴミは一切合切野焼きで処分されていた。だが、ソネバ式のリサイクルとミネラルウォーター工場の出現によって、「ゴミ(Waste)が富(Wealth)に変化する」という体験を島の住民たちと分かち合えるようになった。
エコセンター“Waste(ゴミ)”を“Wealth(富)”へ
そして、地元の子供達を集めて海岸のゴミを一斉掃除するイベントを行い、海洋資源の保護やプラスチック問題についての実践的教育も実施。ゴミの掃除のみならず、泳ぎ方やサーフィン、シュノーケリング教室を開催し、海を愛する心を育むことで子供達が自然と海洋汚染に関心を持つような流れを作り、同時にそれは、次世代の環境保護運動のリーダーの育成までを視野に入れた、真に「持続可能」な営みとなることを目指しているという。
地元の子供達によるビーチクリーン
他にも、タイにおける50万本の植林と300エーカーの生物多様性に富んだ森の育成や、ダルフールとミャンマーの23万世帯への、木材消費量:50%、大気汚染:80%、CO2 排出量:60%を削減する特別なコンロの提供。そしてまた、女性の雇用が全体の4%と低水準のモルディブにおいて、スタッフの約半数を女性が占め賃金も男女同基準とする等々、ソネバが実践するサステナビリティ溢れる活動は多岐に亘り、枚挙に暇がない。この徹底的ともいえる実践のすべてが、本物と本質についてとことん考え抜かれた理念と共に行動哲学として昇華し、創業経営者であるソヌとエヴァの思想で彩られている。
椰子の殻で芽吹いた植物はやがて森へ
最後に、今では世界中で75万人に安全な水を提供しているソネバ式ミネラルウォーター工場とペットボトルの禁止についてのソヌ氏の言葉を紹介しよう。
ソネバリゾート創設者ソヌ・シヴダサニ氏
「これは、静かな湖に石を投じるのに似ています。モルディブの小さなリゾートが始めた活動ですが、諦めず続けてゆけば、いつしかこの波紋が大きな動きとなるはずです」。
ソヌ氏の、穏やかな優しさを湛える瞳の奥に、確かに広がる美しき波紋が映って見えはしないだろうか。
この波が大きなうねりとなって世界の海に連なり、いつしか日本にも打ち寄せてくることを期待したい。
ゲストに運ばれた瓶入りミネラルウォーター
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