森林における再エネ導入の制約と課題とソーラーシェアリング 第6回「再エネ等に関する規制等の総点検タスクフォース」 | EnergyShift

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森林における再エネ導入の制約と課題とソーラーシェアリング 第6回「再エネ等に関する規制等の総点検タスクフォース」

森林における再エネ導入の制約と課題とソーラーシェアリング 第6回「再エネ等に関する規制等の総点検タスクフォース」

2021/04/02

2021年3月23日に開催された第6回「再エネ等に関する規制等の総点検タスクフォース」では、主に風力発電や地熱発電の開発にあたって、国有林の活用等をどのように考えていくのか、その点を中心に議論された。あわせて、農林水産省から、ソーラーシェアリングに関する回答も紹介する。

審議会ウィークリートピック

脱炭素へ 森林における再エネ導入の制約・課題

再生可能エネルギー導入の拡大に向けては、土地利用に関する制約が1つの課題となっている。

陸上風力発電や地熱発電の適地の多くは森林・山間部に存在するが、森林での再エネ導入はまだわずかな規模となっている。

日本風力発電協会(JWPA)では保安林区域内の陸上風力ポテンシャル(風速6m/s以上)は136GW(=1.36億kW)と試算しているが、国有林の貸付実績のうち風力発電への貸付件数は35件、139haに留まっている。

内閣府の第6回「再エネ等に関する規制等の総点検タスクフォース」(以下、タスクフォース)では、森林および農地の有効活用による、風力発電や地熱発電等の導入促進に向けた規制緩和が議論されたのでこれをご報告したい。

森林は日本の国土面積のうち約66%・2,503万haを占めており、このうち1,223万haが「保安林」(国有林+民有林)となっている。

保安林とは水源涵養や災害防備など公益的機能の発揮が特に要請される森林について、森林法に基づき指定されるものであり、森林以外の用途への転用や立木の伐採等が規制されている。

一定の手続きを経ることで保安林の指定解除や国有林の貸付等が可能であるものの、その複雑かつ長期にわたる手続き等が、迅速な再エネ導入の制約となっていることがJWPAと日本地熱協会から報告された。

図1.保安林等の利用に関する規制や手続き

出所:林野庁

手続きの迅速化に関する林野規制上の課題・要望

風力発電等の再エネ事業者が森林を利用しようとする場合、森林法(林地開発、保安林作業許可・解除等)や国有林野関係法令に関する手続きをおこなう必要があるが、これに伴う協議が複雑化・長期化している。

JWPAと地熱協会から報告された代表的な課題は、以下①~⑥のようなものである。

① 窓口の一元化

手続き長期化の原因の1つは、これらの手続に関わる管轄審査当局が複数存在することであり、例えば森林管理署の同意が得られた後に、都道府県からの指摘で申請内容を修正するなど「手戻り」が発生している。

このためJWPAでは、国有林・森林法手続における横断的な事務局・窓口等を設置することを要望している。

表1.許認可手続ごとの関係行政機関

許認可手続関係行政機関
① 国有林野貸付森林管理署(総務グループ)+森林管理局(計画保全部局)
② 国有保安林解除森林管理署(治山グループ他)+森林管理局(治山課他)+林野庁(治山課)
③ 民有保安林解除都道府県(治山担当課)+都道府県森林審議会+林野庁(治山課)
④ 国有保安林作業許可森林管理署(治山グループ他)+森林管理局(治山課他)+都道府県(治山担当課)
⑤ 民有保安林作業許可地方振興局(林務担当課保安林ライン)+都道府県森林審議会
⑥ 林地開発許可地方振興局(林務担当課林地開発ライン)+都道府県森林審議会

出所:JWPA

② 手続きの同時並行処理

現在は、環境アセスメント手続の準備書・評価書手続が進まないと担当部局との相談・協議に入れないなど逐次的なプロセスとなっているため、複数の申請を同時並行的に処理するなど、手続きの効率化を要望している。

③ 利活用要望書の廃止・簡素化

地熱協会・JWPAからは、国有林野貸付手続きや保安林解除手続きへ移行するための必要書類の1つとして、「利活用要望書」の存在が指摘されている。

利活用要望書は明確な法令等に基づくものではなく、各管轄の森林管理局の"非公開"の規程等に定められているものである。

利活用要望書の記載内容は、管轄する森林管理局・担当者の裁量・解釈に委ねられており、記載事項の8割程度が環境アセスメント図書の内容と重複している。

再エネ事業者は利活用要望書の作成にかなりの時間を費やしているうえ、担当者が異動することで記載内容も変わった結果、運転開始遅延による数億円レベルの機会損失の発生が懸念されている。

これらの問題点を踏まえ、地熱協会では利活用要望書手続きの廃止、もしくは内容の簡素化や審査基準の明確化による審査期間の短縮を要望している。

④ 保安林解除

保安林解除手続きに関する事前相談では、担当者の裁量・解釈に委ねられている部分が多いため、指摘内容が不明確かつ提出要求資料も多くなっている。この結果、保安林解除申請書提出後の事前相談、審査・諸手続きに要する期間が標準処理期間でも約15ヶ月を要している。

このため地熱協会では、保安林解除手続に関する解釈を担当者間で共通化するため、マニュアルの整備を要望している。

⑤ 国有林野内および保安林内作業許可

まず森林法では、森林施業・管理計画に資する場合に限り再エネ電源開発が認められているため、そもそも森林施業・管理計画が無い国有林・国有保安林内では再エネ電源開発が出来ないという問題が存在する。

このため地熱協会では、森林施業・管理計画が無い場所であっても治山機能に資する措置を講じたうえで、地熱調査・開発を許可することを要望している。

また保安林内作業許可の期間は、原則2年以内で延長・更新はないとされているものの、試掘等による地熱資源の評価には2年以上(通常5~8年)を要するため、作業許可期間の延長・更新に関する統一見解を明文化することを要望している。

保安林内で作業が許可される面積は0.2ha(2,000m2)未満、切土・盛土の高さは約1.5メートル未満とされているため、掘削調査の制約となっている。

地熱協会では、保安林の公益目的に支障が無い場合には、これ以上の案件も許可対象として協議可能であることを明文化することを要望している。

⑥ FIT認定3年ルール

通常FIT制度ではあらかじめ土地使用の権原を有することがFIT事業認定の要件となっているが、風力発電では環境アセス手続きの中で風車の立地場所が変更されることがあるため、例外的に土地確保の期限を環境アセス方法書によるFIT認定取得後の「3年以内」とする猶予措置が与えられている。

しかしながら、保安林解除の標準期間と国有林利活用申請が受理されるまでの環境アセスメント手続期間を合計すると5年程度の期間を要するため、国有林貸付の契約手続が遅れることにより、FIT認定が取り消しとなることが懸念されている。

この問題に対してFIT制度を所轄する資源エネルギー庁からは、適切に事業開発を進めている実態があるならば柔軟に対応するとの回答が示されたが、本来は国有林貸付の手続が3年以内に完了することが望ましいと考えられる。

林野庁からの回答

JWPA・地熱協会の指摘・要望を受け、林野庁は第6回タスクフォースにおいて、手続の簡素化・明確化によりその迅速化を図ることを基本的な方向性として示した

国有林の貸付等手続の迅速化に向けて、手続の流れや必要な書類等を整理した資料を2020年度内に作成・公表することや、提出書類の簡素化や他の手続きとの共用化に向けて、2021年度内に詳細なマニュアルを作成・公表することを回答した。

保安林解除の迅速化・簡素化についても、JWPA等の協力を得つつ事例分析に基づいたマニュアルを作成したうえで、都道府県・森林管理局職員に対する研修等を実施すると回答した。

また2021年6月までに新たに「保安林ポータル(仮称)」webサイトを開設し、関係通知類やマニュアル等を掲載することとしている。

風力・地熱発電と森林・林業との共生

現在、林道の整備が不十分であることが、林業(伐採や再植林等の森林施業)が困難となっている理由の1つとされている。

風力発電所用道路を林道として活用することにより、森林施業の効率化や森林の防災機能の向上がすでに実現している。

国有財産である国有林に限らず、国民全体の利益の増進のため、森林の公益的機能の維持・一層の向上を目指して、風力や地熱等の再エネ発電事業と森林経営・林業が共存・共生していく新たな制度の構築に期待したい。

再エネタスクフォース意見に対する農水省の対応

第2回タスクフォースでは営農型太陽光発電や農地転用に関して、農水省に対して多数の要望が寄せられたが、今回第6回タスクフォースでは農水省から幾つかの改善回答が示されたので、その抜粋を報告したい。

1.営農型太陽光発電:

荒廃農地における営農型太陽光発電に限り、単収8割確保の要件は求めないこととし、発電設備の下部の農地が適正かつ効率的に利用されているか否かによって判断する。

2.『再生利用困難な』荒廃農地(19.2万ha)の非農地判断:

農地保有者自身が地目変更手続きをおこなうことが原則であるものの、保有者の都合により変更手続きがおこなわれないことがある。

このため農業委員会が利用状況調査において再生利用困難な荒廃農地(非農地)と判断した場合には、その旨を所有者・市町村・法務局等の関係機関に対して通知し、通知を受けた市町村長が職権で一括して法務局に地目変更の申出をおこなうこととする。

3.『再生利用可能な』荒廃農地(9.1万ha)の活用:

農山漁村再エネ法による農地転用の特例の対象となる荒廃農地について、3要件のうち、「生産条件が不利」、「相当期間不耕作」の2要件を廃止し、「耕作者を確保することができず、耕作の見込みがない」ことのみで対象となるよう要件を緩和する。

ただし、意図的に農地を荒らすなどのモラルハザードを防止するための措置も検討する。

梅田あおば
梅田あおば

ライター、ジャーナリスト。専門は、電力・ガス、エネルギー・環境政策、制度など。 https://twitter.com/Aoba_Umeda

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