日本が世界の最先端 究極の再エネ?! 宇宙太陽光発電の実用化に向け、2022年度から本格実証はじまる | EnergyShift

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日本が世界の最先端 究極の再エネ?! 宇宙太陽光発電の実用化に向け、2022年度から本格実証はじまる

日本が世界の最先端 究極の再エネ?! 宇宙太陽光発電の実用化に向け、2022年度から本格実証はじまる

2022年01月19日

宇宙空間に巨大な太陽光発電所をつくり、大量の電力を24時間地上に送り届ける。そんな壮大なプロジェクトが「宇宙太陽光発電システム(SSPS:Space Solar Power Systems)」だ。脱炭素社会の実現に向け、再生可能エネルギーの導入が世界各国で加速する中、地上の天候や昼夜関係なく発電する宇宙太陽光発電は究極の再エネと位置づけられており、日本が世界をリードする。日本政府は2050年までの実用化を目指し、2022年度から宇宙空間で太陽光パネルを展開する実証実験をはじめる。宇宙太陽光発電とはいったいどんなものなのか、その可能性に迫る。

昼夜、天候関係なく発電可能な宇宙太陽光発電とは

宇宙太陽光発電とは、赤道上空、高度3万6,000キロメートルの軌道上に発電衛星を浮かべて、太陽の光を集めて発電し、その電力をマイクロ波などの電波に変換して、地上に送るというプロジェクトだ。発電衛星は太陽光パネルと送電アンテナを備えており「宇宙に浮かぶ発電所」とも呼ばれる。

約2キロメートル四方と超巨大な太陽光パネルを軌道上に展開して、原子力発電所1基分に相当する100万kWもの電力を発電し、電波に変換された電力を地上で受信するアンテナは直径4キロメートルにも及ぶという夢のようなシステムが構想されている。

マイクロ波方式のSSPSのイメージ


出典:文部科学省及び経済産業省

実は、宇宙太陽光発電の歴史は意外と古い。1968年、アメリカのピーター・グレーザー博士によって、化石燃料に頼らない究極の再エネとしてはじめて提唱された。当時のアメリカはアポロ計画全盛期。宇宙開発競争の流れを受け、ちょうど研究がはじまっていたマイクロ波送電技術を採用して、次なる宇宙開発のひとつとして建設方法が検討されはじめる。1970年代に起こった石油ショックによって、一気に社会から注目されるようになった。

だが、なぜ宇宙空間にわざわざ発電所をつくるのだろうか?

理由は簡単、非常に発電効率が高いからだ。2050年脱炭素に向け、日本政府は再エネを最大限導入し主力電源化する目標を掲げており、2030年度までに太陽光発電を今の2倍の水準となる1億kW導入する方針だ。ただ、地上に設置する限り、夜は発電できず、昼間も天候に左右され、雨や曇りの日は発電量が落ちてしまうという課題がある。一方、3万6,000キロメートルの宇宙は雲など地上の気象条件にまったく左右されず発電できる。また地球の赤道は太陽方向から約24度傾いていることから、春分や秋分の時期に最大70分間、地球の影に入る以外、24時間の発電が可能だ。


出典:日本電気硝子

しかも大気に邪魔されることがないため、強度の強い太陽の光が得られることから、地上と比べて発電効率は約10倍にもなるという(宇宙システム開発利用推進機構試算)。つくった電力は電波で届けるため、電力が必要な地域に柔軟に送れる。もちろん、再エネであるため二酸化炭素も出さず、燃料費もかからない。地上側の巨大受信アンテナについても、海上設置などが想定されており、複数建設しておけば、地震や台風など自然災害が起こっても停電することがない。

まさに究極の再エネ、夢のプロジェクトだ。それだけに日本政府も宇宙政策の基本方針である「宇宙基本計画」において、宇宙太陽光発電の実現に向け研究開発に取り組むことを毎年、明記している。2021年末の改訂では、「宇宙太陽光発電の実現に向けて、2025年度をめどに地球低軌道から地上へのエネルギー伝送の実証を目指す」ことが盛り込まれた。

しかし、その実現は早くても2050年ごろ建設には膨大なコストがかかるうえ、発電後、マイクロ波などに変換して3万6,000キロメートル離れた地上に送電する技術開発が非常に難しいためだ。

宇宙太陽光発電にのしかかる2つの大きな課題・・次ページ

藤村朋弘
藤村朋弘

2009年より太陽光発電の取材活動に携わり、 その後、日本の電力システム改革や再生可能エネルギー全般まで、取材活動をひろげている。

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