脱炭素の潮流が強まる中で、政府は洋上風力発電を脱炭素の切り札的存在として位置付けている。ただし国内における洋上風力発電は市場の立ち上がり自体がこれからの状態だ。また国内では主力となることが予想される浮上式洋上風力発電は、事業化に必要な技術開発も残されている。
市場の立ち上がりが目前に迫る国内洋上風力発電について関連銘柄の動向とともに株価の推移を概観する。
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国内で脱炭素の切り札的存在として、洋上風力発電への期待が高まっている。洋上風力発電は既に欧州では主力電源としての地位を確立しつつある。しかし国内では、地上の風力発電所設置は立地的にほぼ出尽くし感があるものの、洋上風力発電は殆ど手つかずの状態だ。
洋上風力発電は海底に風車の支柱を固定する着床式と、海面に浮いた構造物の上に風車の支柱を固定する浮体式の2種類がある。洋上風力発電が一足先に普及した欧州は、海底までの深度が浅いため着床式が主流だ。
しかし国内では、太平洋側及び日本海側ともに海底までの深度が深い海域が多く、着床式の洋上風力発電施設の設置は欧州に比べ難度が高いため浮体式洋上風力発電が本命視されている。ただし浮体式はまだ事業化に必要な技術開発も残されている。
国内洋上風力発電は戸田建設が長崎県五島市の沖合で、2016年3月に国内初となる浮体式洋上風力発電設備を実用化し、商用運転を継続中だ。
また本年6月には戸田建設を代表とするコンソーシアムが「再エネ海域利用法」に基づく「長崎県五島市沖 海洋再生可能エネルギー発電設備整備促進区域」において選定事業者に決定されており、今後の浮体式洋上風力発電設備の設置・運営が予定されている。
戸田建設による、長崎県五島沖の商用浮体式洋上風力発電施設「はえんかぜ」
国内の洋上風力発電市場は、2021年秋時点では殆ど立ち上がっていない。政府の方針もあり今後市場の立ち上がりが予想されるが、矢野経済研究所の予想(2020年9月)では国内洋上風力発電市場の本格的な立ち上がりは2022年以降となっている。
矢野経済研究所の予想では2021年までの国内洋上風力発電市場の市場規模は100億円に満たないが、2022年に500億円まで拡大する。その後は2023年1,593億円、2024年2,800億円、2025年3,970億円と右肩上がりとなり、2030年には1兆円に迫る9,000億円への到達が予想されている。
現状では殆ど市場の立ち上がりがなされていない国内の洋上風力発電市場だが、今後10年程度で1兆円に近い市場となると見込まれている。少子高齢化が進み成長市場が限られる国内において、洋上風力発電市場の成長は非常に魅力的だ。
政府は洋上風力発電について、「秋田県能代市、三種町及び男鹿市沖」「秋田県由利本荘市沖(北側・南側)」「千葉県銚子市沖」で事業者の公募を行った(2021年5月締め切り)。現在各地域では環境影響評価の手続きが進められている。
また経済産業省は地域一帯で洋上風力発電の開発を進めるため、北海道岩宇・南後志地区沖、山形県酒田市沖、岩手県洋野町沖の3海域で調査を進めると本年8月に発表しており、洋上風力発電の拡大を支援する。漁業権の取り扱いなど洋上風力発電を開始するためのハードルは数多くあるものの、政府も関与して各方面との調整を行うことで、洋上風力発電の事業環境整備を行う計画だ。
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