脱炭素時代において超重要な技術の一つが蓄電池だ。電気自動車(EV)ではすでに蓄電池の争奪戦が始まっており、どう抑えるかが必須の論点になっている。その中でも次世代の電池として注目され、開発競争が激化しているのが全固体電池だ。リチウムイオンが移動して電気を流す「電解質」に液体ではなく、固体の材料を使う全固体電池は航続距離や電池の寿命を延ばす上、充電時間の短縮や電池を燃えにくくするといった特性を持つ。その一種である「全固体リチウム硫黄電池」について、産業技術総合研究所(産総研)があるブレークスルーを果たした。実用化に向け大きく前進するのか、ゆーだいこと前田雄大が全固体リチウム硫黄電池について、その全貌を解説する。
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いま、一般的に使用されているバッテリーは、可燃性の有機電解液を用いるリチウムイオン電池が全盛となっている。一方、なぜ全固体電池が注目をされるかというと、発火リスクが軽減されるため安全性を飛躍的に改善できるという特性があるからだ。
全固体電池は、電池の正極と負極の間にあり、リチウムイオンが移動して電気を流す「電解質」に液体ではなく、難燃性、つまり燃えにくい無機の固体電解質粒子を用いる。また、電池内で直列に積み重ねる直列積層が容易なため、高電圧化によってパッケージとしてエネルギー密度の改善も期待されている。
つまり、全固体電池が実用化されれば、安全性は高いのに、電池の性能が上がるわけだから、それは期待されるよな、となるわけである。
少しマニアックな話になるが、この全固体電池、特に酸化物系固体電解質材料は硫化物系固体電解質材料と異なり、水と結合して有毒な硫化水素が発生する危険性がなく、より安全な電池を実現できるとされており、研究が進んでいる。
そうした中、全固体リチウムイオン電池の一種類であり、性能をさらに高める電池と期待されている、「全固体リチウム硫黄電池」の開発が日本で進んでいる。この全固体リチウム硫黄電池の開発において、2021年11月20日、産総研があるブレークスルーを果たしたと発表した。
全固体電池の実用化に向けて大きく前進するのか。今回はEV性能を飛躍的に向上させると期待される全固体リチウムイオン電池の課題を解説した上で、次の3つの論点から将来像を展望したい。
まずは、全固体リチウムイオン電池の課題について解説していきたい。
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