Energy×Artによる新価値創造 -インスピレーション溢れる海外アート作品5選- | EnergyShift

脱炭素を面白く

EnergyShift(エナジーシフト)

Energy×Artによる新価値創造 -インスピレーション溢れる海外アート作品5選-

Energy×Artによる新価値創造 -インスピレーション溢れる海外アート作品5選-

2020/08/05

エネルギーと現代アートとは、あまり関係のないものだと思っていないだろうか。アートの志向するものが人間の根源的な問いであるとすれば、やはり人間の根源的な欲求に深く関与するエネルギーと深く関わることは必定である。エネルギーを考える上で興味深いアートプロジェクトの事例とアイデアを、エネルギー診断クラウドサービス「エネがえる」の樋口悟氏が紹介する。

エネルギーとアートの関係性

前回の記事では、「エネルギー×デザイン」をテーマにした記事を書いた。「デザイン」と「アート」の違いを一言で言い切るならば、「デザインは問題解決であり、アートは問いそのものである」となる。「なんでもいいから、まずやってみる。それだけなんだよ」と日本の誇る世界的アーティストの岡本太郎は生前そう言った。
そこで、今回は特になんら答えを求めず、脱炭素というテーマの周辺で、なんか見ていて美しいな、興味深いなという私の超個人的なアンテナにかかった海外作品を5つ紹介する。

5つの海外事例と応用アイデア

STUDIO ROOSEGAARDE:Van Gogh Path / DAAN

事例01|太陽光で充電し夜はロマンティックに光る自転車道

STUDIO ROOSEGAARDE(ヌエネン/オランダ)

概要

STUDIO ROOSEGAARDEのファウンダーDAAN ROOSEGAARDEのプロジェクト。「Van Gogh Path」は、1883年にゴッホが住んでいたオランダ・ヌエネンにつくられた革新と文化遺産を組み合わせた未来の自転車道。「星空」に触発された何千もの輝く石でできている。昼間は太陽光で充電し、夜は光を放つ。夜になると発光する蛍光塗料を利用している。 「安全性や環境的な観点というよりも、個人的には、『最初のデート』にぴったりな場所だと思う」とダーンは語る。

DAAN ROOSEGAARDEから得られるインスピレーション

日本の電力・エネルギー関連のプロジェクトは、経済性や環境的な観点で語られるのが常識だ。だが日本にも歴史的、文化的な遺産や物語は数え切れないくらいにある。 DAAN ROOSEGAARDEのように日本の再エネプロジェクトにも「最初のデートにぴったり」といったロマンティックな物語を取り入れられないか?

Warming stripes / Ed Hawkins

事例02|世界各国の温暖化を美しいグラフィックで可視化する

Warming Stripes(レディング大学/英国)

写真は1901年~2019年の日本の温暖化をビジュアライズしたもの。

概要

地球温暖化を描いたデータの可視化で有名な気候科学者Ed Hawkinsのプロジェクト。過去100年以上にわたり各国で測定された年間平均気温の変化を美しいストライプで可視化した。温暖化の世界と気候変動のリスクについて、必要最小限の科学的知識をもった一般の人たちでも対話を可能にするシンプルで緻密な設計が特徴。美しく示唆に溢れるグラフィックは、フランスのファッション誌L'EDNに「気候緊急事態の新しいシンボル」と呼ばれ、世界中のSNS(#ShowYourStripes)で拡散、ファッション、音楽イベント、COVID-19対策のフェイスマスクなど広がりを見せている。

COVID-19パンデミック時のフェイスマスクにも使われる。

Hawkinsから得られるインスピレーション

真面目に膨大な予算と労力をかけた文字や美しいとは言えないグラフばかりの官公庁の統計資料。一部の業界人の中で閉じており、もったいないなと感じる資料は数多い。Ed Hawkinsのように「科学的知識やリテラシーを超えて対話を生み出す一枚の美しいビジュアル」として再利用できないか?

Land Art Generator

事例03|パブリックアートを使った再生可能エネルギーインフラ創造

Land Art Generator(シアトル/米国)

概要

Land Art Generator Initiativeは、再エネを生み出す大規模なパブリックアートを推進するシアトル発の非営利団体。アーティストのエリザベスモノイアンと建築家のロバートフェリーが2008年に結婚した直後に設立。コンセプトは、「Renewable Energy Can Be Beautiful」。
都市と農村の景観と住民にプラスとなる美的価値を備えた再エネのインフラをパブリックアートの力を活用し推進している。国際的なデザインコンペを主催し1,000以上の再エネ×パブリックアートのプロトタイプを生み出している。

Land Art Generator Initiativeから得られるインスピレーション

日本でも数多く問題点が指摘されるメガソーラーや大規模な風力発電による再エネ推進と地域住民や景観保護の二項対立。これらを解消する一つの手として、戦略的かつ地域住民を巻き込んだパブリックアートのスキーム、つまり美的価値を重視したまちづくりの一貫として再エネ設備導入を推進できないか? 二項対立を超える問いを発信できるアーティストを巻き込むことはできないか?

Heartbeat of the Earth / Google Arts&Culture Lab

事例04|気候統計データを使った実験アートプロジェクト

Heartbeat of the Earth / Google Arts&Culture Lab(サンノゼ/米国)

概要

Heartbeat of the Earthは、Google Arts&Culture LabとUNFCCC(気候変動枠組条約)とのコラボレーションにより実現した「気候データ」をモチーフにした実験的アートプロジェクト。5人のデータアーティストたちが、国連報告書や世界気象機関などの気候関連データを駆使して、食料消費、氷河融解、海面上昇などをテーマにしたアート作品を制作。Googleのプロジェクトらしく膨大かつ科学的な気候関連データを駆使したデータ駆動型のアートである点が特徴。過去140年にわたるスイスのローヌ氷河とトゥリフト氷河の衝撃的な後退をビジュアル化した「Timelines」などデータから生まれた美しいアートワークが見れる。

Google Arts&Culture Labから得られるインスピレーション

エネルギー・環境等の社会課題をテーマにするとき「時間軸」で変化やインパクトを体感させるというのが一つのポイントとなる。
日本の脱炭素プロジェクトにおいても、「業界ゴト・内輪ゴト」を一般の人々を巻込み「世の中ゴト」に変える手段として、最近注目を集めているナッジといった手法と同様に、「統計データとビジュアライゼーション」を繋ぐデータ・ビジュアライゼーションやデータ・アーティストなどと呼ばれるプロフェッショナルに注目が集まることだろう。

Olafur Eliasson

事例05|無電化地域に太陽光発電ランプを普及させるアーティストを超えたアーティスト

Olafur Eliasson(ベルリン/ドイツ)

概要

オラファー・エリアソンは、自然豊かなアイスランド生まれのアーティスト。電気供給のない場所に住む人々のためにデザインフルな安価な太陽光発電ランプをつくり、それを先進国の人々への販売を通じて届けるビジネスモデルをデザインした「Little Sun Project」で「アーティストを超えるアーティスト」として世界的に認知された。「Little Sun」は、さらにイケアとのコラボによる小型の発電装置「SAMMANLANKAD」に発展し、2021年にイケアで販売予定。サハラ以南のアフリカを中心に、地元の起業家と協力して事業を展開し、雇用を創出しながら、電力を必要とする人々に持続可能なエネルギーを提供していく。エリアソンが1995年にベルリンで設立したスタジオ・オラファー・エリアソンには、技術者以外にも、美術史家、料理人など100名を超える多種多様なメンバーが存在し、サステナブルな生分解性の新素材やリサイクルの技術に関する実験やリサーチが日々行われている。

Olafur Eliassonから得られるインスピレーション

Olafur Eliassonは、アーティストと同時に優れたソーシャル・アントレプレナーでもある。
日本国内にもRhizomatiksやチームラボのような先端テクノロジーやアートを駆使した新しい価値創造を志向する世界的な企業が出てきている。日本の脱炭素領域の実証実験でも、そういったラボを巻き込みながら世界的に日本の環境技術を発信することは可能だと思う。
ちなみに、Olafur Eliassonの大規模個展がいま東京都現代美術館で開催されているらしい。気になる方はぜひ一度観に行ってみよう。

エネルギー業界で働く私たちの「根源的な」ミッションとは?

「あなたの憎しみを電気に変換してしまいなさい。そうすれば世界全体が明るくなる」。天才発明家、ニコラ・テスラの言葉である。新型コロナウイルスによる社会情勢の変化の中で、社会のあらゆる局面で、大きな負の感情が蠢いている。
こんな時代に大事になるのは、まさにニコラ・テスラのような「モノの捉え方」だと私は思う。
エネルギー業界で働く私たちの根源的なミッションは、単に事業として電力やRE100を志向することだけではなく、ひとりの人間として、生み出したエネルギーを周りに分け与え、「人々の負や不を笑顔や生きる力に変える」ことではないだろうか?
そんな問いを皆さまに投げかけたい。我ながら適当なこと言ってるなと思いつつ、コメダ珈琲店で名古屋名物おぐらあんを笑顔で食べている。

参照

連載:Energy×X

樋口悟
樋口悟

国際航業株式会社エネルギー部デジタルエネルギーグループ。エネルギー診断クラウドサービス「エネがえる」担当。1996年東京学芸大学教育学部人間科学課程スポーツコーチ学科卒業。1997年ベルシステム24に入社、2000年大手上場小売企業グループのインターネット関連会社で最年少役員に就任。2011年に独立起業。大企業向けにSNSマーケティングやアンバサダーマーケティングを提供するAsian Linked Marketingを設立し30以上の大手上場企業のプロジェクトを担当。5年で挫折。2016年国際航業株式会社新規事業開発部に入社しエネルギー領域の事業開発を担当。