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建設業界の“エンボディド・カーボン”に解決策。XPRIZE優勝の炭素固定のパイオニア、CarbonCureとは

建設業界の“エンボディド・カーボン”に解決策。XPRIZE優勝の炭素固定のパイオニア、CarbonCureとは

2021/06/06

CO2をコンクリートに固定する新技術は、北米を中心に実用化されている。革新的で商用可能なテクノロジーを競う「XPRIZE」では、この技術のパイオニアであるカナダのCarbonCureらが優勝をさらった。AmazonやMcrosoftも注目する同社のCO2固定技術とは?

世界最大級のテック・コンペ「XPRIZE」で優勝

XPRIZEとは、世界の課題を解決する革新的かつ実用的なテクノロジーを競うグローバルコンペだ。非営利組織のXプライズ財団が運営し、評議会員には映画監督のジェームズ・キャメロン氏、Google創設者のラリー・ペイジ氏らが名を連ねる。民間初の有人弾道宇宙飛行を競った「アンサリ・Xプライズ」でも知られる。今年2月にはイーロン・マスク氏主催のCO2除去コンテストが話題になった。

2015年には、米国の総合電力会社NRG Energyとカナダのオイルサンド革新同盟COSIAによる賞金2,000万ドルの「NRG COSIA Carbon XPRIZE」が口火を切り、CO2活用技術をめぐって熱戦が繰り広げられてきた。コンペは3ラウンド・54ヶ月にわたって開催され、2018年4月からの第3ラウンドでは参加者が27社から10社に絞られた。

「NRG COSIA Carbon XPRIZE」の結果は2021年4月に発表されたばかりだ。栄えある受賞者は、カナダのCarbonCure Technologiesとカリフォルニア大学出身のCarbonBuiltの2社だ。両社ともCO2をコンクリートに固定する技術を商用化している。


XPRIZE リリースより

CarbonCure Technologies(以下『CarbonCure』)は、AmazonやMicrosoftなども注目するCO2固定技術の雄だ。同社への投資メンバーにはAmazonとGlobal Optimismが立ち上げた「The Climate Pledge*」に加え、ビル・ゲイツ氏のBreakthrough Energy Venturesなども含まれる。

*The Climate Pledgeについてはこちらの記事『米アマゾンが設立したThe Climate Pledge、新たに20社が加わり53社に。IBM、オーステッドも』も参照

2030年までの毎年5億トンの固定目指す

カナダに拠点を置くCarbonCureは、北米を中心に独自技術でCO2を固定したコンクリート製品を販売している。彼らが目指すのは、2030年までに毎年5億トンのCO2を固定することだ。これはガソリン車1億台分の排出量に相当するという。

これまでに94,000トン以上のCO2を固定したCarbonCureのコンクリートは、バージニア州に建設中のAmazon第2本社でも採用が決定している。らせん状のデザインで話題をさらった、あのビルだ。これによって1,000トン以上のCO2固定が期待される。

既存の工場ラインはそのままに、CO2固定が可能

CarbonCureのCO2固定のステップは、実に洗練されている。

まず、ガス会社が工場などで発生するCO2を回収。その後精製されたCO2は、生コンクリートの製造工場に運ばれる。コンクリート工場にCarbonCureの設備を接続し、その場でCO2を固定する。コンクリート工場の製造ラインなどを大幅に変更しなくてもCO2固定ができる点は、大きなアドバンテージだ。

CO2固定されたコンクリートは、レディーミクストコンクリート(練り混ぜただけの状態)や成型済みのプレキャスト、ブロック状の組積造の3タイプに加工できる。CO2が漏れ出ないのか心配になるが、750℃以上にまで熱さない限り、再び放出されることはない。

CO2固定の仕組みについてもう少し詳しく説明する。CO2がコンクリートに注入されると、鉱化作用(mineralization)によってCO2がミネラルへと変わる。鉱化作用とは、CO2などがある条件下で岩盤に触れると鉱物を生成する現象だ。高温のマグマ中でもみられるという。

CarbonCureはこの鉱化作用を応用し、CO2を固定してもコンクリートの強度を保つことに成功した。これによって、コンクリートの原料であるセメントの使用量を減らす効果もあるという。セメントの量が減れば、コンクリートの価格低減も期待できるとしている。

CO2の固定量は、コンクリート1立法メートルに対し17kg-CO2。典型的な中規模の商業ビルであれば、約680トンのCO2を固定できる。 

同社はCO2固定技術の有用性について「CO2削減と収益性が相反するものであってはならない」と主張しており、建築セクターの脱炭素化を推し進める意気込みが表れている。

建築セクターと「エンボディド・カーボン」の課題

建築セクターなどにおけるCO2排出量の考え方に「エンボディド・カーボン(Embodied Carbon)」がある。日本語では「内包二酸化炭素」などと訳されることが多い。世界有数の投資顧問M&Gインベストメンツによれば「建物を建築し、維持する際に排出される温室効果ガス」であり、スコープ3最大級の排出源となる可能性が示唆されている。

国内では、住友林業の光吉敏郎代表取締役社長がトップコミットメントにおいて、日本のエンボディド・カーボンの議論の遅れを指摘している。2020年11月には、東急建設もエンボディド・カーボンの削減を意識し、低炭素型コンクリートを初採用した。

CarbonCureのテクノロジーは、まさにこのエンボディド・カーボンに対する解決策だ。パリ協定の目標を10年前倒しし、2040年までのネット・ゼロカーボンを目指すAmazonが力を入れるのもうなずける。

これからのニーズの高まりを予測し、三菱商事が2021年1月にCarbonCureへの資本参画と業務提携を発表した。今後の建築業界における脱炭素化の進展が期待されるところだ。CO2を削減しながら収益性を上げるというCarbonCureのポリシーを、日本でも大いに体現してほしい。

山下幸恵
山下幸恵

九州大学文学部卒。九州電力グループ会社にて大型変圧器・住宅電化機器の販売に従事。新電力ベンチャーにおいて、ディマンドリスポンスやエネルギーソリューションの提案を行う。自治体および大手商社と地域新電力の立ち上げを主管。福岡市にて、気候変動や地球温暖化、省エネについての市民向けセミナーを実施。2019年よりエネルギーライターとして活躍中。

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