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イーロン・マスク氏は、Xプライズ財団の活動として、大気中あるいは海洋からCO2を取り除く技術開発コンテストに、1億ドルを投じるという。Xプライズ財団はこれまでにもグローバル企業をスポンサーとしてさまざまな技術開発コンテストを行ってきたが、今回の1億ドルのコンペはそのうちでも最大規模となる。
今回発表された「$100M GIGATON SCALE CARBON REMOVAL」コンテストは、今後4年をかけて行われる。参加チームは、大気中ないしは海洋中からCO2を取り出し、最終的にはギガトンレベルでCO2を封じ込める技術を実証することを目指す。
コンテストに参加するためのチーム登録は、2021年4月22日(アースデイ)に発表されるガイドラインに基づき登録、コンテストは2025年のアースデイまで続く。
最初の審査は18ヶ月後に行われ、次の4つの点で、チームを評価し、15チームにしぼられる。
残った15チームはそれぞれ100万ドルを受け取る。また、各チームはこれとは別にチームとしての資金調達も行うことになる。また、学生チームに対しては、25名に20万ドルの奨学金があたえられる。
賞金は、最優秀受賞者が5,000万ドル、第2位が2,000万ドル、第3位が1,000万ドルとなっている。
Am donating $100M towards a prize for best carbon capture technology
— Elon Musk (@elonmusk) January 21, 2021
Xプライズ財団は1995年に設立され、人類の課題解決のブレークスルーをテーマとしたコンテストを行ってきた。2004年に開催された、民間による有人宇宙飛行を競うアンサリXプライズがよく知られているが、この他にもさまざまなスポンサーを通じて、海水からの原油除去や人間の遺伝子解読などをテーマとしたコンテストを行ってきた。最近ではコロナ危機に対応した次世代マスクをテーマとしたコンテストを行っている。
財団のホームページには、すべての人にとってより良い未来を作るという、ミッションが掲げられている。
今回のコンテストにあたって、イーロン・マスク氏は「ギガトンレベルで測定可能な(CO2除去の)影響を与えることができるリアルなシステムを構築するチームを求めています。 何があろうと、 時間が重要なのです」として、急がれる気候変動対策としての取り組みであることを強調している。
一方、Xプライズ財団の会長で創設者であるピーター・ディアマンディス氏は「私たちは、この重要な分野を、アンサリXプライズ(民間のみによる宇宙飛行コンテスト)が商業宇宙飛行を動かしたのと同じ方法で前進させることを望んでいます」として、今回のコンテストにも大きな期待を寄せている。
同じくXプライズ財団のCEOであるアニューシャ・アンサリ氏は、「人間の創造性、革新性、競争力を利用して、私たちの歴史を書き直し、私たちの故郷であるこの惑星における全員のより良い未来を創造することは、今からでも遅すぎることはありません」と語っている。
気候変動というグローバル危機に挑戦する、Xプライズ財団の中でも過去最大の資金を投じたコンテストがスタートする。
地球の平均気温の上昇を1.5℃以下に抑えるためには、2050年までにカーボンゼロ(人為的なCO2の排出量をゼロにすること)が必要だとされている。しかし、それまでに排出量が排出可能な分(カーボンバジェット)を超える可能性は高い。そのため、科学者の間には、2030年までに年間6ギガトン、2050年までに年間10ギガトンのCO2を除去する必要があると推定する見方もある。現在のCO2排出量は年間約33ギガトン(2019年)なだけに、相当な割合のCO2の除去ということにもなる。
Thanks to @elonmusk, Carbon Capture is having a moment! But why is it so important? Let Marcius Extavour, and one of the world's leading experts on Carbon Capture, sum up everything you need to know. ♻️ 💡#carbontech #elon #elonmusk #techforgood #techtalk #technews pic.twitter.com/ZLjFaFO1L3
— XPRIZE (@xprize) January 22, 2021
なぜカーボン除去が重要なのかを紹介するXプライズ財団のtwitter
スイスのスタートアップ企業のクライムワークスが、アイスランドで水力発電や地熱発電の電気を利用して捕捉したCO2を地中に貯留する実証事業を行うなど、さまざまな取り組みが行われているが、コストの面でも規模の面でもまだまだ実用化には遠い。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の1.5℃特別報告書などでは、カーボンマイナスの事例として、バイオマス発電所とCCS(CO2回収貯留)を組み合わせたBECCSや、植物を育ててそのまま地中に埋めるといった手法も例示されているが、いずれも課題は多い。
こうした状況に対し、カーボンマイナス技術の開発を促進することを目的に、EV(電気自動車)メーカーであるテスラの共同創業者が自費を投じたことになる。
https://www.xprize.org/prizes/elonmusk
(Text:本橋恵一)
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