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昨冬の需給逼迫を踏まえた、新たな「kWh」管理指標 第63回「調整力及び需給バランス評価等に関する委員会」

昨冬の需給逼迫を踏まえた、新たな「kWh」管理指標 第63回「調整力及び需給バランス評価等に関する委員会」

2021/07/15

これまで、夏や冬の電力需要のピークを防ぐための、ピークカットという方策がとられてきた。しかし2020年度冬季の場合、燃料の不足などによって電力量そのものが不足した。2021年7月1日、電力広域的運営推進機関(広域機関)の第63回「調整力及び需給バランス評価等に関する委員会」では、電力量不足に対する管理指標やリスク評価について議論された。

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これまであまり考慮されてこなかったkWh(電力量)不足のリスク

2020年度冬季に発生した電力需給逼迫と記録的なスポット市場価格の高騰は、kW(供給力)不足ではなく、kWh(電力量)の不足がその主な原因であると報告されている。

まず厳寒による需要の増加やベース電源のトラブルにより、LNG等の火力燃料の不足が顕在化した。このため発電事業者は燃料制約により、部分出力運転や夜間の発電停止等の燃料消費を抑制した稼働をおこなわざるを得ず、全国的・広域的に発電量kWhが減少することとなった。

広域機関では毎年、夏季・冬季の需要ピーク前に、広域的な電力需給バランスの検証をおこなっているが、これは主にkW・供給力の観点により予備力や予備率が算定、評価されている。

従来は揚水発電の上池容量制約によるkWh不足は考慮していたものの、火力発電についてはkWh不足は考慮しておらず、供給力として原則最大出力kWまで供出できることを前提に評価されてきた。

このため広域機関では、火力のkWh不足を広域予備率に反映する方法や、でんき予報に表示する具体策の検討を開始している。

「調整力及び需給バランス評価等に関する委員会」の第63回会合では、kWhの新たな管理指標やリスクの織り込み方等について検討がおこなわれたので、これをご紹介したい。

kWh管理とkW管理の違い

kWh管理の考え方を把握するには、従来のkWと対比することにより、その違いや特徴が明確になると考えられる。まずkWは図1で示した需要の山や供給力の「高さ」としてイメージされ、kWhはこの山の「面積」としてイメージされる。

図1.kW管理のイメージ

出所:「調整力及び需給バランス評価等に関する委員会」

kWの管理とは、対象日時における瞬間的な供給力の余力、つまりkW予備力を把握することと言える。

容量市場のように4年後の供給力kWを確保する方策もあるが、ある年度内の需給バランス評価においてkW面での需給逼迫が予想される場合には、電源の補修計画の日程調整やデマンドレスポンス等の需要側対策、休止電源の再稼働などの短中期的な対策が取られる。

これに対してkWhの管理においては時間の概念を取り入れ、先々一定の期間を見通したうえで、持続的な電気の量(kWhの余力)を把握する必要がある。

図2.「kWh」管理のイメージ

出所:「調整力及び需給バランス評価等に関する委員会」

kWh不足に対応する管理としては、時間軸として火力燃料の追加調達の可否により、リスク評価と対策が異なる。

燃料の調達には通常1.5ヶ月以上掛かるため、事前にkWh不足を把握し、燃料の追加調達や配船調整による燃料の確保をおこなうことで、まずは中期的なkWh不足を回避する。他方、燃料調達が間に合わない段階(例えば1ヶ月前)においてkWh不足が把握された場合には、他の追加供給力対策や需要側対策により、kWh不足を回避するための管理がおこなわれる。

「調整力及び需給バランス評価等に関する委員会」では、新規の燃料調達が間に合わない1.5ヶ月以内を対象として「短期のkWh管理」と呼んでおり、第63回会合では、この短期のkWh管理を重点的に検討している。

kWhは「面積」的、持続的な電気の量を表しているため、昨冬の需給逼迫で経験したように、一度kWh不足による需給逼迫が生じてしまうと、その影響は長期間に及ぶことが懸念される。これは対策面でも同様であり、不足分の面積に対応する対策を早期に着手することが効果的である。

図3.kWh不足時の対策イメージ

出所:「調整力及び需給バランス評価等に関する委員会」

図3のように前日段階で初めて対策に着手する場合には、対策①②の両方が必要となり、社会的負担も大きくなるが、前々日段階であれば対策①だけで不足分の解消が可能となる。つまり、対策①を早期に開始するほど、また対策実施日数を増やすほど、1日あたりの対策量は小さくて済む、という特徴がある。

もう一つ、「kW」不足対策と「kWh」不足対策には、大きな違いがある。例えば真夏の電力需要急増によるkW面での需給逼迫が予想される場合には、まさにその時点・瞬間に供給力kWを稼働させる「同時性」が不可欠である。

これに対して、kWh不足対策には同時性はほとんど不要である。

図3では対策①は前日と前々日に実施される姿を描いているが、燃料制約によるkWh不足が予想される場合、「燃料節約」といった対策は、必ずしも前日・前々日に実施する必要は無く、3日前・4日前の実施で構わない、と言える。

このように、面積的な対策を事前に「貯金」できることも、kWh不足対策の特徴である。

短期のkWh管理の基本的な考え方

まずkWhの余力を把握するためには、エリア需要(日電力量)および入船計画を加味した燃料在庫に基づく発電可能量等から、余力となるkWhの推移カーブ(図4のギザギザの破線)を作成する。

図4.短期のkWh管理のイメージ

出所:「調整力及び需給バランス評価等に関する委員会」

kWh余力の把握方法(気温想定や計画変更等を定期的に見直し)

① エリアの燃料在庫および入船計画を把握

② 燃料在庫・入船計画を日々のkWhに変換

③ 一定期間先までの日々のエリア需要(日電力量)を想定

④ 一定期間先までのkWhの推移カーブを作成

⑤ 一定期間先までの日々のkWh余力を把握

一定期間(例えば30日)先までを見据え、kWhを管理することにより、日々の更新において一定期間先のkWh不足が把握でき、それに対する対策を講じることができる。

図5の例では、期間①ではkWh不足は認識されないが、翌日、期間②に入った瞬間、突如としてkWh不足が検出されることとなる。

図5.一定期間内におけるkWh不足の検出

出所:「調整力及び需給バランス評価等に関する委員会」

なおkWh不足量を日数で割ることにより、日々必要な対策量が算出できる。例えば大規模電源が脱落した際には、kWh余力カーブが急激に低下し、一定の長い期間(例えば、追加燃料が到着するまで)を通じてkWh不足が生じることが想定される。

このときkWh管理面では、A.「5日後の200kWhの不足」とB.「20日後の500kWhの不足」が予想される場合、不足総量はBのほうが多いものの、1日あたりの必要対策量はAのほうが多く(40kWh/日)、より緊急性の高い断面と考えられる。

短期kWh管理のリスク評価

kWh不足が生じる原因を大別すると、需要kWhの継続的な急増と、電源の脱落の2つが考えられる。

kWh面での需要とは、特定の1日が異常に暑い状況ではなく、想定よりも暑い日が一定の長期間継続するなどにより、影響が大きくなる。よって気温実績や気象予報により、ある程度の予見性を持つことが可能である。よってこのリスクは随時、kWh余力カーブに織り込むことが可能である。

他方、電源脱落については通常は突然発生するものであり、予見性を持つことは出来ない。よってこのリスクは、確保すべき水準にあらかじめ織り込んでおく必要がある。

図6.kWhの管理におけるリスクの織り込み

出所:「調整力及び需給バランス評価等に関する委員会」

kWhの管理指標

kWh不足を把握し必要な対策を講じるためには、kWhの状況を評価する管理指標をあらかじめ決めておく必要がある。上述のとおり、kWh管理においては現在から特定日までの日数を踏まえたkWh余力を管理することが重要である。

需給バランス委員会で複数の案を比較検討した結果、「一定期間のkWh余力の最小値」を管理指標とする案が選定された(図7の赤い両矢印)。現時点では、図7のようにこの一定期間を「3日間」や「1ヶ月間」とする複数の案が示されており、次回以降の需給バランス委員会で検討が深められる予定である。

図7.一定期間のkWh余力の最小値による管理

出所:「調整力及び需給バランス評価等に関する委員会」

今後の検討課題

次の論点としては、この管理指標をどのような形で表示し、kWhの状況を広く社会に伝えていくか、という検討課題がある。

現在のkWにおいても、予備力(絶対量)と予備率(比率)の双方で表現されているように、kWhについても以下のような3案が候補として考えられる。

案①:当該数値をそのまま表示 (例)3,000万kWh

案②:当該数値を日数で割る (例)1,000万kWh/日

案③:日電力量に対する比率で表示 (例)1.0%

(案①×日数を、その期間の合計日電力量で割る)

またkW不足の対策においては、例えば広域予備率が3%を下回ると政府が需給逼迫警報を発令するなど、対策の実施判断をおこなう複数の水準(%)が設定されている(表1)。

kWh不足の管理指標においても、対策の実効性を上げるため、複数の水準設定について検討が進められる予定である。

表1.kW予備率水準による対策の実施

広域予備率
(kW)
予備率の意味する水準
10%電源Ⅰ’を発動し始める水準。
8%広域機関における需給ひっ迫の基準となる水準。
電源Ⅰ’の発動が確実となる水準。
3%政府が需給ひっ迫警報を発令する水準。
電力品質を維持するために必要な瞬動予備力を最低限確保できる水準。
1%電力品質を維持するために必要な瞬動予備力を確保できていない水準。
計画停電を検討する水準。

出所:「調整力及び需給バランス評価等に関する委員会」

梅田あおば
梅田あおば

ライター、ジャーナリスト。専門は、電力・ガス、エネルギー・環境政策、制度など。 https://twitter.com/Aoba_Umeda

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