日本でも世間の関心が総裁選に集まり、その結果、新しく岸田政権が発足した。日本がどのような路線を行くかという点について諸外国も関心がそれなりに高かったように見受けられるが、その中で、就任直後の首脳レベルの会話でかなり踏み込んだ内容をぶつけてきた国がある。イギリスだ。10月13日の日英電話首脳会談において、ジョンソン首相は岸田総理に対し、石炭火力発電の停止に向けたコミットメントを発表するよう要請した。なぜ、イギリスは日本の石炭火力に対し圧力をかけてきたのか。元外交官であるゆーだいこと、前田雄大が解説する。
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今回は、なぜ、イギリスが日本の石炭火力にプレッシャーをかけてきたのか、簡単に解説したうえで、次の4つの論点について、分析していきたい。
まず、なぜ、イギリスが日本の石炭火力にプレッシャーをかけてきたのか?
イギリス側の発表を見るとそれがよく分かる。イギリスのジョンソン首相との電話会談は、最初こそ総理就任への祝辞が述べられたが、その直後、いきなり脱炭素について話題が及んだことが分かる。中でも、石炭火力の使用についてはかなりの強い要請が突きつけられており、きたるCOP26に向けて、日本が国内の石炭火力発電の停止に向けたコミットメントを発表することをジョンソン首相が要請したというくだりは、きわめて異質だ。
そもそもエネルギー政策は国家の安全保障にもかかわる非常に重要な政策であり、本来であれば他国からとやかくいわれる種類のテーマではない。しかし、気候変動対策・脱炭素というテーマは、地球全体、そして未来に対して責任ある行動を取るという名の下に、他国に対して脱炭素を求めるという介入すら、その御旗の下では許されるような風潮が形成されつつある。
そこを最大限使って、世界のエネルギー・経済の覇権争いを展開しているのが欧州勢なのだが、イギリスはこれまでどちらかといえば、このような露骨な干渉は脱炭素ではしてこなかった。そのイギリスが、方針転換をしたのにはいくつか理由があると分析できるが、その中でも特に彼らが狙っている論点がある。それが、日本政府がこれから力点をいれようとしている洋上風力発電だ。
では、なぜイギリスにとって洋上風力がそれほど大事なのか、解説してきたい。
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