COP26でトピックの1つとなったのが、温室効果ガス(GHG)の1つであるメタンの削減だ。2030年には2020年比でメタンを30%削減する、グローバル・メタン・プレッジという新たな枠組みがスタートした。とはいえ、このメタン削減には疑問もある。GHG排出削減にあたって、削減目標の上積みなのか、CO2削減の時間稼ぎなのか、という点だ。サイドイベント「クリーンエア大臣会合」の議論を紹介し、メタン削減について論じたい。
気候変動枠組み条約でGHGとして排出削減の対象となっているのは、CO2だけではない。この他に、代替フロン、一酸化二窒素、六フッ化硫黄、メタンがある。代替フロンはエアコンなどの冷媒に使われるガスだ。一酸化二窒素は肥料などから発生する。六フッ化硫黄は変圧器の絶縁ガスなどに用いられているガスだ。そしてメタンは天然ガスの主成分であり、牛のげっぷや水田、廃棄物処分場から発生している。いずれもCO2と比較すると、はるかに高い温室効果がある。メタンもCO2の約28倍から約84倍の温室効果がある。実はメタンは長期的には大気中で分解され、水とCO2を発生させるため、短期的な温室効果が高くなる。
メタンはCO2と同様に、自然発生だけではなく、人間の活動によって大量に発生している。代表的なものが、化石燃料の採掘場所である炭坑、油田、ガス田からの漏洩であり、あるいはパイプラインや基地からの漏洩である。また、畜牛の胃でも発生し、大気中に放出されるほか、水田も発生の原因となっている。廃棄物埋立地からの発生も多い。
こうしたことから、メタンの排出削減もまた、気候変動対策としては重要な課題である。9月に米国のバイデン大統領が提案し、100ヶ国以上が賛同、COP26ではバイデン大統領と欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長が共同で、2030年に2020年比でメタンの排出量を30%削減することをめざす、グローバル・メタン・プレッジという枠組みの発足を発表したということだ。
2021年11月9日、SLCPを削減するための気候とクリーンエアの連合(CCAC)による大臣会合がサイドイベントとして開催された。SLCPとは、メタンだけではなく、ブラックカーボン(すす)、フロン類を含む気候汚染物質を指す。
このイベントでは、特にメタンに焦点を当てて、取組の強化について議論し、CCAC2030戦略が了承されている。メタンなどを削減することは、短期間の気温上昇を遅らせ、公衆衛生や食糧安全保障、環境、経済的利益をもたらすという。こと、気候変動問題に関しては、時間稼ぎという面があることは否めない。もちろん、そうであっても、削減の重要性は変わらない。
排出削減対象となるメタンは、基本的には化石燃料由来となる。欧州委員会副委員長のフランス・ティメルマンス氏は、EUが石油・ガス・石炭セクターのメタン削減に取組むことを合意し、農業セクターも含める計画があることを強調した。また、サプライチェーンにそって取り組んでいることにも言及した。というのも、EUの消費に関連する排出量のほとんどは、EU外の生産国で発生しているからだ。
産油国からは、イラクの環境副大臣であるジャシム・アブドゥラジーズ・アル・モハメディ氏が、自国においてエネルギーを含むすべてのセクターからの温室効果ガス(GHG)排出削減に取組んでいることを報告した。
ナイジェリアは2031年までにメタン排出量を60%削減し、早期に行動することに言及した。
世界銀行のバーニス・ヴァン・ブロンホルスト氏は、油田におけるガスフレア(随伴ガスの燃焼処理)での、未燃焼メタンとブラックカーボンの排出の問題を指摘、世界銀行がガスフレアそのものの削減に取組んでいることを強調した。
メタン削減に3億2,800万ドル以上の資金が集まるも課題は山積み・・・次ページ
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