メタン削減にあたっても、資金が必要となる。この点について、米国は、信託基金への300万ドルの拠出を発表した。また、スイスは今後4年間で870万ドルの寄付を発表。カナダは今後5年間で1,000万カナダドル(約794万ドル)を信託基金に寄付、ノルウェーは1,350万クローネ(約187万ドル)の寄付、アイルランドは今後5年間で200万ドルを約束、スウェーデンは2021年に35万ドルを約束した。
この他、セコイア気候基金のハンナ・マッキノン氏は、20以上の世界的な慈善活動によって3億2,800万ドル以上が約束されていることを述べた。
こうした資金を通じて、まずは油田やガス田からの漏洩はガスフレアの対策がとられ、パイプラインの補修がなされていくことになるだろう。それだけではなく、メタン対策は、化石燃料を扱う事業者にとって、少しでもGHGを減らすことにつながり、ひいては延命策ともなる。
とはいえ、気候変動問題の根本的な対策としては、化石燃料からの脱却である。
John Kerry氏。米国気候変動問題担当大統領特使。
メタン削減でより困難な分野は、農業セクターだ。例えば水田は大きなメタン排出源となっている。この点について、バングラデシュの環境・森林・気候変動大臣であるサハーブ・ユーディン氏は、メタン排出に対処する国家行動を紹介した。バングラデシュもまた水田を多く抱えている。
世界資源研究所(WRI)所長のアニルダ・ダスグプタ氏は、農業部門について、生計を改善しながらメタン排出量を削減するために、十分な対処がなされていない分野であることを指摘、現在、CCACなどと協力して新しい研究を行っていることを述べた。
この他、イベントでは廃棄物部門での削減や、フロンの削減などについても言及されている。
廃棄物部門について言及しておくと、これは比較的取り組みが進んできた分野だ。実際に、京都議定書の時代から、廃棄物埋設地から漏洩するメタン対策は、カーボンクレジットを獲得するプロジェクトとなってきた。ただし、これからは、漏洩するメタンを燃焼させるだけでGHG削減として認められるかどうかは別問題だろう。
気候変動対策としてメタン削減が重要であることは間違いない。とはいえ、今回の取組みには懸念が残る。
第一に、産ガス国であるロシアの不参加だ。ただ、EUはサプライチェーンにおいてもメタン削減を求めていく方針なので、ロシアがこれにどう対応するのかは注目される。
中国も同様に不参加ではあったが、11月11日に米国との共同宣言において、独自にメタン削減の取り組むことを発表している。
第二に、これが追加的なGHG削減になるという確証がないことだ。メタン削減は重要だが、その分CO2の削減が遅れるのであれば、意味がない。まして、化石燃料産業を延命させるのであれば、かえって問題ともなりかねない。実際に、メタン排出削減が、そのまま各国のGHG削減目標の上積みになっているということは、現状は明確ではない。
第三に、農業部門での削減だ。水田や畜産からのメタン削減は容易ではない。日本でも、水田や畜牛からのメタン削減の研究は行われている。耕作方法の変更や飼料の改良などでメタンの発生を抑制できるというが、まだ研究段階だ。日本の水田は比較的メタンの発生量は少ないが、東南アジアの水田は発生量が多く、日本とは耕作方法も異なっている。一方、畜産については、そもそも牧場を森林に戻すべきだという意見もある。こうした点も考慮しながら、メタン対策をしていくことになるだろう。
いずれにせよ、メタン削減は、気候変動問題において、古くて新しいテーマとしてクローズアップされたということになるだろう。
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