海運業界が脱炭素に向けた取り組みを加速させる。日本船主協会は10月26日、2050年に日本の海運業界の温暖化ガス排出量を実質ゼロにすることを目指すと発表した。
国際海事機関(IMO)の調査によると、国際海運から排出されるCO2の総排出量は世界全体の総排出量の約2.2%であり、ドイツ1国分の排出量に匹敵するという。現状はほぼ全ての船がCO2を多く排出する重油を使っており、数隻の船で液化天然ガス(LNG)への切り替えが進んでいるが、重油と比較してCO2排出量を25%程度しか削減できないため、目標達成には十分ではない。世界的な脱炭素に向けた動きが強まる中、CO2を排出しない燃料への切り替えが急務となっている。
こうした背景から、造船会社などはCO2を排出しない「アンモニア」を燃料に使う船の開発に相次いで乗り出している。アンモニア燃料船は、脱炭素化時代の海運を支える重要な存在になるとみられているため、海運会社のみならず、エンジンメーカー、関係機関を含めて開発体制を組む。
日本郵船や造船会社の日本シップヤード(NSY)などは10月26日、国産のアンモニア燃料エンジンを搭載したアンモニア輸送船を開発し、2026年度までに就航させると発表した。アンモニアと少量のバイオ燃料などを混ぜて燃やすことで、温室効果ガスの排出を実質ゼロにする。国も最大で84億円を支援することにしている。
今後はCO2を排出しないアンモニアや水素を燃料に運航する船を新規建造していかなければならない一方、コストが大きな課題となっている。日本船主協会によると、日本の船会社が運航する船は約2,240隻あり、2025~2050年にかけて単純計算で毎年約100隻、金額としては約1兆円規模の投資が必要になるという。
日本郵船グリーンビジネスグループの横山勉グループ長は「世界中で技術開発にしのぎを削っている中で、オールジャパンで課題を解決していきたい」と強調。国際動向が脱炭素へ舵を切る中、日本の海運も大きな挑戦に乗り出している。
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