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「敵は炭素」、自動車だけにとどまらないトヨタの大進撃 目指すゴールはどこなのか?

2022年01月11日

トヨタの電池戦略

トヨタは長年にわたり、内製で、電池の研究開発と生産を続けてきた。トヨタの電池のパートナーは長らくパナソニックだった。1996年に合弁でプライムアースEVエナジー(PEVE)という車載電池生産会社を設立し、初代「プリウス」でニッケル水素電池を実現。2003年からは、リチウムイオン電池にも取り組んできた。2008年には電池研究部を設立し、全固体電池など、次世代電池の研究も行う。2020年には電池事業を一貫して行う合弁会社「プライム プラネット エナジー&ソリューションズ」を設立した。

電池の長寿命化に向けては、劣化を抑制する負極材の表面処理や制御システムなどを開発する。電池構成材料に内包される水分を電池内部に持ち込まない設計と生産技術開発にも取り組む。2022年までに発売する予定のEV「TOYOTA bZ4X」のリチウムイオン電池で、電池の容量維持率は世界トップ水準の90%を目指している

さらにコスト削減も強化する。開発は、車両・電池一体開発によって台当たりコスト50%以下の実現を目指す。BEVの普及が予想以上に早い場合も現在検討している180GWhを超えて、200GWh以上の電池を準備することを想定。

トヨタはこの26年間、1兆円近い投資をし、累計1,900万台以上の電池を生産してきた。今後は、電池関連の新規投資を9月に発表した1.5兆円から5,000億円積み増し、2030年までに2兆円を費やす

図3:2030年までのトヨタの電池戦略


出所:トヨタ自動車

トヨタの電池戦略で特に注目されているのが、EVなどの航続距離を大幅に伸ばせる自社開発の「全固体電池」の実用化方針だ。「全固体電池」は2020年代前半に投入する計画を掲げる。車両と一体開発できる電池の内製力を強みに、電動化時代の競争力につなげる。

EV化見据え、トヨタグループで資源を確保

車が電動化していくうえで、鍵になる電池とモーターであるが、その2つに必要なのがレアメタル(希少金属)とリチウムだ。トヨタはレアメタルの使用量を削減する技術やコバルト・ニッケルを使わない新電池の材料開発を進めている。調達面では、豊田通商が、2006年から、リチウムなどの調査に着手し、安定的な資源確保を進めている。同社はバッテリーの材料を2030年分まですでに確保しているという。トヨタがグループで商社を抱えている強みは資源の調達面で効いてくる。

リチウムは、需要拡大にともない、南米、北米などでも開発調査が行われているものの、現在、リチウムの生産者は世界にも多くない。日本はリチウム原料の100%を輸入に依存しており、次世代自動車のさらなる普及のためには、新たな供給ソースの開拓が必要不可欠となっている。

一方、EV用の電池材料の争奪戦が激しさを増している。世界的なEVシフトでリチウムやコバルト、ニッケルなどのレアメタルは軒並み価格が高騰。将来的にはさらなる需要の増加と価格高騰が懸念されており、いち早く資源を確保しようと、世界の自動車メーカーが躍起になっている。

EVのコストの4割ほどを占める電池の価格上昇は、自動車会社の収益圧迫の要因となるため、自動車業界がどう対処するかが課題となっている。トヨタが掲げる販売計画を達成させるためには、リチウムやコバルトといった電池の生産に欠かせない原料の確保にさらに力を入れる必要があるだろう。

カギを握るのはエネルギー戦略

エネルギーの面でも、30年以上前から、風力発電や太陽光発電といった再生可能エネルギーの確保に取り組んできた(図4)。

図4:トヨタのエネルギー変革


出所:トヨタ自動車

現在、自社工場敷地への再生可能エネルギー発電設備導入を積極的に進めており、国内では、 直近で田原工場(愛知県田原市)に国内最大級の25.8MWの大型風力発電を導入し、2022年に稼働する予定だ。外部からの権利購入含め、2030年代には再エネ利用100%を目指している。また、欧州全工場で再生可能エネルギー電力導入100%を継続、さらに南米でも全工場で100%を達成した。

また水素活用では他産業とも連携しつつ、製造から貯蔵、工場での水素利用を一貫して推進する。燃焼工程の脱炭素化を可能とする水素バーナーの開発や、工場での再生可能エネルギー由来水素の製造、利用を進める。水素を燃料とする発電機を設置し実証も進め、脱炭素への競争力強化につなげようとしている。

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東條 英里
東條 英里

2021年8月よりEnergyShift編集部にジョイン。趣味はラジオを聴くこと、美食巡り。早起きは得意な方で朝の運動が日課。エネルギー業界について日々勉強中。

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