47都道府県の2020年度予算から読み解く脱炭素動向 中国・四国エリア 野心的な2030年度GHG削減目標を設定 | EnergyShift

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47都道府県の2020年度予算から読み解く再エネ動向 中国・四国エリア 野心的な2030年度GHG削減目標を設定

47都道府県の2020年度予算から読み解く脱炭素動向 中国・四国エリア 野心的な2030年度GHG削減目標を設定

2020年05月29日

地方自治体の再エネ・脱炭素政策を紹介するシリーズ、今回は中国・四国エリア9自治体の独自施策を解説する。
人口減少が進む日本の地方自治体では、各自治体で独自の温室効果ガス(GHG)削減目標を掲げているところが増えてきている。これは、環境対策をアピールすることで、環境意識の高い移住者に安全・安心して定住してもらうためだ。さらに2020年度はFIT制度の抜本見直し年度にあたり、再生可能エネルギーの導入支援にも各県が取り組んでいる。今後は地域マイクログリッドの確立を見据えた、自家消費や電力のレジリエンス強化にも踏み込んでいく。

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鳥取県:2030年度GHG40%削減目指す

脱炭素社会の実現や「持続可能な開発」を目指すSDGsなど、地域における主体的な取り組みが重要となるなか、鳥取県では2020年1月、2050年温室効果ガス(GHG)排出実質ゼロを目指す「カーボンゼロシティ」を表明した。

2050年における持続可能な社会の創造に向け、鳥取県は「令和新時代とっとり環境イニシアティブプラン」を策定し、次の5つの柱からなる具体的な施策を掲げ、動き始めている。

  • 循環型社会の構築
  • 低炭素社会の実現
  • 自然・生物との共生
  • 生活環境の保全
  • 環境活動の協働

GHGゼロ達成に向けた施策が「低炭素社会の実現」であり、以下の取り組みを実施していく。

  • 環境や暮らしと調和し、家庭や地元企業等が主体となった再エネ導入の推進
  • 地域新電力や蓄電システム等を活用した自立分散型の地域エネルギー社会の推進
  • 再エネ由来の水素を地域のエネルギーとして活用する「水素タウン」の推進
  • ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)等、建物のゼロエネルギー化・省エネルギー化の推進
  • EV(電気自動車)・PHV(プラグインハイブリッド自動車)普及やモーダルシフト等によるCO2削減
  • RE100・EV100等、企業の率先的な環境配慮経営の推進

これらの取り組みを通して、まずは2030年度のGHG排出量を2013年度比40%減となる中期目標の達成を目指す。加えて、気候変動による損失の最小化や企業活動の持続性の向上、そして再エネ利活用の拡大や水素モビリティの普及、建築物の高機能化など新たなビジネスを創出することで、産業活性化につなげる狙いだ。
2020年度は約7,760万円の予算を計上し、低炭素社会の実現に取り組んでいく。主要予算の詳細は次の通り。

鳥取県

再エネ100%目標設定セミナー開催等事業
2020年度予算額
193.6万円(2019年度予算額:0円) ①広報・周知
概要
広報リーフレットを作成し、各団体の会合、セミナー等で配布してもらうことで再エネ100%の取組の周知を図る。 ②目標設定セミナー開催
概要
企業が使用電力を再エネ100%に転換する目標を設定し、取り組んでいく手順等を学ぶとともに、「再エネ100宣言 RE Action」への参加を推奨するセミナーを開催する。
再エネ100%目標設定支援事業
2020年度予算額
75万円(2019年度予算額:0円)
概要
環境経営の専門家の面談等によるアドバイスに要する費用(目標設定は自ら実施)を支援する。
補助対象
県内に本店を有する企業
補助件数
5件
補助率
1/2
補助上限
15万円

太陽光発電設備導入支援事業
2020年度予算額
230万円(2019年度予算額:0円)
概要
企業が自家消費のために太陽光発電設備を導入する費用を支援する。
補助対象
県内に本店を有する企業
補助件数
10件
補助限度額
2.3万円/kW、かつ1件当たりの上限額23万円

水素エネルギー実証(教育)拠点整備プロジェクト
2020年度予算額
363万円(2019年度予算額:450万円)
概要
太陽光を活用した水素ステーション、スマートハウス、学習パビリオンを全国で初めて一体的に整備した「鳥取すいそ学びうむ」を管理運営(※)し、水素利活用にかかる普及啓発を図る。 ※運営主体:鳥取県水素エネルギー推進協議会(構成団体:鳥取ガス、積水ハウス、本田技研工業、とっとり市民電力、アクシス、ホンダカーズ鳥取、鳥取環境大学、鳥取市、鳥取県)

鳥取県水素エネルギー推進協議会
2020年度予算額
33.3万円(2019年度予算額:33.3万円)
概要
鳥取ならではの水素を活用したCO2フリーのコミュニティ「鳥取県スマート水素タウン」など、水素利活用にかかる新たな取り組みを進めるため有識者等を交えた意見交換を実施する。

水素ステーション研究会
2020年度予算額
26万円(2019年度予算額:26万円)
概要
県内への水素ステーション整備を目的とした研究会を2017年度に設立。県内エネルギー関係事業者を集め、勉強会を開催する。  

水素・燃料電池セミナー
2020年度予算額
54万円(2019年度予算額:54万円)
概要
県内の人材育成を主目的として、成長市場である水素関連技術や幅広い事業領域での水素利活用に関する講演会を開催する。

鳥取県水素・再エネ推進会議
2020年度予算額
87.4万円(2019年度予算額:87.2万円)
概要
「鳥取県水素エネルギー推進ビジョン」(2016年2月策定)を実現するため、推進方策の検討やビジョン進捗管理、ロードマップの改定などを行うことを目的とした有識者会議を開催する。

鳥取県EV・PHVタウン構想検討会
2020年度予算額
87.1万円(2019年度予算額:19万円)
概要
「第2期鳥取県EV・PHVタウン構想」(数値目標:充電インフラ420基、普及台数3,300台)に基づく実績を総括するとともに、課題を整理し、新たなEV・PHV・FCV普及促進策について協議する。 ※2019年9月時点での実績:充電インフラ262基、普及台数1,229台

EVカーシェアリング事業
2020年度予算額
101.3万円(2019年度予算額:337.2万円)
概要
公用車としての率先利用とEVの体験機会創出のため、民間企業と連携したEVカーシェアリングを実施する。
配備数
EV3台

EV・PHV・FCV導入事業
2020年度予算額
401.4万円(2019年度予算額:890.1万円)
概要
環境性能と災害対応の優れたEV・FCVを公用車として導入し、災害など緊急時には避難所等で電源として活用する。
配備数
EV1台、FCV1台、超小型EV5台(外部給電器1台)

地域エネルギー社会推進事業補助金(体制づくり・啓発支援)
2020年度予算額
90万円(2019年度予算額:80万円)
概要
地域エネルギー事業の「核」となる人材の発掘・育成や協議会等の体制づくり、普及啓発を支援する。
実施主体
地域団体、NPO、企業等
県補助率(上限額)
定額(30万円)

再生可能エネルギー活用事業可能性調査支援補助金
2020年度予算額
1,500万円(2019年度予算額:1,500万円)
概要
再生可能エネルギー(バイオマス、水力、地熱、地中熱)や開発途上の自然エネルギー(波力、潮汐力、温度差エネルギー等)を活用した発電等事業の可能性調査を支援する。
実施主体
中山間地の振興に寄与する再生可能エネルギーを活用した発電等を計画する事業者
補助率(上限額)
1/3(300万円)

再生可能エネルギー発電事業支援補助金
2020年度予算額
2,000万円(2019年度予算額:1,300万円)
概要
発電所整備に伴う系統連系設備の整備に係る費用および借入金の利子相当額等を支援する。
実施主体
発電事業者(県内事業所に従業員が常駐する事業者に限る)
補助率(上限額)
定額※または1/3(1,000万円) ※系統連系用電源線500万円/km

家庭用小規模発電設備等導入支援
2020年度予算額
2,515万円(2019年度予算額:3,680万円)
概要
太陽光発電(10kW未満)、太陽熱利用機器、定置用蓄電池等の小規模設備等の導入を支援する。
実施主体
市町村(間接補助事業者:小規模設備を導入する者)
補助率
市町村補助額の1/2

■ 参照データ

島根県:地域資源の活用で地域振興実現へ

地方都市にとって、人口減少が進む中山間地域や離島と人口が集積する都市部が共存・連携して発展する地域づくりが喫緊の課題である。島根県では、2020年度763億円を投じ、「人口減少に打ち勝つための総合戦略の推進」を取り組む。

人口減少施策の一環として、「地域内経済の好循環の創出」をテーマに再エネの推進に取り組む。今年度は木質バイオマス集荷体制支援事業を廃止し、予算額を約9,500万円に減額したものの、地域資源の活用と地域振興につながる再エネの導入促進を通じて、社会・環境基盤の整備を進める方針だ。再エネ施策の詳細は次の通り。

島根県

島根県再生可能エネルギー利活用総合推進事業
2020年度予算額
9,475.6万円(2019年度予算額:3億3,352.4万円)
概要
「再生可能エネルギー及び省エネルギーの推進に関する基本計画」に沿って、市町村、県民、事業者等と連携し、太陽光や木質バイオマス、小水力などの再生可能エネルギーの導入を推進 ①再生可能エネルギーによる地域活性化支援事業○自治会等が地域活性化を目的として導入する設備導入の経費を助成
助成額
150万円以内(蓄電池設置は10万円を加算) ○発電事業者が雇用創出や地域貢献に併せて取り組む設備導入の経費を助成
助成額
500万円以内 ②住宅や事業所への太陽光発電等の設備導入費を助成した市町村に対して経費を助成○住宅用太陽光
助成額
1万円/kW(上限4万円、蓄電池設置は10万円を加算) ○木質バイオマス熱利用、小水力等
助成率
1/3(上限20万円) ○太陽熱、林地残材の集積装置
助成率
1/2(上限30万円) ③熱利用普及モデル事業
概要
太陽熱や地熱・地中熱、家庭用燃料電池(エネファーム)の普及を図るため、モデル的に設備導入した経費を助成 ○太陽熱、地熱・地中熱
助成率
1/4ほか ○エネファーム
助成額
定額 ④普及啓発
概要
アドバイザー派遣、研修会等の実施 ⑤計画策定・事業化支援 
概要
市町村計画策定費や事業化に向けた可能性調査等の経費を助成
助成率
1/2

■ 参照データ

岡山県:EVシフトで県内企業を底上げ

岡山県もまた産業の振興や人口減少問題などに対応し、持続的な発展に結びつける予算編成を行なっている。2020年度は「おかやま創生総合戦略」の一環として、「EVシフトに対応した産業・地域づくり推進事業」および「省エネ、新エネ等による温室効果ガス削減の推進」に取り組む。

世界的にEVシフトが進むなか、岡山県では2020年度EV普及台数6,000台(2018年度実績5,133台)などを目指す「岡山県におけるEVシフトへの対応方針」に基づき、EVシフトに対応した産業と地域の実現を目指している。今年度の予算額は約1.5億円の予算を計上した。

また、GHG削減目標として2030年度までに2013年度比17.7%削減を掲げており、家庭、企業、市町村、地域それぞれが地域資源を活かした再エネの導入・省エネの推進に取り組む。予算額は約8,500万円。これら事業推進を通じ、地域社会の活性化および気候変動の抑制を実現する方針である。主要予算の詳細は次の通り。

岡山県

EVシフトに対応した産業・地域づくり推進事業
2020年度予算額
1億5,157.1万円(2019年度予算額:1億4,525.6万円)
概要
世界的にEV(電気自動車)シフトが急激に進展する中、「岡山県におけるEVシフトへの対応方針」に基づき、2018年度から概ね5年間を目途に、産学金官の連携による取組を集中的に実施することで、全国に先駆けてEVシフトに対応した産業と地域の実現を目指す。 (1)EVの生産拠点を支えるサプライヤーのEV対応への支援
2020年度予算額
8,982.2万円(2019年度予算額:9,185.5万円) ①次世代自動車サプライヤー応援隊事業
2020年度予算額
1,101.1万円(2019年度予算額:1,423.3万円)
概要
県内サプライヤーのビジネス環境変化への対応を支援する産業支援機関に対して、技術開発や人材育成、販路開拓等の専門家を派遣する費用を補助する。 ②EV関連技術対応促進事業
2020年度予算額
1,681.1万円(2019年度予算額:1,562.2万円)
概要
岡山県自動車関連企業ネットワーク会議と連携して、最新動向等を学ぶセミナーや、関連企業の調査、EV・PHEVの構造研究等を行い、自社技術を生かした新製品の開発意欲を高める。 ③EV関連技術等の研究開発支援
2020年度予算額
6,200万円(2019年度予算額:6,200万円) ○新きらめき岡山創成ファンド支援事業
2020年度予算額
2,200万円(2019年度予算額:2,200万円)
概要
きらめき岡山創生ファンドにEV関連枠を設け、EVシフトでさらに必要とされる軽量化や静音化等に係る研究開発を支援する。 ○次世代産業研究開発プロジェクト創成事業
2020年度予算額
5,561.9万円(2019年度予算額:1,000万円)
概要
モーター、リチウムイオン電池等のEV関連分野などにおいて、県内企業と大学等との共同研究を支援するとともに、県内サプライヤーのAI・IoT化による競争力強化を図る。 ○特別電源所在県科学技術振興事業(EV関連枠)
2020年度予算額
4,000万円(2019年度予算額:4,000万円)
概要
同事業を活用した研究委託事業にEV関連枠を設け、県内大学等へ研究委託し、研究成果の県内サプライヤーへの技術移転を図る。 (2)EVシフトによる成長分野での投資や新規参入等の促進
2020年度予算額
836.1万円(2019年度予算額:841万円)
概要
EV関連部品等への新規参入や、新技術・新製品の販路開拓等を目指す意欲ある中小企業を支援するため、EV関連に特化した展示会への出展を支援する。 (3)EV等を安心して利用できる環境の整備
2020年度予算額
1,865.5万円(2019年度予算額:1,505.5万円) ①充電環境整備事業
概要
EV等を安心して利用できる環境の整備に向けて、急速充電設備および普通充電設備の設置を補助する(公共施設、商業施設、宿泊施設、集合住宅等への設置が対象。集合住宅以外は一般開放を、急速充電設備は24時間利用可能であることを要件とする)。 (4)EV等の普及促進
2020年度予算額
3,473.3万円(2019年度予算額:2,993.6万円) ①業務用車両EV等転換支援事業
2020年度予算額
2,465.2万円(2019年度予算額:2,763万円)
概要
業務用車両としてEV等を導入する法人に対し、車両購入費を補助する。また、当該補助金を活用してEV等を導入する法人に対し、普通充電設備およびV2H充電設備の設置費用を補助する。 ②「EVでGO まずは1週間!!」試乗モニター事業(EV等の魅力発信事業)
2020年度予算額
1,008.1万円(2019年度予算額:230.6万円)
概要
県民が、一定期間EV等に試乗し、優れた運転性能や環境性能、充電や外部給電機能などその特性を実感し、SNS等で発信してもらう試乗モニター事業を実施する。

省エネ、新エネ等による温室効果ガス削減の推進
2020年度予算額
8,533万円(2019年度予算額:7,905万円)
概要
省エネ、新エネ等による温室効果ガス削減の推進を図るため、家庭の省エネ・蓄エネ等の機器・設備導入補助を行う市町村への補助や、専門的スタッフによる事業所の無料省エネ診断等を行うとともに、地域の特性や資源を生かした市町村による新エネ導入の取組への補助等を行う。 (1)住宅用省エネ・蓄エネ等設備導入促進事業<家庭部門対策>
2020年度予算額
6,083万円(2019年度予算額:5,812万円)
概要
家庭における省エネ対策等を促進し家庭部門のCO2削減を図るため、省エネ・蓄エネ等効果の高い機器・設備等を導入する県民への補助を行う市町村を対象に補助を行う。
補助対象者
市町村
補助内容
省エネ効果の高い機器等を導入する県民への補助を行う市町村への補助
補助率
1/3 (2)事業者の省エネ対策促進事業<産業・業務部門対策>
2020年度予算額
900万円(2019年度予算額:548.2万円)
概要
  • 県内事業者が主体的に進める省エネ対策等の取組をサポートするための専門スタッフを引き続き配置することにより相談支援体制を継続するとともに、現地での無料省エネ診断等を行う。
  • 併せて、先駆的な事業者の取組を他へも波及させるため、事業者相互の情報交換の場や、ノウハウ習得などスキルアップの場を提供する。
(3)スマートコミュニティ形成支援事業<地域部門対策>
2020年度予算額
1,500万円(2019年度予算額:1,500万円)
概要
地域の特性や資源を生かした新エネルギーの導入等により、創エネや省エネ、蓄エネを進め、エネルギー利用の効率化やエネルギー自給を目指す市町村を対象に、最大2ヶ年、必要な経費の一部を補助する。
補助対象者
市町村
補助内容
新エネルギーの導入等を行う市町村への補助
補助率
1/2(上限500万円) COOL CHOICE!推進事業<全部門対策>
2020年度予算額
50万円(2019年度予算額:44.8万円)
概要
国民運動「COOL CHOICE」に連動し、県民や事業者などに温暖化防止への意識と実践がさらに拡がるよう、おかやま版の運動として、積極的な情報発信や普及啓発に取り組む。

■ 参照データ

広島県:FIT売電収入を活用した地域還元策

広島県は低炭素社会の構築や循環型社会の実現に向け、2012年度から再エネの普及促進を実施してきた
具体的には県有地等に10MW程度の太陽光発電の導入を目指し、その売電収益を活用した省エネ設備などの導入促進事業に取り組んでいる。地域還元の目標額は20年間で約13億円を想定している。2020年度の詳細予算は次の通り。

広島県

地域還元型再生可能エネルギー導入事業
2020年度予算額
2億5,508.7万円(2019年度予算額:2億4,596.5万円)
概要
  • 再生可能エネルギーの普及拡大と収益の地域還元を図るため、県と中国電力グループが共同して、メガソーラー発電事業に取り組む。
  • 地域還元事業は、再生可能エネルギーの普及に伴い上昇する電気料金(賦課金)の軽減を図るため、賦課金算定の基礎となる電気使用量の削減につながる「省エネの促進策」を柱とする。
地域還元目標額
20年間で約13億円

広島県省エネ設備導入促進補助金
概要
県内の幼稚園もしくは保育所または幼保連携型認定こども園において、省エネ型エアコンと併せて、創エネ・蓄エネ機器(太陽光発電システム・木質バイオマス熱利用設備・エネルギー管理システム・蓄電池)を設置する事業への補助を実施する。
補助対象者
県内の幼稚園もしくは保育所または幼保連携型認定こども園を設置する市町、学校法人、社会福祉法人など
補助率
1/2以内
補助上限額
  • 省エネ型エアコン:500万円
  • 太陽光発電設備:500万円
  • エネルギー管理システム:500万円
  • 蓄電池:600万円

■ 参照データ

山口県:人口減少対応に即した再エネ導入

地方の人口減少に歯止めがかからないなか、山口県では2018年度から2022年度までの5ヶ年計画「やまぐち維新プラン」を策定し、産業維新、大交流維新、生活維新という3つの具体的施策に取り組んでいる。

こうした基本方針のもと、2020年度は「人と自然が共生する環境にやさしい県づくりの推進」の一環として地球温暖化対策の推進、循環型社会づくりの推進などを重点的に取り組む。

地球温暖化対策では、省・創・蓄エネの導入促進とともに、民生・運輸部門のCO2削減などを実現するため、「ぶちエコやまぐち推進事業」を展開する。予算額は約3億1,900万円を計上した。

さらに天候等により発電量が変動する再エネ特有の課題を解決するため、新たに「地域での分散型エネルギーシステム構築検討事業」を組成した。域内の太陽光発電、蓄電池、EVなど「分散型エネルギー」のネットワーク化を図り、IoTによる遠隔・統合制御の仕組みの検討などを通じ、再エネの利活用拡大を目指す。予算額は1,100万円。主要予算の詳細は次の通り。

山口県

地球にやさしい環境づくりプロジェクト
2020年度予算額
2億7,698.8億円(2019年度予算額:0円)
概要
環境保全の基盤づくりを促進するため、太陽光発電などの地球温暖化対策施設等を整備する個人や中小企業者等に対し、金融機関と協調して低利の融資を行う。 住宅用太陽光発電システム等整備資金(個人向け)
対象設備
  • ①住宅用太陽光発電システム
  • ②再生可能エネルギー熱利用設備
  • ③再エネ設備(①または②と同時に2製品以上設置)
融資利率
1.0%
融資限度額
500万円/件
償還期間
10年以内 地球にやさしい環境づくり整備資金(個人向け)
対象設備
次世代自動車、屋上緑化、壁面緑化、駐車場緑化、保水性舗装、高反射塗装、省エネ設備
融資利率
1.5%
融資限度額
500万円/件
償還期間
5年以内 地球温暖化対策施設等整備資金(中小企業向け)
対象設備
省エネ設備、燃料設備の転換、太陽光発電システム、次世代自動車等既存設備対比でCO2排出量が10%以上削減できるもの等
融資利率
1.5%
融資限度額
1億円/件
償還期間
5~10年以内
再エネ地産地消プロジェクト
2020年度予算額
2,880.3万円(2019年度予算額:0円)
概要
県産品として登録された省・創・蓄エネ設備の住宅への導入を支援し、民生家庭部門における地球温暖化対策の推進と県内関連産業の振興を図る。 創エネ設備○太陽熱利用給湯(分離型)
補助単価
1.2万円/㎡(上限4.8万円) ○太陽熱利用給湯(一体型)
補助単価
0.5万円/㎡(上限1.5万円) ○太陽熱利用空調システム
補助単価
0.8千円/㎡(延床面積75㎡以上、上限10万円) ○地中熱利用システム
補助単価
0.8千円/㎡(延床面積75㎡以上、上限10万円) ○ペレットストーブ
補助単価
0.5万円/kW(上限3万円) 省エネ設備○家庭用燃料電池(エネファーム)
補助単価
定額3.8万円 蓄エネ設備○家庭用蓄電池(※太陽光発電と連係するもの)
補助単価
1.25万円/kWh(上限10万円) ○V2H(※太陽光発電と連係するもの)
補助単価
定額5万円

地域での分散型エネルギーシステム構築検討事業
2020年度予算額
1,100万円(2019年度予算額:0円)
概要
再生可能エネルギーの普及促進と地球温暖化対策を推進するため、天候等により発電量が変動しやすい再エネ特有の課題に対し、地域の太陽光発電、蓄電池、電気自動車といった『分散型エネルギー』のネットワーク化を図り、IoTを用いた遠隔・ 統合制御の仕組みを検討し、再エネを有効活用する取組を進める。

■ 参照データ

徳島県:2030年度GHG削減目標を50%に上方修正

徳島県は全国初となる脱炭素条例、「徳島県脱炭素社会の実現に向けた気候変動対策推進条例」を2017年1月に施行するなど、脱炭素社会の実現を牽引してきた自治体のひとつである。
2019年11月には「2050年GHG排出実質ゼロ」を宣言し、2030年度における中間目標を現行の2013年度比40%削減から、50%削減に引き上げている。

実質ゼロ達成に向けて、「環境と経済の好循環」「地域資源の最大限活用」「県民総活躍」の3つを基本方針とする気候変動対策推進計画を策定し、具体策に取り組んでいる。

再エネの普及拡大分野では、地域で賄え、GHGを排出しない自然エネルギーを最大限活用し、エネルギーの安定供給や地球温暖化対策の推進。災害に強い自然エネルギーの特性を活かした自立分散型電源の導入を進め、AIやIoTで電力変動に対応できる柔軟なエネルギーシステムの確立。水素社会の早期実装を目指し、水素エネルギーを活用するインフラ構想「水素グリッド構想」の具体化を図る、といった施策を図っていく。
再エネを最大限活用することで、2030年度には再エネ比率50%の実現を目指すという。

このほか、ZEHやZEBの推進、HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)やスマートメーターを活用したエネルギー消費量の管理・削減などを通じ、ライフ・ビジネススタイルの転換を促す。2020年度の詳細予算は次の通り。

徳島県

自然エネルギー立県とくしま推進資金貸付事業
2020年度予算額
1億円(2019年度予算額:1億円)
概要
事業者における自然エネルギー関連設備をはじめとした創エネ・蓄エネ・省エネ設備の導入を促進するため、金融機関を通じて低利の融資を実施する。

「環境と経済の好循環」による気候変動対策推進事業
2020年度予算額
250万円(2019年度予算額:0円)
概要
「脱炭素社会」の実現に向けた県民・事業者のライフ・ビジネススタイルの転換を促進するため、環境ビジネス創出に向けた産学官金による協議会を設立し、 事業者支援や多様な主体と連携した啓発を行う。

「脱炭素型設備」整備補助金
2020年度予算額
1億2,800万円(2019年度予算額:1億2,800万円)
概要
「脱炭素社会」実現のため、自然エネルギーの導入拡大およびネット・ゼロ・エネルギー・ハウス等の導入に対する支援を実施する。

「地方発!水素社会」普及促進事業
2020年度予算額
1億1,100万円(2019年度予算額:0円)
概要
東京オリ・パラを契機とした水素エネルギー普及拡大をさらに加速させるため、「燃料電池バス」補助制度の創設をはじめ水素モビリティ導入を促進するとともに、「水素ビジネスフォーラム」を開催するなど、地域経済活性化につながる取組みを展開する。 「燃料電池バス」導入支援事業
概要
民間事業者が行う「燃料電池バス」本県導入経費の一部を支援する補助制度を創設 「燃料電池船」導入検討事業
概要
産学官連携「燃料電池船導入検討部会」を設置
「ひょうたん島クルーズ船FC化」や「再エネ水素供給モデル」を検討 「燃料電池自動車」社会実装支援事業
概要
民間事業者を対象とした、燃料電池自動車購入経費の補助制度 「水素ビジネス」普及拡大事業
概要
四国経済産業局と連携した「水素ビジネスフォーラム」の開催

「自立・分散型電源」導入支援事業
2020年度予算額
1,155万円(2019年度予算額:0円)
概要
自然エネルギーを活用した「自立・分散型電源」導入促進のため、事業用発電設備を地域の非常用電源として活用する取組みや公共施設におけるモデル事業の展開、住宅用蓄電池の導入支援などを実施する。 「『地域貢献型』自立・分散型電源」モデル構築事業
概要
県内の事業用自然エネルギー発電設備を災害時の非常用電源として地域で活用するため、モデル事業を創設 「自立・分散型電源」モデル設備整備事業
概要
県有施設に自立・分散型電源のモデル設備を整備し、平時・非常時の電力供給に加え、普及啓発にも活用 自立・分散型電源導入資金貸付事業
概要
住宅用蓄電池の設置に必要な資金に対して低利融資制度を創設 「VPP」調査研究事業
概要
VPP(仮想発電所)の導入可能性を調査・研究

自然エネルギー協働推進事業
2020年度予算額
269.1万円(2019年度予算額:199.5万円)
概要
自然エネルギーを活用した地域の電力レジリエンス強化や地域経済活性化を図るため、産学官金が連携した「徳島県自然エネルギー活用プロジェクトチーム」などによる取組みを推進する。

■ 参照データ

愛媛県:地域特性活かしバイオマス発電の利活用拡大

愛媛県は2020年2月、2030年度までにGHG排出量を2013年度比27%削減、そして2050年度実質ゼロを目指す、「カーボンゼロシティ」を表明した。実質ゼロ達成の指針が「愛媛県地球温暖化対策実行計画」である。

計画では環境保全と経済活動の安定と調和を基本理念とし、次の基本方針の具体化を進めている。

  • 低炭素型ライフスタイルへの転換
  • 低炭素型の“ビジネススタイル”の実現
  • エネルギーの低炭素化の推進
  • 環境負荷の少ない地域づくり
  • 気候変動への適応の推進など

とくにエネルギーの低炭素化の推進では、地域特性を活かしバイオマス発電の利活用拡大や家庭部門でのZEHや燃料電池の普及拡大を通じて、まずは低炭素型社会の構築を目指す方針だ。2020年度の主要予算の詳細は次の通り。

愛媛県

新エネルギー等導入促進事業費
2020年度予算額
4,824万円(2019年度予算額:4,986万円)
概要
市町と連携して家庭用燃料電池やZEH等の導入に対して補助するとともに、新エネルギー等の導入に向けた調査支援や普及啓発等に取り組む。 家庭用燃料電池・蓄電池・ZEHの設置補助
補助対象
市町
対象経費
市町が個人に補助した額
補助率
燃料電池等
県1/2(1台当たり上限10万円)
ZEH
県1/2(1戸当たり上限30万円) 再生可能エネルギー及び水素エネルギー導入可能性調査の支援
事業主体
民間事業者、市町、団体、個人
補助対象
風力発電(20kW未満)、小水力発電(1,000kW以下)、バイオマス発電・熱利用、潮流発電および水素エネルギーの導入に向けた可能性調査
補助率
県1/2(1件当たり上限200万円)

木質バイオマス利用促進事業費
2020年度予算額
2,123万円(2019年度予算額:3,815.9万円)
概要
木質バイオマスの利用促進のため、林地残材等の搬出利用への支援を行うとともに、未利用材の流通システムを構築し、流通コスト等を検証する取組みを推進する。 ①木質バイオマス利用促進事業○木質バイオマス有効活用事業
事業主体
製紙用チップ等の加工・製造者、木質バイオマス供給事業者等
補助対象
製紙用チップ(燃料用を除く)、木質ペレット等として利用する木質バイオマス
補助金額
対象木材1m3当たり500円 ○林地残材資源化促進事業
事業主体
林業事業体等
補助対象
木質バイオマス発電用として利用する不定形な林地残材
補助金額
対象木材1t当たり1,000円を上限 ○木質バイオマス活用革新的取組支援事業
事業主体
林業事業体等
補助額
50万円以内 ②木質バイオマス普及促進事業
概要
木質バイオマス集荷モデル等の情報収集、普及啓発を実施

■ 参照データ

高知県、香川県:FIT制度の見直し見据えた再エネ施策に移行

高知県は、FIT制度の抜本的見直し議論を受け、将来的に確立が予想される「地域マイクログリッド」を見据え、自家消費、災害時のレジリエンス強化といった視点から、再エネの導入促進を実施する方針である。

2020年度は、系統接続問題等への対応、エネルギーの地産地消による地域メリットの創出などを実現するため、「再生可能エネルギー利活用事業費補助金」に3,350万円の予算を計上している。
また地域マイクログリッドの構築に向け、地産地消の促進に寄与する自治体新電力の立ち上げを検討する市町村への事業化支援なども行う。

香川県は「自然とともに生きる香川づくり」という政策テーマのもと、住宅用太陽光発電導入促進事業に1億3,000万円の予算を計上した。住宅用太陽光発電および蓄電池の助成のほか、一般家庭において自家消費で発生する環境価値のクレジット化、活用などを支援する。
高知県および香川県の主要予算は次の通り。

高知県

再生可能エネルギー利活用事業費補助金
2020年度予算額
3,350万円(2019年度予算額:2,000万円)
概要
本県の自然条件等の地域資源を生かした再生可能エネルギーの利活用を促進し、産業振興と地域の活性化を図るとともに、地球温暖化対策に寄与するため、市町村、一部事務組合、広域連合または複数の市町村が組織する協議会に対し、補助金を交付する。 再生可能エネルギー事業化促進事業
概要
地域または市町村等が主体となって実施する再生可能エネルギーの調査等を支援
補助率
1/2 再生可能エネルギー利活用促進普及事業
概要
再生可能エネルギーの利活用を促進するための人材づくりや組織づくりなどに対する支援
補助率
定額50万円以内

再生可能エネルギー地産地消事業化検討支援事業
2020年度予算額
89.6万円(2019年度予算額:87.9万円)
概要
再生可能エネルギーの地産地消等に取り組む市町村への支援

福祉避難所等太陽光発電設備導入支援事業費補助金
2020年度予算額
2,000万円(2019年度予算額:3,000万円)
概要
大規模災害時に重要な役割を担う施設における非常用電源としても活用できる自家消費型の太陽光発電設備等の導入に対して支援

木質ペレット等の安定供給・木質バイオマスエネルギーの導入促進
2020年度予算額
1,998万円(2019年度予算額:1,540.6万円) 木質資源利用促進事業費補助金
概要
  • 熱利用向け木質燃料の安定供給のための助成事業の実施
  • 木質バイオマス燃料の流通や価格などの動向の把握
  • 幅広い分野での木質バイオマスボイラーの導入の拡大
  • 木質バイオマスボイラー施設整備への支援

■ 参照データ

香川県

スマートエネルギー普及促進事業
2020年度予算額
1,000万円(2019年度予算額:2,000万円)
概要
エネルギー関連産業の育成や企業の競争力強化を図るため、県内中小企業等が新エネルギー設備等を導入する費用を補助する。
補助対象
EMS(エネルギー管理システム)、蓄電設備、新エネルギー設備等の導入経費
補助率
1/2以内(上限500万円、下限100万円)(県内に本社を置く企業が開発、生産した設備導入は2/3以内)

住宅用太陽光発電導入促進事業
2020年度予算額
1億3,000万円(2019年度予算額:1億3,608.1万円)
概要
日照時間が長いという本県の特性を踏まえた家庭での地球温暖化対策として、住宅用太陽光発電設備の設置に対して補助するとともに、電力の有効活用や災害時の停電対策の観点から家庭用蓄電池の設置に対して補助する。 ①住宅用太陽光発電設備の設置補助
補助単価
1kW当たり1.3万円(上限額5万円) ②家庭用蓄電池の設置補助
補助率
1/10(上限額10万円)
補助対象
住宅用太陽光発電設備と併設する蓄電池の設備費(既設の住宅用太陽光発電設備への附設する場合も対象) ③太陽光発電から得られた電力の自家消費によるCO2排出削減量(環境価値)をJ-クレジット制度によりクレジット化して活用

■ 参照データ

中国・四国エリアのまとめ

人口減少が進む中国・四国エリアでは、域内経済の活性化とともに災害に強く、安心して暮らせる社会基盤の整備を通じて、定住人口の増加を目指している。そのため鳥取県、徳島県、愛媛県のように、国が定めた2030年度中間目標を上回る、GHG削減目標を掲げている。
次回は47都道府県最後となる九州・沖縄エリアの独自施策を解説する。

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(Text:藤村朋弘)
藤村朋弘
藤村朋弘

2009年より太陽光発電の取材活動に携わり、 その後、日本の電力システム改革や再生可能エネルギー全般まで、取材活動をひろげている。

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