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続・なぜ、JEPXは高騰したのか、「わかったこと」と「わからないこと」 後編

続・なぜ、JEPXは高騰したのか、「わかったこと」と「わからないこと」 後編

2021/03/13

2020年12月末から2021年1月にかけてのJEPX(日本卸電力取引所)の価格高騰の検証続編。LNGの燃料供出はなぜ12月26日に大幅に制約されたのか。最新データから、日本再生可能エネルギー総合研究所の北村和也氏が分析する。

前編はこちら
前回の記事「なぜ、JEPXは高騰したのか」はこちら→
2021年冬の電力ひっ迫関連の記事はこちら→

燃料制約とグロス・ビディングの停止

資源エネルギー庁は、配布資料で「売り入札の減少の要因」として以下の3つを挙げている。

① 燃料制約によるLNGの停止・出力低下の影響
② 旧一般電気事業者(旧一電)の需要の増加
③ 一部の旧一電のグロス・ビディングによる売買入札の取りやめ

燃料制約とは、燃料の天然ガスが足りなくなってきたので、LNG火力の運転を停止したり出力を下げたりするというものである。実際に底をついたのではない。12月26日には停止・出力低下が一気におよそ200から250万kWh増えている。

③ のグロス・ビディングとは、圧倒的な8割以上の発電と顧客の需要を抱える旧一電が、内部で使用する電力をいったん市場に供出した後、もう一度市場から買い戻す仕組みである。旧一電それぞれが取り組みを進め、全体の30%程度まで増えているとみられている。2016年起きた東京電力の市場操作など、きっかけや経緯はあるが、「市場の流動性向上」、「価格変動の抑制」、「透明性の向上」を期待して導入された、ということになっている。

ところが12月26日に、旧一電のうち一部がグロス・ビディングを停止した。2月25日に公開された資料によると、停止したのは、関西電力、中国電力、北陸電力の3つである。取り組みは自主的なもので、停止は違法ではない。「自社内での需要が増え、買い戻せないと困るので停止した」とヒアリングに答えている

グロス・ビディング分は原則として、市場への供出と買い戻しが一致するので、エネ庁は「約定価格への影響は極めて限定的」としている。しかし、停止は26日を含む12月の中下旬に3回あり、いずれの場合でも買い入札の量は停止分ほど下がらず、その結果、スポットの価格は上昇した

市場安定のためのグロス・ビディングの停止が今回、価格高騰の最中で行われたことを考えると、今後のルール化などは必須であると考える。

12月26日に集中した「オペレーション」

① の燃料制約に戻る。なぜ、この日に大幅な燃料制約が行われたのであろうか。

図:需要実績 全国計(2020年12月1日〜2021年1月21日)

需要実績 全国計(2020年12月1日〜2021年1月21日)
出典:スポット市場価格の動向等について 1月19日、第29回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会 配布資料に一部筆者が加筆

図のグラフは、2019年(青線)と2020年(オレンジ線)の年末から年始の全国の需要実績である。エネ庁はこれを、「今年が寒くて需要が増えたこと」を示すために取り上げているが、筆者が指摘したいポイントはそこにはない。

2020年の12月26日に実際に大きく需要が減っていることが重要である(赤丸枠:筆者)。2019年は、27日あたりからやはり同じ深さのU字ができている。需要の落ち込みはともに200万kWhから300万kWhとなっている。これは、年末年始で会社などが一斉に休みに入ることで生まれる現象で、カレンダーの関係で2020年年末は土曜日だった26日に起きている。

この26日に大幅な燃料制約を行った理由は、このように年末は例年大きく需要が減るためと想像されるが、2020年については、もともと予定されていた可能性もある。

また、② の「旧一電の需要の増加」は、26日以降に買いの減り方が少ない理由の一つであろう。エネ庁の資料でも、「12月29日から1月21日までの間は、買い約定量が売り入札量を上回り、買越し」となっている。スパイラル的な値段の上昇は、決して新電力の買いだけではなく、旧一電の買い行動も一役買っていたことになる。

① 燃料制約と③ グロス・ビディングの停止は、基本的に人間がアクションを起こす「オペレーション」である。燃料制約とグロス・ビディング停止が同じ日に重なったこと、また、需要が例年通り大きく減ったのに、② 旧一電の増加が起きていることなど、26日に起きたことは、偶然だけの重なりとは考えにくい

例えば、燃料制約の量が過大でなかったなど、一種の「読み違い」や「計画策定のミス」などが起きていないか、今後さらに調査が必要だと考える。

例年通り需要が実際に大きく減った年末年始に、なぜ買いが高い水準であり続けたかは、旧一電や小売電気事業者などの枠を超えて、究明が必要である。

市場改革への道のり

2021年2月17日25日とエネ庁関連の委員会が開かれ、セーフティネットとしての、サーキットブレーカーなど市場システムの今後のあり方などの議論が行われている。

その中で、エネ庁としては「スポット市場自体への上限価格の導入については慎重な検討が必要」と示し、上限価格導入に後向きの姿勢を示している。

取引停止についても、「本来は、需給ひっ迫時には、市場価格がその時点の電気の価値を反映し、追加的な電源やDR等が市場を通じて拠出されるメカニズムが働くことが望ましい」と原則論に終始している。今回、市場価格が電気の価値を反映していなかったことは自明である。

インバランスの収支については、「何ら事前の策を講じなかった事業者だけに着目して、市場参加者に対し、市場取引の結果を遡及的に見直すような措置を講ずることは慎重であるべき」と、新電力に対するインバランスに関する支援策を切って捨てている。

すでに今回起きたことを「異常な事態」から切り離すような姿勢が垣間見え、また、SNSで見られる実態を無視した無責任な議論を後追いする単純な善玉悪玉論に近い論理展開となっている。送配電事業者に発生した余剰利益の賦課金への返還を『遡及』して行うこととも一部矛盾している。

今回の事象は、異常かつ想定外のことが、現在の市場システムの中で実際に起きたのである。その事実は、揺るがせない重みを持つ。

前回も取り上げたが、2月5日に開かれた「電力・ガス取引監視等委員会 第55回制度設計専門会合」の最後に、会合の座長である稲垣 隆一氏の言葉でこの2回のコラムを締めくくりたい。

我々が市場として想定した、あるいは合意した範囲は何だったのか、から出発して、それを取り巻く周辺のことを含めて広く議論をしていかなければならないとみなさんから指摘を受けた」、「それを行うに当たっては、一体何が起こったかということを信頼にたる証拠をもとにしっかり分析していくということ」が必要である。

まさに、『奇貨とすべき』である。

 

続・なぜ、JEPXは高騰したのか、「わかったこと」と「わからないこと」 前編 目次
- 原因の究明はこれから
- 経産省でさえ『原因』についての結論が出せないでいる
- 2020年12月26日土曜日に起きたこと
- 電気を買えなかった小売電気事業者はどうしたのだろう?

前回の記事「なぜ、JEPXは高騰したのか」はこちら→
2021年冬の電力ひっ迫関連の記事はこちら→

北村和也
北村和也

日本再生可能エネルギー総合研究所 代表、株式会社日本再生エネリンク 代表取締役。 1979年、民間放送テレビキー局勤務。ニュース、報道でエネルギー、環境関連番組など多数制作。番組「環境パノラマ図鑑」で科学技術映像祭科学技術長官賞など受賞。1999年にドイツへ留学。環境工学を学ぶ。2001年建設会社入社。環境・再生可能エネルギー事業、海外事業、PFI事業などを行う。2009年、 再生エネ技術保有ベンチャー会社にて木質バイオマスエネルギー事業に携わる。 2011年より日本再生可能エネルギー総合研究所代表。2013年より株式会社日本再生エネリンク代表取締役。2019年4月より地域活性エネルギーリンク協議会、代表理事。 現在の主な活動は、再生エネの普及のための情報の収集と発信(特にドイツを中心とした欧州情報)。再生エネ、地域の活性化の講演、執筆、エネルギー関係のテレビ番組の構成、制作。再生エネ関係の民間企業へのコンサルティング、自治体のアドバイザー。地域エネルギー会社(地域新電力、自治体新電力含む)の立ち上げ、事業支援。

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