電気料金の値上げが止まらない。大手電力会社10社の2022年4月の電気料金は、2016年の電力自由化以降もっとも高い水準となる。ウクライナへ侵攻したロシアへの経済制裁が、火力発電の燃料であるLNG(液化天然ガス)や原油などのエネルギー価格の大幅な上昇を引き起こしており、日本の電気料金は今後も高止まりする見通しだ。エネルギー価格の高騰、それに伴う原材料や電気代の値上げが、日本企業の収益を悪化させると危機感が広がっている。
2022年4月の電気料金は、大手電力会社10社のうち7社で値上がりする。もっとも値上げ幅が大きいのは中部電力だ。標準的な家庭の1ヶ月あたりの料金は3月と比べて127円増の8,076円になる。次いで東京電力が115円高い8,359円に、東北電力は98円増の8,431円となり、過去最高値を更新した。
2022年4月の電気料金
中部電力 | 127円上昇 | 8,076円 |
東京電力 | 115円上昇 | 8,359円 |
東北電力 | 98円上昇 | 8,431円 |
沖縄電力 | 65円上昇 | 8,823円 |
九州電力 | 57円上昇 | 7,161円 |
北海道電力 | 56円上昇 | 8,322円 |
四国電力 | 52円上昇 | 7,891円 |
中国電力 | ±0 | 8,005円 |
関西電力 | ±0 | 7,473円 |
北陸電力 | ±0 | 7,187円 |
電気料金は、燃料輸入価格を自動的に反映させる「燃料費調整制度」を踏まえて決められている。4月の電気料金は、2021年11月~2022年1月に輸入した燃料価格から算出するが、急激な値上げによる消費者負担を緩和しようと、規制料金と呼ばれる一部料金では燃料価格の上昇分を転嫁できる上限が設定されている。その上限額は電力会社があらかじめ設定した基準価格の1.5倍までであり、その上限価格を2022年3月までに北陸電力と関西電力、中国電力の3社が、4月からは四国電力と沖縄電力の2社が超えてしまった。
上限価格を超えると、その超過分は電力会社が自己負担しなければならず、5社は経済産業省に値上げ申請をしない限り、燃料費が上がっても電気料金を値上げできない。
ロシアによるウクライナ侵攻への経済制裁として、欧米がロシア産原油の輸入禁止の本格的な実施検討に入ったことで、世界的な供給不足に陥るとの懸念から、原油価格の高騰が止まらない。3月上旬時点で、国際的な指標であるロンドン市場の北海ブレンド原油先物価格が一時139ドル台まで急伸した。2008年7月の史上最高値である147.5ドルまであとわずかだ。
特に原油価格の高騰は原材料や物流コスト、そして電気料金など、企業活動や国民生活に大きな影響を及ぼす。原油価格をベースに決まるLNGの長期契約についても値上がりが避けられず、電気料金は今後も高止まりが続く見通しだ。
帝国データバンクが2月28日に発表した「ウクライナ情勢による企業活動への影響アンケート」によると、1,437社のうち6割超が企業活動にマイナス影響があると回答。とりわけ原油・天然ガスなどエネルギー価格の高騰、それに伴う物流コストの増大などによる原材料価格や、電気代などの高騰による影響を危惧する声が突出して多く、企業収益を低下させるとの危機感が強い。
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