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2022年4月の電気料金、最高値を更新 日本の電気代にもウクライナ危機の影響

2022年03月18日

ウクライナ危機で揺れる原子力政策

日本への原油、LNGの安定供給に懸念が浮上する中、エネルギーの安全保障の観点から原子力発電の利用を求める声も高まりつつある。

2月24日、およそ10ヶ月ぶりに開催された経済産業省の審議会、原子力小委員会(第24回)ではエネルギー自給率の向上において、原子力発電が欠かせないとの意見が相次いだ。

そのひとりである遠藤典子 慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート特任教授は「ウクライナ情勢におけるロシアと欧州の緊張関係を見ても、エネルギー自給率の低い国が置かれる立場は非常に厳しい。フランスのマクロン大統領が2050年までに原子力発電所を14基新設すると、原子力ルネサンスを宣言したが、日照時間や風況に左右される再生可能エネルギーのみで自給率を担保することの難しさをEUも改めて認識したうえでのプロセスではないか」と述べた。

そのうえで、「日本もウクライナ問題だけでなく、米中対立を背景にした台湾問題など、多大なる影響を受ける状況下にある。日本のとりうる自給率の向上については、原子力が欠かせないということは当然の結論ではないか。世界的なカーボンニュートラルの流れの中で、化石燃料の供給不足、高騰がインフレ要因になっている。自給率が低い国だからこそ経済的な悪影響を受けてしまう。だが、日本は原子力政策をどうするのか。再稼働もままならないだけでなく、エネルギー基本計画にリプレイスさえ書けないこの状況は、思考停止状態に陥っている」と指摘した。

一方、3月7日に開催された経産省の審議会(ガス事業制度検討ワーキンググループ)において、橘川武郎 国際大学副学長は、「原子力発電所が軍事標的になるという、新たな原発の脅威が浮上した」と指摘した。日本においても、さらなる安全確保に向けた取り組みを迫られるだろう。

簡単にはいかない、日本の脱ロシア

3月7日の参議院予算委員会で、萩生田光一経産大臣はロシアへの経済制裁強化に伴うLNGの影響について、現時点では安定供給に影響が出ることは想定されないと述べた。その一方で、「ロシアの金融機関がSWIFT(国際決済ネットワーク)から排除されたことなどにより、間接的にエネルギー関連プロジェクトの操業に影響が出る可能性があり、しっかり注視する」と語った。

また「LNGは電力・ガス会社において2〜3週間程度の在庫を有しているほか、あらゆる可能性を視野に入れつつ、スポットマーケットからの代替調達や事業者間融通など、安定供給確保に全力を尽くす」とも述べた。

ロシアにおける日本企業の参画プロジェクトには、サハリン1(原油)・2(原油・LNG)、ヤマルLNG、北極LNG2、INK-Zapad(原油)がある。サハリン1では米エクソンモービルが、サハリン2は英シェルが撤退を表明した。

日本政府はどう対応するのか、という日本維新の会の片山大介委員からの質問に対し、萩生田大臣は、「サハリン1は、世界の原油の需給構造が不安定化する中、原油輸入の約9割を中東に依存するわが国にとって重要な施設だ。サハリン2についてもわが国の需要量の約9%に相当するLNGを供給しており、エネルギー安定供給上、重要なプロジェクトだ。わが国は国際的な制裁強化の中、エネルギーの安定供給と安全保障を最大限守るべく、国益のひとつとしてG7をはじめとした国際社会と連携しながら、適切に対応していく」と述べた。

片山委員はさらに「各国の制裁はフェーズが上がってきている。アメリカは同盟国とも連携し、追加制裁としてロシア産原油の輸入制限を検討している」と述べ、「そもそも信頼を失くしたロシアに投資すべきなのか」と質した。

萩生田大臣は、「アメリカやイギリスは産油国であり、ロシアから出てくる石油やLNGが特段必要ではない。われわれも勇ましく各国と足並みを揃えて撤退することは簡単なことだ。しかし、資源のないわが国にとっては国民生活や経済を守っていかなければならない」と述べたうえで、「日本が抜けた後、第三国が権益をとってしまったら、少しも制裁にならない」と指摘した。

エネルギー・資源価格の高騰は企業活動、国民生活に直結する。ドイツはロシア産ガスの依存度を引き下げるため、エネルギー政策を転換する方針を示す。石炭火力や原発の運用を延長させる可能性が浮上している。

日本においても、ウクライナ危機を受け、電気料金などの高止まりが避けられそうにない。再エネ導入などによる自給率の向上とともに、資源調達先の多様化など、エネルギーの安定供給に向けた対応は待ったなしの状態だ。

 

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藤村朋弘
藤村朋弘

2009年より太陽光発電の取材活動に携わり、 その後、日本の電力システム改革や再生可能エネルギー全般まで、取材活動をひろげている。

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