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危うい太陽光発電の主力化 止まらぬ資材高騰に加え、市場ではある異変が

危うい太陽光発電の主力化 止まらぬ資材高騰に加え、市場ではある異変が

2021年11月16日

日本の太陽光発電の主力化に危うさが漂っている。政府は2030年度のCO246%削減の達成に向け、太陽光発電を1億kW超まで倍増させる計画だが、事業用太陽光のFIT(固定価格買い取り制度)認定量の減少に歯止めがきかない。2020年度は90万kWまで低下し、この状況が続けば、早晩、年間導入量が100万kWを切るという。太陽光パネルなど資材高騰も重なり、事業者団体は「日本の太陽光発電産業は危機的状況だ」と訴える。しかも、市場ではある異変が起きつつあり、導入環境が一変する可能性すらある。

日本の太陽光発電産業は危機的状況

10kW以上の事業用太陽光は2012年にスタートしたFIT制度を追い風に、2014〜2015年度において2年連続で800万kWを超える導入量を記録した。2016年度から2020年度にかけても年間500万kWの導入が続き、累計導入量は6,200万kW(2021年3月時点)を超えた。一見、順風満帆のようにみえるが、FIT価格の下落スピードに発電事業者がついていけず、FIT認定量は2015年度以降減少がとまらない。2020年度はとうとう100万kWを下回り、早晩、年間導入量は100万kWを切る見込みだ。

政府は、太陽光発電の年間導入量を600万kWまで回復させて、2030年度に1億kW超まで倍増させる目標を掲げている。実現に向けて、経産省は政策強化を図り、量を拡大することでコストを低減させ、コスト低減よって国民負担で成り立つFIT制度から自立化させる、という青写真を描く。

10月29日に開催された調達価格等算定委員会において、太陽光発電の事業者団体である太陽光発電協会(JPEA)は、窮状を明かした。「現行トレンドが続けば、導入量は近い将来、年間100万kWを下回る。産業としての成長が見込めず、事業者の撤退が進めば、自立化に向けたコスト低減も困難になる。日本の太陽光発電産業は危機的な状況であり、なんとかこの状況を打開して、FITから自立して成長することを目指さなくてはいけない」。

続けて、「事業者による持続的なコスト低減を進めるうえでも、2030年までにFITからの自立を実現するためにも、2025年まではFIT価格などの維持をお願いしたい」と訴えた。

市場環境は厳しさを増している。足もとでは太陽光パネルなどの資材高騰と供給制約も重なる。「一過性であり構造的ではないことを願いながら、事業者が身を削って対応している」(JPEA)状況だという。

資材高騰の最大の要因は中国にある。

電力危機が深刻化する中国では、2021年9月以降、電力の供給制限や工場の操業停止要請が加速。週1日あるいは2日の操業を強いられる工場も出現し、太陽光パネルの原料であるポリシリコンも例外ではなかった。操業停止が全国に波及した結果、ポリシリコンの価格は300%以上も急騰したと報道されており、さらに、銀、銅、アルミニウム、ガラス、鉄などあらゆる素材が高騰している。

日本の太陽光パネルは、6割近くのシェアを中国製品が占めており、資材高騰と供給制約の影響は大きい。しかも市場ではある異変も起きつつある。それが火災保険の保険料の値上がりだ。

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EnergyShift編集部
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