新型コロナウイルスの気候変動へのインパクトと再エネの未来 (前編) | EnergyShift

脱炭素を面白く

EnergyShift(エナジーシフト)
EnergyShift(エナジーシフト)

新型コロナウイルスの気候変動へのインパクトと再エネの未来 (前編)

新型コロナウイルスの気候変動へのインパクトと再エネの未来 (前編)

2020年06月12日

再エネビジネスは世界的に拡大しているだけではなく、新しい技術やそれを活用した新しいビジネスも登場し、進化を続けている。その姿を、リフューチャーズ株式会社代表取締役の西和田浩平氏がレポートする。今回と次回は、新型コロナウイルスの感染拡大によるロックダウンで変化するエネルギー需要について解説する。エネルギー種別でコロナの影響は一様ではなく、日本をはじめ国ごとに違いが出ているという。

新型コロナウイルスにより脱炭素が加速。過去最大のCO2排出量が減少

世界に拡大した新型コロナウイルスの感染により、CO2排出量とエネルギーに大きな影響がでています。

国際エネルギー機関(IEA)によると、世界全体で2020年は前年対比で6%の需要減少、欧州やインドなどロックダウンを実施した国では25%前後の需要減少が見込まれる中、世界の2020年の年間CO2排出量は前年の33.2Gt(ギガトン)から8%/2.6Gt減少の30.6Gtと見込まれています。

これは、CO2排出量の減少量として、第二次世界大戦などの時期と比較しても過去最大の減少幅となり、リーマンショック時の約6倍となります。

出典:2020年4月、International Energy Agency、「Global Energy Review 2020」

また、1日当たりの世界のCO2排出量は最大で17%減少しています。大きな要因は「移動の減少」です。削減量ベースでは陸上および船舶の運輸セクターからのCO2排出量の削減が最も大きく、割合ベースでは航空セクターからのCO2排出量の削減が大きな要因となっています。

出典:Le Quéré, C, et al. Temporary reduction in daily global CO2 emissions during the COVID-19 forced confinement. Nature Climate Change. 2020年5月

結果的に、新型コロナウイルスにより一時的にCO2削減量は増加して、気候変動問題に対してはよい影響を与えたことになりますが、今後は、電力需要が正常時に戻った時にどのようにCO2排出量を抑制させながら経済全体をリカバリーしていくかが重要となります。

再エネが最も新型コロナウイルスの影響を受けにくい電源

IEAによると、新型コロナウイルスの感染拡大影響により、2020年の世界の電力需要は2019年対比で6%の減少となりました。主に火力発電がコロナの需要減少の影響を受け、石油は9%減少、石炭は8%減少、ガス火力発電は5%減少する見込みとなります。

一方、感染拡大の状況下でも唯一再生可能エネルギーだけが1%増加する見込みとなります。

出典:2020年4月、International Energy Agency、「Global Energy Review 2020」

再エネ増加の理由は、

  • 多くの国の経済活動の停滞により火力などの化石燃料や電気の国際間・地域間の融通と供給に支障がでている中で再エネは地産地消など地域内で継続供給できていること
  • 世界の主要国では経済合理性の観点から、発電にかかる限界費用(発電量1kWh増やした時に費用がいくら増えるか)が低い再エネを最優先に供給する“メリットオーダー”を採用していること

となります。

火力は燃料費が高く、原子力は運転制御や核燃料の消費・処分のコストを加えると限界費用が高い一方で、再エネは燃料を必要としないため限界コストはゼロに近く、さらに最小限の人員でオペレーションも可能となります。

つまり、再エネは世界で最も新型コロナウイルスの影響を受けにくい、レジリエントが高い電源であることがデータで証明されたこととなり、改めて注目が高まっています。

新型コロナウイルスによる日本の電力需要への影響は少ないが、優先給電ルールに課題

2020年4月の日本全体の電力需要は、前年同月の672億kWhと比較して、648億kWhと3.6%減少しました。主に大都市を抱える中部電力エリアで6%減少、関西電力エリアで5%減少、東京電力エリアで4%減少との結果が出ています。

出典:災禍のたびに高まる自然エネルギーの必要性 自然エネルギー財団 2020年5月

日本の自粛要請により影響を受けた飲食店などを中心に電力需要は減少している一方で、家庭の電力需要は増加しており、ロックダウン期間の欧州・インドなどの25%前後の減少と比較すると、日本の電力需要への影響は、現時点では極めて少ないといえるでしょう。

日本の需要減少に伴う発電量の出力抑制に関して、日本では前述の海外のメリットオーダー制度を採用していません。現行の制度ですと、技術的な出力抑制の難易度の観点から、①火力(石油、ガス、石炭)→②他エリアへの送電→③バイオマス→④太陽光・風力→⑤最後に原子力・水力・地熱、の順番で出力抑制する優先給電ルールとなります。

出典:九州エリアの再生可能エネルギーの出力制御に向けた対応について 経済産業省 資源エネルギー庁 2018年10月

つまり、他国と異なり今の日本の法制度だと、九州などの一部の地域では、将来の廃炉や使用済み燃料など処理の見通しがたっていない原子力の再稼働による優先給電により、太陽光が出力抑制されてムダに捨てられており、経済合理性が成り立たっていない状況です。これは、経済合理性、且つ無駄のない効率的な再エネ運用の観点から、日本の法制度を見直すべき点だと思います。

(後編に続く)

西和田浩平
西和田浩平

リフューチャーズ株式会社 代表取締役CEO。慶應義塾大学、三井物産株式会社、ブラジル分散型電源企業Ecogen Brasilなどで日本・中南米・欧州の再生可能エネルギーの新規事業投資・開発・M&Aなどの業務を経験し、再エネ × テクノロジーのベンチャー企業の「リフューチャーズ株式会社」を創業。 「再エネ100%、故郷を選んで地産地消へ!」のブロックチェーン活用のP2Pクリーン電力小売サービス 「EARTH ENERGY/アースエナジー」をESG・SDGs・環境重視の法人やご家庭向けに提供中。 EARTH ENERGY HP:https://earthene.com 企業 HP:https://re-futures.com/ 法人・ご家庭のお客さまや業務提携などのお問い合わせ先:info@re-futures.com

気候変動の最新記事