JAXAベンチャーで、データサイエンスを提供するDATAFLUCTは、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)の衛星データを活用し、大気中のCO2の濃度と経済活動を可視化する環境モニタリングサービス『DATAFLUCT co2-monitoring.』(データフラクト シーオーツーモニタリング)』を、2021年1月29日から提供開始した。衛星データを活用する本サービスの提供により、地球温暖化の主要因であるCO2の削減を推進し、地球環境の保全に対する貢献を目指すとしている。登録不要、無料。
JAXAベンチャーとは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の知的財産・業務での知見を利用して事業を行う、JAXA職員が出資・設立したベンチャー企業。
DATAFLUCT co2-monitoring. サービスページ:http://co2.datafluct.com/
CO2やメタンに代表される温室効果ガスは、大気中の濃度の増加により地球の温暖化を促進し、気候変動に影響を与えると考えられている。1997年には「京都議定書」が採択、2015年には「国連気候変動枠組条約締約国会議」(COP21)がパリで開催され、“世界の平均気温上昇を1.5℃に収める努力をすること”や、“できるかぎり早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトさせ、排出量と吸収量のバランスをとること”を目標に掲げた「パリ協定」が合意に達し、翌年に発効されるなど、温暖化対策は世界全体で取り組むべき喫緊の課題となっている。今回の『DATAFLUCT co2-monitoring.』サービスの開発は、衛星データを活用し、より効果的に温暖化対策について理解を深めるためのものだ。
このサービスで、大気中のCO2のデータと、国の経済規模を示すGDPや人口、土地の被覆度といったデータを掛け合わせて、時系列分析が可能になる。これにより、エリアごとのCO2濃度と経済成長の関係性の示唆を得ることができるようになり、現在の温暖化状況のより深い理解を基にした、未来へ向けての正しい打ち手の検討につなげられる。今後は、地球環境に関するデータの種類を増やし、CO2の排出要因と吸収要因をより詳細に把握できる機能を搭載していく予定。
CO2の排出要因と吸収要因の可視化を実現する『DATAFLUCT co2-monitoring.』が、カーボンリサイクルを地域全体でマネジメントするための指針となりうると考えているという。たとえば工場を新規建設する際の候補地選定にCO2吸収量の多さを検討軸として加えたり、エリアを緑化することでCO2吸収量の増加を狙ったりすることができる。このように事業者や地方自治体が、より効果的な温暖化対策に取り組むための参考情報として活用できるサービスを目指す。
主な機能1.衛星データと地上のデータを掛け合わせて表示
衛星が観測したCO2濃度と、CO2排出要因・吸収要因と関連があると考えられる指標(〔排出要因〕GDP、人口 〔吸収要因〕土地被覆(草地・樹木))を掛け合わせた結果を確認できる。また、メッシュのマスをクリックすると、範囲内でのCO2濃度と指標の時系列推移を確認できる。
2019年の月平均のCO2濃度を表示。
メッシュをクリックすると、CO2と人口の時系列推移を表示。
主な機能2.簡単に時系列で比較できる
2010年から2019年までのデータを1年単位で表示でき、画面上を左右に分割して異なるデータを表示できるため、容易に比較できる(データは随時更新)。
2010年(左)と2018年(右)のCO2と人口を表示。2010年の方が青く、CO2排出量が少ない。
主な機能3.世界中、だれでも無料で利用可能なオープンサービス
『DATAFLUCT co2-monitoring.』のWebサイトにアクセスするだけで、登録などの必要なしに無料で利用可能。スマートフォンやタブレットからもOK。※比較機能は、一部タブレットとスマートフォンからは利用できない。
エリアのメッシュをさらに細かく分割し、より狭い範囲のデータを表示できるようにするほか、企業活動によって発生するCO2排出量や風向、降水量や気温などの気象関連データといったさまざまなデータを実装する予定。データの拡充により分析能力を向上させ、環境経営の実践に則った意思決定に役立つインサイトの発見を可能とし、さまざまなケースで利用できるよう機能拡張に取り組むとしている。
また同社では、『DATAFLUCT co2-monitoring.』のコンセプトに共感し、実証実験のパートナーとなる事業者や地方自治体を募集している。興味のある方は、info@datafluct.comまでお問い合わせを。
実装データ:
CO2濃度(250kmメッシュ)、都道府県別GDP、都道府県別人口、土地被覆(草地・樹木・都市・水・氷・砂漠)
想定インサイト
提供開始日
2021年1月29日(金)
〔機能拡張後に想定される利用主体とユースケース〕
1.都市整備計画の立案
想定利用主体
政府や地方自治体など、国・自治体規模での温暖化対策の推進を求められる行政機関。
ユースケース
管轄エリアで排出されているCO2のモニタリングと、それを吸収するために必要となる緑地等の都市整備を計画・立案する際の情報として活用。
2.工場建設地の検討
想定利用主体
自社の事業活動が温室効果ガスの排出と関連のある、温暖化対策への問題意識が高い企業。
ユースケース
工場の建設候補地を選定する際、同社から排出されるCO2量を吸収するポテンシャルのある場所を検討するための参考情報として活用。
DATAFLUCT co2-monitoring. サービスページ:http://co2.datafluct.com/
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