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この冬の電力は本当に大丈夫か? 寒波襲来で鮮明になる日本の電力の課題

この冬の電力は本当に大丈夫か? 寒波襲来で鮮明になる日本の電力の課題

2021年12月09日

この冬も寒波の影響で、昨年と同様に電力需給がひっ迫する可能性がでてきた。11月10日の気象庁の発表によれば、ラニーニャというペルー沖赤道付近の東太平洋の海面水温が平年より低くなる現象が現れ、今年の冬も寒くなる可能性が強いという。

昨年末、全国的に厳しい寒さが続き、電力需要がひっ迫したことを受け、大手電力10社でつくる電気事業連合会(電事連)は、沖縄を除く全国の家庭や企業などに対し、日常生活に支障のない範囲での節電への協力を呼びかけた。

なんとか乗り切った昨冬から約1年が経つが、今冬も無事に乗り切れるのだろうか。また、政府はどのような対策を打つのだろうか。

電力需要が高まる冬を前に、上昇が止まらない電力価格 

昨冬の電力需給ひっ迫は、断続的な寒波による電力需要の大幅な増加と液化天然ガス(LNG)の在庫減少によるLNG火力の稼働抑制が主因だったが、石炭火力のトラブル停止といった背景事象や石油火力の休廃止などの構造的事象も存在した。それらに加え、再生可能エネルギー導入拡大に伴い、調整力としての火力の重要性が増し、LNG 火力への依存度が増大した一方で、電力自由化に伴う経済効率性の観点からLNG 在庫の余剰分が各社で適正化され、kW・kWh 双方が不足するリスクが課題として顕在化した。

そして今冬もまた、電力需要が高まる冬を前に卸電力市場の価格上昇が止まらない。日本卸電力取引所(JEPX)で取引が始まった2005年以降、2021年11月のスポット(随時契約)の平均価格は、11月としては過去最高値を更新した。1kWhあたり18.5円と、2020年11月(同5.6円)の約3.3倍となった。

電力卸市場の価格高騰は、LNGの高値が最大の要因だ。2018年以降、世界のガス・LNG価格は相関を強めており、足元では、米欧アジア各地域でLNG価格が高騰している(図1)。電力需要が多い冬場にLNG価格が高止まりすれば、電力卸価格の高騰も長引く可能性が高まり、卸市場から電力を仕入れる新電力会社の経営を圧迫することも懸念される。

図1:直近のLNG価格の推移


出所:資源エネルギー庁

卸価格高騰につながった要因の一つに、石炭火力発電所の設備トラブルに伴う一時的なLNGの需要増があげられる。経産省の資料によると、中国電力や九州電力、関西電力など大手電力会社5社で11月時点で、複数の石炭火力発電所での設備故障などで計画外停止に陥ったため、LNGの需要が突発的に増えた。

経済産業省は、冬季の高需要期を目前に12月3日、官民連絡会議を開催し、この冬の電力・ガスの需給見通しや、燃料を取り巻く直近の動向等について情報を公表した。

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東條 英里
東條 英里

2021年8月よりEnergyShift編集部にジョイン。趣味はラジオを聴くこと、美食巡り。早起きは得意な方で朝の運動が日課。エネルギー業界について日々勉強中。

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