エネ庁がこの冬の危機感を公表する背景には、今年初めの寒波により火力発電所の燃料となるLNGの調達が間に合わなくなった教訓がある。この冬も例外ではないという見方もある。ラニーニャ現象など複数の影響が重なり日本列島に寒気が流れ込みやすくなり、電力需給がひっ迫する可能性があるという。
また、寒波の影響でLNG火力などの燃料供給設備が凍結するなど発電所のトラブルも懸念されているという。2012年2月には九州電力の新大分発電所(LNG火力)で、燃料供給設備が寒さで凍結するトラブルがあり、すべての発電機が一時停止。需給ひっ迫において、LNG 火力への依存度の高まりを背景に、LNGの在庫減少にともなう供給面への影響力の大きさが明らかになった。
東京電力管内では12月6日、千葉県の千葉火力発電所の電源設備トラブルや、寒さによる暖房の電力需要が高まったことなどが重なり、供給力に対し需要が占める割合(使用率)が97%と一時、非常に厳しい水準となった。
その後、管内のほかの発電所の出力を上げるなど供給力を確保したことで、使用率は改善され、東京電力の送配電部門、東京電力パワーグリッドは「電力の安定供給に支障はない」としているが、ここでも現在の日本の電力事業が火力発電に依存した供給構造となっていることが浮き彫りになった。
日本の電力のあり方は、この10年で大きく変わった。日本は2050年にカーボンニュートラルを実現することを目指しており、CO2排出量を減らしていく必要がある。日本政府は、非効率な石炭火力発電のフェードアウトを着実に進めるしくみについて議論を行ってきた。自然エネルギーの普及を急ぐ一方、普及政策の弱さが指摘されてきており、政策の強化が課題となっている。
寒波など、あらゆる事象が起こったとしてもスムーズにすばやく安定供給を確保できるよう、さまざまな対策を確実に進めていくことが求められる。
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