中国の有名自動車メーカー、上汽通用五菱(ウーリン)が2020年7月に発売した約50万円の小型EV「宏光MINI EV(ホングワンミニ EV)」が登場し、話題を呼んでいる。発売以来、新エネルギー車月間販売台数1位の連続記録を更新し続けている。
「片道30分程度を1日1往復程度」で「高速道路は走らない」という前提で、航続距離は120km、最高速度時速100kmという低スペック仕様となるコンセプトがテスラを上回る人気となったのだ(図2)。
図2:2021年1月~9月の車種別EV販売ランキング(単位:台)
出所:ビジネス+IT(乗用車市場信息聯席会の統計)
3つのグレードが用意され、それぞれ2万8,800元(約46万5,000円)、3万2,800元(約53万円)、3万8,800元(約62万7,000円)となっている。こうした中国メーカーは冷却システムを簡略化するなどして、低価格を実現しているとみられる。
さらに、中国系EVメーカーであるHWエレクトロは、2021年11月に軽自動車規格の商用EV「エレモ」を発表。軽商用車の電動化が活発化している。
SGホールディングス傘下の佐川急便やSBSホールディングスなどの物流大手は中国製の採用を決めた。中国のEVの日本導入が進めば、国内の自動車メーカーにとっては脅威となることが予想される。軽自動車という日本独自の規格であるが、EV時代は中国をはじめ、世界と争わなければならなくなるかもしれない。
現在ではまだ一般的とはいえない軽自動車規格のEVであるが、冒頭で述べたように、2022年以降、超小型モビリティも含め、各社がラインナップを拡大する見込みだ。多くのユーザーにとって、EV化が身近になってきてはいるものの、航続距離や充電インフラなどの課題は価格以外にも残る。
日本に先行して100万円以下のEVを次々と発売している中国は、いまや「小型EVのメッカ」になりつつあり、日本国内の自動車メーカーも軽EVの推進を急ぐ。国内において軽EVが安価で普及すれば、日本のクルマ社会を変革する可能性がある。
しかし現状では、利用方法が限定されやすい商用車のほうが、電動化は早く進むと考えられている。実際に、トヨタ、ダイハツ、スズキは共同で軽商用EVの開発を進めており、乗用車よりも早いタイミングでリリースされる見込みだ。
日本が誇る軽自動車の魅力が海外に伝わり、日本の軽EVが世界から注目される日がやってくることを期待したい。
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