需給調整市場検討小委員会はどのようなものか 第17回「需給調整市場検討小委員会」 | EnergyShift

脱炭素を面白く

EnergyShift(エナジーシフト)

第17回「需給調整市場検討小委員会」

需給調整市場検討小委員会はどのようなものか 第17回「需給調整市場検討小委員会」

2020/07/09

審議会ウィークリートピック

2021年度から順次、広域で運用される需給調整市場だが、先行する三次調整力②につづいて、三次調整力①の議論も進められている。今回は電力広域的運営推進機関における「需給調整市場検討小委員会」での議論から、三次調整力①およびポジアグリなどの課題整理、「広域需給調整システム」運用状況について、お伝えする。

需給調整市場検討小委員会はどのようなものか

2020年6月12日、電力広域的運営推進機関(以下、広域機関と呼ぶ)の第17回「需給調整市場検討小委員会」がWeb開催された。

本「審議会ウィークリートピック」で、この需給調整市場検討小委員会について紹介するのは初めてであるため、まずはこの小委がどのようなものであるのか、概要説明させていただきたい。

この小委は、需給調整市場創設に向けた技術的検討を進めるにあたり、実運用の観点を踏まえた必要な調整力の量・質等条件の検討、市場運営等や広域化に関する技術的検討をおこなうことを目的として、「調整力及び需給バランス評価等に関する委員会」のもとに、2018年2月に設置開設された。

今回第17回小委の主な議題は、三次調整力①の事前審査・アセスメントおよび、需給調整市場におけるポジアグリ・機器個別計測・低圧アグリに関する課題整理、「広域需給調整システム」の運用状況である。

三次調整力①の事前審査・アセスメント

まず、三次調整力①とはどのような調整力であるのか、需給調整市場全体の商品の中でその要件を再確認しておこう。

三次調整力②必要量の考え方について 2018年11月13日 第7回需給調整市場検討小委員会資料より(P8)

この図では、左側の一次調整力は応動時間が速く・継続時間は短く、右側の三次調整力は応動時間は遅いが、継続時間が長い商品となっている。
応動時間とは、一般送配電事業者の中央給電指令所が指令を発信してから、各発電機等が供出可能量まで出力を変化するのに要する時間を意味する。また右端の三次調整力②と左側の一次~三次調整力①の大きな違いは、指令間隔が短いこと(例えば1分)である。

一般送配電事業者は発電機が事故等で停止した直後に応動時間の速い一次から順次、二次・三次へと持ち替えながら、周波数を維持回復すべく調整力を運用している。この図でいう三次②以外の調整力、つまり「一次~三次①」を本稿ではまとめて三次①等と呼ぶこととするが、三次①等はゲートクローズ(GC)以降に生じる予測誤差・時間内変動・電源脱落等による周波数変動に対応するための商品である。

よって三次①等は、随時発生する周波数のズレを解消するために、短い間隔で指令を発信され続けており、その都度、指令値は異なる数値となっている。

調整力はその特性により、以下のような「調整力型」と「供給力型」に区分される。三次①等は調整力型に該当する。

第9回需給調整市場検討小委員会(2019年3月5日)資料3をもとに筆者作成

調整力には、一般送配電事業者から刻々と送られる、都度変化する指令値に対して正確に応動することが求められる。このことから、需給調整市場において調整力の発動後にその応動を評価するにあたっては、指令値に対する追従性が重要な要素となる。

第17回需給調整市場検討小委員会資料2-1(2020年6月12日)より

需給調整市場では、ΔkWの供出が可能な状態に発電機等を維持しておくことが「リクワイアメント(要求事項)」として定められている。この、ΔkWの供出可否について確認・評価することを「アセスメント」と呼んでいる。アセスメントには以下表2のように、ⅠとⅡの二段構えとなっている。

第9回需給調整市場検討小委員会(2019年3月5日)より筆者作成

アセスメントⅠの実施方法は、発電機の場合、ゲートクローズ(GC)時点の発電計画を確認することとしている。具体的には、発電可能上限値および発電計画値の差分がΔkWの落札量を上回っていることを確認する。

第17回需給調整市場検討小委員会資料2-1(2020年6月12日)より

三次①のアセスメントⅡの具体的方法は以下の表3のとおりである。1分ごとに、指令した出力値(ΔkWの±10%以内)となっているか否かが評価される。

第9回需給調整市場検討小委員会(2019年3月5日)より筆者作成

なお「事前確認」は、アセスメントⅡと同様の応動確認をおこなうこととされている。
また、三次①の金銭的ペナルティは、ΔkW落札額の1.5倍とされている。
三次①は、2021年度から広域運用、2022年度より広域調達されることが予定されている。
後述するように、中部・関西・北陸の3社ではすでに2020年度から三次①相当の調整力が広域運用されている。

需給調整市場におけるポジアグリ・機器個別計測・低圧アグリ

ポジアグリ

本小委ではすでに「ポジアグリ」という略称が公式に用いられているが、少し前までは他の審議会では「ポジワット(逆潮流)・アグリゲーション」と呼ばれていたものである。ネガワットは「下げDR」によって創出されるが、ポジワットは「上げDR」のことではなく、逆潮流・系統への突き上げ(自家発や蓄電池から系統への逆潮流など)を意味している。
様々な制度上の課題があるため、現時点ではポジアグリを調整力として活用することは認められていない。例えば現行の調整力公募では、電源Ⅰの募集単位は「原則としてユニットを特定した上で、容量単位による応札を受け付ける」とされている。ユニット単体では商品要件の最低入札容量に満たない小規模な電源や、需要家構内に設置された自家発や蓄電池等の逆潮流はアグリゲートしないと参入することができない。

多くの事業者がポジアグリを調整力として活用することを希望しているため、資源エネルギー庁のERAB(エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス)検討会では、まずは電源Ⅰ´の高圧以上のポジアグリの検討を開始し、その後、段階的に適用範囲を拡大する方向性が示された。ERAB検討会では、電源Ⅰ´ポジアグリを実施した際の制御量の評価方法などが検討されている段階である。

需給調整市場におけるポジアグリに関する課題は、電源Ⅰ´と共通の課題が多いと考えられる。そのため「手戻りの無いよう」、エネ庁での電源Ⅰ´ポジアグリの検討がすべて完了した段階で、こちら広域機関の本小委で需給調整市場への適用拡大に向けた検討を実施することとされた。ポジアグリの実現には、もう少し時間が掛かる様子である。

機器個別計測

現在一般的に、下記図4のような需要場所では、受電点に設置された計量器(検定を受けた特定計量器)により、需要場所全体の電力量の変化を計量している。同じく調整力においても、受電点による計測に限定しており、「機器点」計測は認めていない。

しかしながら需要家構内には、自家発や蓄電池・EVなどの制御可能なリソースと、制御対象外のリソース(太陽光発電のような自然変動電源や、通常の負荷設備)が存在する。受電点1点で計量する場合、仮に蓄電池を完全に制御したとしても、図のL1・L2需要の変動により、需要場所全体では制御量がぼやけてしまう、という難点がある。

よって事業者からは、蓄電池等の制御可能なリソースに対しては、「機器点」で個別に計測した計量値によってΔkWを評価してほしいという要望が多く挙げられている。

第17回需給調整市場検討小委員会資料3(2020年6月12日)より

機器点計測に関しては、従来から大きく以下2つの課題が指摘されてきた。

  • ① 「ΔkW評価」の計測点と、「調整力kWhに関する清算」の計測点の一致の是非(現在は「受電点」で一致している)
  • ② 機器個別計測を許容する際の不正行為への対応策

検討の結果、①に関しては2つの計測点は一致させる必要があるとの結論となった。もし計測点を「機器点」・「受電点」と異なる地点にする場合、現状では調整力単価とインバランス単価が異なるために、この価格差を狙った不正な裁定行為がおこなわれる可能性があるためである。ただし、この計測点に特定計量器を設置する場合、費用面での問題が生じる(アグリゲーター事業の採算性が悪化する)ことから、計量制度の合理化が必要となる。

また②に関しては、一般送配電事業者は受電点以下の構内の電気の流れを把握することは出来ないため、需要家が自身の構内配線を変更することで容易に不正が可能となることが問題として指摘されている。機器単位では指令値どおりに応動しているように見せかけて、実際には構内で需要を操作するだけであって、系統の需給改善には貢献しないことが問題となる。

このほか、供給力確保における各事業者の責任範囲や、同時同量制度との関係性について検討が開始されることとなった。機器個別計測の実現についても、もう少し時間が掛かる様子である。

低圧アグリ

本小委ではすでに「低圧アグリ」と公式に略称されているが、アグリゲーターが低圧の一般家庭等における蓄電池、EV、空調機器等の数kW以下の小さなリソースを、大規模に(数千件~数万件)アグリゲートして調整力として用いるものである。

現状のアグリゲーション対象は少数(数百件程度)の高圧リソースであり、これとの比較では圧倒的に数が多いこと、小規模であることが特徴である。

低圧アグリが抱える課題は、先述の「ポジアグリ」や「機器個別計測」が抱える課題と、ほとんど重なっている。よって低圧アグリが実現するには、まずポジアグリ・機器個別計測の課題が解決することが前提となるため、これらが解決された後に、低圧アグリを検討することとなった。広域機関では、どのようなビジネスモデルの中でアセスメント等を実施できるのかについて、事業者からの提案を促している。低圧アグリはエアコンやEV等、身近な機器が対象となるためイメージしやすい先進的事業モデルであるが、その具体化には制度的課題が山積み状態である。事業者自身も積極的な制度設計の提案を行うことが期待される。

低圧アグリが実現した場合、調整力の調達費用が削減できる可能性があるが、一般送配電事業者側では、システム改修費等の費用が発生する。社会全体として見た場合にコストメリットが得られるか否か、まだこの検討の入り口段階である。

「広域需給調整システム」の運用状況 ~広域運用は大きな経済メリット~

第17回小委では、一般送配電事業者等で構成される「送配電網運用委員会」から、「広域需給調整システム」の運用状況が報告された。

2020年1月から当該システムの試験運用を経て、3月からは中部・関西・北陸の3エリア間で調整力の広域運用を開始した。その3月からは三次調整力②相当の30分単位の調整力を、5月からは三次調整力①に相当する15分単位の調整力の本格運用を開始している。

第17回小委では、1月の試験運用の成果として、中部・関西間でインバランスネッティング(インバランスのプラスマイナスを相殺して必要総量を減らすこと)が実現したこと、コマ(1月28日18時)によっては中部から関西に向けて100万kW程度の調整力が融通されたことが報告された。このコマでは余剰インバランス75万kWhの大半が広域メリットオーダーに従い、発電単価の高い関西側で下げ調整された。

また、3月12日~30日の3エリア本格運用(30分単位)では、広域需給調整の融通量(取引量)は合計1億2,000万kWh(1日平均667万kWh)であった。金銭面での3社間での調整力差し替えメリットは、合計2.4億円程度となった(1日平均1,300万円)。

今後、ほぼ毎月1エリア(送配電事業者1社)のペースで追加され、2021年2月までには沖縄を除く全9エリア(9社)で、広域需給調整システムの運用を開始する予定である。

念のため補足しておくと、この「広域需給調整システム」は広域「運用」のためのシステムである。広域「調達」のためのシステムである「需給調整市場システム」は別途開発が進められており、新型コロナウイルスの影響で多少の遅延が発生しているが、概ね予定どおりに2020年度中に完成の見込みであることが報告された。

今回、まず3エリア間の広域融通であっても大きな経済的メリットが生じることが明らかとなった。しかもこれはまだ、三次調整力②に相当する調整力だけが対象である。今後、9エリアへの拡大、商品の拡大、そして広域調達の開始により、一層大きな経済的メリットが生じることが期待される。

(Text:梅田あおば)

梅田あおば
梅田あおば

ライター、ジャーナリスト。専門は、電力・ガス、エネルギー・環境政策、制度など。 https://twitter.com/Aoba_Umeda