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コロナから脱炭素社会、ペロブスカイト太陽電池まで。地域エネルギー事業を巡る状況をどう考える?

コロナから脱炭素社会、ペロブスカイト太陽電池まで。地域エネルギー事業を巡る状況をどう考える?

2021/02/14

これからの地域エネルギー事業のヒント 9
~地域密着型エネルギー事業者の地域エネルギー論~

コロナ危機ではじまった2020年は、現在の電力市場高騰まで含め、地域エネルギー事業にとっても、大きな影響を与える出来事が続いた1年だったのではないだろうか。事業経営にあたっては困難な状況だが、同時に地域エネルギー事業の役割は急速に高まっている。エネルギー事業コンサルタントの角田憲司氏が、解説する。

大きく動いた2020年のエネルギー・環境政策

西暦2020年は日本社会にとって節目となる年だった。これは誰もが感じていることだろう。エネルギー・環境分野においても、まさしくそうである。何といっても気候変動対策へのスタンスが大きく変わった。

前年(2019年)の「COP25(気候変動枠組み条約第25回締約国会議)」において一層激しいバッシングを受けながらも、政府は2020年3月、「2030年度に2013年度比▲26%」という削減目標を変えないまま、パリ協定に基づく「日本のNDC(国が決定する貢献、実質的には削減目標を意味する)」を国連に提出した。野心的な目標を議論する時間がないまま提出期限が来たというやむなき部分もあったのだろうが、「ああやっぱり、日本は・・・」と思った関係者も多かったはずである。

ところが、2020年7月に梶山経済産業相が低効率な石炭火力を休廃止する方針を発表したあたりからギアチェンジが見えてきた。そして、ギアチェンジを決定づけたのは10月の菅義偉首相による2050年温暖化ガス排出“実質ゼロ”宣言」だろう。

この後は、電力・ガスなどエネルギーを供給するセクター、鉄鋼・セメント・化学などエネルギーを使って製品・サービスを生み出しているセクター、RE100企業・自治体・環境意識の高い消費者など需要家としてエネルギーを最終消費するセクター等、温室効果ガスに関わりのある様々なセクターが、「脱炭素化へのコミット」を本格的に始めている。

次期エネルギー基本計画議論とカーボン・プライシング議論

2021年に入ってからは、補助金や基金など各省庁の2021年度予算措置によって政府としての推進策が裏付けられるとともに、企業・業界団体、地方自治体、NPO法人等も、脱炭素化に向けた独自計画(ただし、脱炭素化のカギを握る技術革新の動向が不透明なので、脱炭素化に向けたトランジション(移行)計画的な側面が強いが)を策定・公表していくことだろう。

また、電源のエネルギー・ミックス議論でいえば、昨年末に経済産業省が審議会で示した「2050年に再エネ比率を約5~6割に」という目安を軸に、夏に向けて次期エネルギー基本計画議論が展開され、並行して、これまで硬直状態だった「カーボン・プライシング議論」も活発化するだろう。

一方、地域においては、「2050年までにCO排出実質ゼロ」を表明する自治体、いわゆる「ゼロカーボンシティ」が増加し続けている。2021年1月19日時点では、208自治体(28都道府県、119市、2特別区、48町、11村)にまで拡大しており、これが国の脱炭素化シフトを促したとも言われている。

他にもある地域エネルギー事業への影響要因

地球温暖化対策に関連する政策面だけでもこれだけの動きがあったのだが、これだけが地域エネルギー事業に影響を与えるわけではなく、同じ時期に顕在化した以下の2つの動きが、地域エネルギー事業を構想し、設立し、持続的に運営していくことへの不安材料となっている。

1つ目は、再エネの大量導入を意識した電力市場制度設計(の矛盾、混乱)である。これに関しては、本サイト(EnergyShift)で大量に報じられてきたので多くは語らないが、なかんずく地域エネルギー事業への影響が大きいのが、容量市場」の制度設計・運用の問題だろう。簡単に言えば、2024年度から小売電気事業者が負担する「容量拠出金」が過大になることが判明したため、とりわけ電源を自前で持たない小売電気事業者(地域新電力、自治体新電力も含まれる)では死活問題にもなると言われており、(見直しを含む)同制度の検証が行われている。

2021年、電力需給逼迫

そして、年明けにはLNG在庫不足に端を発した「電力需給逼迫」によって日本卸電力取引所(JEPX)のスポット価格が記録的な高値となり、やはり電源を自前で持たない小売電気事業者(地域新電力、自治体新電力も含まれる)の経営を圧迫する問題が起き、これにより電力小売り事業に多大な影響をもたらすインバランス料金制度の検証も行われている。

2つ目は、コロナ危機を契機に顕在化した、地域経済(の疲弊、縮減)問題である。地域経済は全GDPの7割を占めるとされており、コロナで最も大きな打撃を受ける。加えて、コロナ対応により地方自治体も深刻な財政難に見舞われる。つまり、地域経済はかなり疲弊し、コロナ禍が終息した後も後遺症が長く重くのしかかることを覚悟しなければならない。

そして、それを肌で感じた地域の自治体やステークホルダーは「地域経済循環効果」に着目して、とりわけ地域外への流出額が大きいエネルギー代金を、地産地消型のエネルギー事業により「冨」として地域内にとどめ、循環させることによって経済効果を高めることの重要性に気づき始めている。むろん、この動きはコロナ禍以前からあったのだが、図のとおり、地域エネルギー事業の役割をコロナ禍が高めたわけである。

図:急速に高まった地域エネルギー事業の役割

また、こうした動きへのフォローウィンドもある。政策面では分散型エネルギーシステムの推進が、市場面では太陽光発電の自家消費時代の到来が、そして技術面では「脱炭素破壊的技術」と称されている「ペロブスカイト太陽電池」の商用化が見えてきたこと等であり、自然由来の再エネが乏しい地域でもエネルギーの地産地消事業を構想しやすくなっている。

「複雑系の事業」となる地域エネルギー事業

このように地域エネルギー事業を巡る状況は、多様な外部環境変化によって複雑さと不透明さを増しており、地域エネルギー事業は「複雑系の事業」となりつつある。ゆえに関係者は、こうした環境変化要因への造詣を深め、長期的で多角的な視点を持って地域エネルギー事業を考える必要が出てきたのだが、これを「大変なこと」と捉えて諦めてしまわず、行政機関や市中の専門家の支援・助言を活用しつつ、地域と地球の持続可能性のために努力されることを期待してやまない。

角田憲司
角田憲司

エネルギー事業コンサルタント・中小企業診断士 1978年東京ガスに入社し、家庭用営業・マーケティング部門、熱量変更部門、卸営業部門等に従事。2011年千葉ガス社長、2016年日本ガス協会地方支援担当理事を経て、2020年4月よりフリーとなり、都市ガス・LPガス業界に向けた各種情報の発信やセミナー講師、個社コンサルティング等を行っている。愛知県出身。

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