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電気料金、過去5年でもっとも高い水準に 今冬、さらに上昇か

電気料金、過去5年でもっとも高い水準に 今冬、さらに上昇か

2021年09月21日

電気料金の値上げが止まらない。大手電力10社は2021年11月の一般家庭向け電気料金を値上げする。電気料金は過去5年でもっとも高い水準に達しており、家計を直撃している。火力発電の燃料であるLNG(液化天然ガス)や石炭などの輸入価格の高騰が背景にある。暖房需要が増える今冬に向けて輸入価格は一段と高騰する見込みで、電気料金の値上げは止まりそうにない。

大手電力10社で上げ幅10%超え

9月16日、大手電力10社が11月の電気料金を値上げすると各メディアがいっせいに報じた。

標準家庭の電気料金で、10月と比べてもっとも値上げ幅が大きいのは沖縄電力で171円となる見込み。次いで中国電力が135円、東京電力と中部電力は133円、それぞれ値上げする見通しだ。

東京電力管内の標準家庭の電気料金は今年に入って1,054円、16.7%増加しており、2021年11月の電気料金は7,371円になる。このほか、中部電力7,026円、関西電力7,007円、九州電力6,699円となる見込みだ。今年に入ってからの値上げ幅は10社平均で12.3%と10%を超えている。値上げが止まらず、その結果、東京電力、中部電力を除く8社はこの5年間でもっとも高い水準に達している。

厚生労働省が毎年まとめる賃金構造基本統計調査によると、2020年の一般労働者の平均月額賃金は、30万7,700円と2010年比で3.9%増にとどまる。低成長から抜け出せない日本では賃金が伸び悩み、10%を超える電気代の上昇で、家計への負担は増すばかりだ。


※ 標準家庭の電気料金の推移。大手電力10社の公表データより編集部作成

LNG価格を釣り上げているのはロシア!?

背景にあるのが、LNGなど火力発電の燃料価格の上昇だ。

2050年の脱炭素社会の実現に向け、政府は再生可能エネルギーの最大限の導入を掲げるが、現状の日本は電力の76%をLNGや石炭火力に頼る火力大国である。特にLNG火力の比率は37%(2019年度)と高く、LNGなどの輸入価格が電気料金を左右する格好だ。

そのLNG価格の高騰が止まらず、アジア市場のスポット価格の指標であるJKM(ジャパン・コリア・マーカー)が、9月10日時点で20ドルを超えた。8月末からわずか10日たらずで約3割上昇した。例年なら、月別スポット価格は春から夏にかけ5ドル台に低下し、暖房シーズンを迎える秋以降は8ドル超となるのが一般的だ。ところが、今年は一変し、異例の高値が続く。

きっかけは、2020年末に日本や中国、韓国などを襲った寒波だ。

LNG需要が急激に高まり、供給対応しようとしたアメリカ産LNGがパナマ運河で大渋滞を引き起こした結果、世界のスポットLNGの輸送能力が低下し、LNGが世界的にひっ迫する。その結果、2021年1月にJKMのスポット価格が32.5ドルという史上最高値をつける。この高値に吸い寄せられるように、世界中のスポットLNGが北東アジアに輸入され、そのあおりを欧州が受ける。欧州へのスポットLNG輸入が激減し、地下在庫を使いなんとか凌いでいる中、4〜5月の気温低下が重なり、地下在庫を積み増すことができず、2021年8月末時点の貯蔵能力が67%にまで低下してしまう。

さらに、ロシアの存在が欧州の需給ひっ迫に拍車をかけている。

欧州需要は底堅く、価格が高止まりしているにもかかわらず、ロシア政府系企業のガスプロムが今年1〜8月に欧州に供給した天然ガスは1,000億m3強と前年同期比2%増にとどまる。8月単月では12%減少した。とりわけ減少したのが、ウクライナ経由のガス供給量で、2020年初頭に減少して以来、いまだ回復していない。

一方、ガスプロムは9月10日、天然ガスをバルト海経由でドイツに運ぶ海底パイプライン「ノルドストリーム2」が完工したと発表。このノルドストリーム2が、ロシアが欧州向け天然ガス供給を絞る一因だと見られている。

JOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)は、「なぜ、ガスプロムは、ウクライナ経由の天然ガス輸出量を増加させないのか?」について、次の3点が背景にあると分析している。

  1. エネルギー安全保障上、ノルドストリーム2が必要というメッセージを伝える狙いで、擬似的な欧州ガス供給不足をつくり出し、ノルドストリーム2の完成を推し進めた
  2. 対立するウクライナの天然ガス収入を増やしたくない
  3. 欧州の天然ガス価格をずっと釣り上げていたい

JOGMECは「10年前であれば、欧州のガスをめぐる国家間の争いが、これほどまでに日本のスポットLNG価格に影響を与えるとは、多くの関係者が考えすらしなかった」と述べている。

原発が再稼働すれば、電気料金は下がるのか

欧州を舞台にした国家間の争いがLNGの供給不安を煽るなか、アメリカなどはポストコロナ経済がはじまり、LNG需要が高まっている。これを受け、世界の工場である中国景気が急回復し、LNGの輸入量が拡大、2021年は日本を抜いて世界最大の輸入国になる見込みだ。さらに、インドの輸入量も急激に増えており、日本は必要量を確保できないリスクが顕在化しつつある。


出典:経済産業省

日本も今夏の電力供給はなんとか乗り切ったものの、2022年冬期に再び電力需給がひっ迫するおそれがあり、大手電力各社はLNGの確保に急ぐ。その結果、JKMがこれまでにないレベルで高止まりしている。LNGの輸入価格上昇が、電気料金に如実に反映され、値上げに歯止めがかからない状況が続いている。

では、原子力の再稼働が進めば、電気料金は下がるのだろうか。

関西電力は大飯原発3、4号機の再稼働を踏まえ、2018年7月から平均5.36%の値下げを実施した。九州電力も玄海原発、川内原発4基が再稼働したことを受け、2019年4月に平均1.3%値下げしたが、それ以上にLNG価格が上昇し、値下げ効果はかすんでしまっている。

今年6月には、関西電力が運転開始から40年を超える原発として国内ではじめて、美浜原発3号機を再稼働させたが、事業収支が厳しいことから料金値下げを実施できなかった。10月には、四国電力の伊方原発の再稼働が予定されているが、こちらも値下げできる状況にない。東京電力によると、原発1基稼働すると年間500億円の収支が改善すると見込むが、それはLNG価格などが平時の状況であれば、の話だ。

このままでは最高値更新のおそれ

LNG価格がこれまでにないレベルで高止まりしており、しかも、暖房需要がピークを迎える冬期には一段と高騰する見込だ。こうした状況下では、原発再稼働による値下げ効果は限定的だと見込まざるをえない。実際、世界銀行や米国エネルギー情報局(EIA)は2030年まで天然ガス価格は上昇し続けると予測している。


出典:経済産業省

LNGの高止まりが常態化すれば、電気料金の値上げは避けられず、このままだと東日本大震災以降、もっとも高くなる可能性さえ出てきている。電気料金を引き下げるには、やはり火力発電の比率を低減させるしかない。脱炭素のみならず、電気料金の観点からも、政府には、安価な再エネの導入拡大などの加速が求められている。

Text:藤村朋弘)

EnergyShift編集部
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