食と文化と再生可能エネルギー(第5回) 料理のアンシラリーサービスとしてのスパイス・ハーブ | EnergyShift

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食と文化と再生可能エネルギー 第5回

食と文化と再生可能エネルギー(第5回) 料理のアンシラリーサービスとしてのスパイス・ハーブ

2020/08/12

食と文化と再生可能エネルギー 第5回

さて、新型コロナウィルスの影響で不定期連載も少し時間が空いてしまいました。コロナの影響で出張や会議が減って原稿執筆に専念できる…と思いきや、リモート講義の準備に意外と時間がかかったり、リアル会議よりも開催しやすいためか気軽にじゃんじゃんネット会議が増え、むしろコロナ前よりも会議が多いかも…? という状況です。みなさま、いかがお過ごしでしょうか。

前回から食べ物編がスタートしていますので、今回は料理に彩りを添えるスパイスとハーブ(ついでにもう少し幅広に取って、調味料など)の話。調味料やスパイス・ハーブは「彩りを添える」とかふんわりした文学的表現としてよく使われますが、経済学的には「付加価値を高める」と言った方がよいかもしれません。あくまで脇役ですが、脇役がいないと主役の魅力(価値)も半減…という大事な役割です。

スパイスのない人生なんて…

調味料や香辛料、そしてスパイスやハーブの定義は文献によってさまざまですが、本稿ではさしあたり、『広辞苑 第七版』(岩波書店)のシンプルな定義に従います。

• ちょうみ‐りょう 【調味料】
調味に用いる材料。味噌・醬油・砂糖・塩・酢など。
• こうしん‐りょう 【香辛料】
辛味または香り・色などを飲食物に付与する調味料。

また、香辛料の中でもスパイスとハーブについては(上記の定義と特にコンフリクトがなさそうなので)、全日本スパイス協会による以下のような定義に従いたいと思います。

• 香辛料とは
香辛料とは植物体の一部で、植物の果実、果皮、花、蕾(つぼみ)、樹皮、茎、葉、種子、根、地下茎などであって、特有の香り、辛味、色調を有し、飲食物に香り付け、消臭、調味、着色等の目的で使用し、風味や美観をそえるものの総称であり、スパイスとハーブに大別されます。
• スパイスとは
▸ スパイスとは香辛料のうち、利用部位として茎と葉と花を除くものの総称です。
▸ 具体例
ニンニク、ショウガ、ごま(ごまの種子)、唐辛子、ホースラディッシュ(西洋ワサビ)、マスタード(からし)、ケシノミ、ゆず、胡椒、ナツメグ、シナモン、パプリカ、カルダモン、クミン、サフラン、オールスパイス、クローブ、山椒、オレンジピール、ウイキョウ、カンゾウ、フェネグリーク、ディルシード、カショウ、ロングペパーなどです。
• ハーブとは
▸ ハーブとは香辛料のうち、茎と葉と花を利用するものの総称です。
▸ 具体例
クレソン、コリアンダーリーフ(こうさい)、紫蘇、セロリー、タラゴン、チャイブ、チャービル、ニラ、パセリ、マスタードグリーン(からしな)、ミョウガ、ヨモギ、バジル、オレガノ、ローズマリー、ペパーミント、サボリー、レモングラス、ワサビ葉、山椒の葉などです。

まあこの連載はなんちゃってゆるゆるエッセイなので、厳密さはあまり要求されるわけではありませんが…。用語の定義を確認するのは一種の職業病なのでスミマセン…。

みなさんは普段日常的に上記のようなスパイス・ハーブを楽しく毎日使ってますでしょうか…? 上記の具体例ではだいぶマニアックなスパイス・ハーブの名前も並んでおり、これらを毎日使っている人はさすがにいないでしょうが(いたらお友達になって下さい)、例えばニンニクや生姜や胡麻や唐辛子、紫蘇、茗荷などであればポピュラーで、スパイス・ハーブにお世話にならない人はむしろ少ないと思われます。スパイスやハーブは実際に我々の日常に溶け込んでいます。

一品目:バジルとトマトと豆腐のインサラータ・カプレーゼ

さて、前回に引き続き、スパイス・ハーブを用いた我が家の超簡単手抜き料理をご紹介。チャンチャラチャラチャラチャンチャンチャン〜チャラララランランラン〜♪(脳内ヘビロテ的なアレ)。

まずは一品目はハーブを使った超簡単料理から。最近、我が家ではベランダのプランターでミニ家庭菜園が復活しました。ベランダ菜園は我が家も10年前に勤しんでましたが、ここ数年は海外出張が多くて水やりができず長らく断念してました…。今年はコロナウィルス禍でステイホームを励行して出張が激減しているので、期せずして家庭菜園が復活したという次第です。現在は、バジル、オレガノ、シルバータイム、ミント3種類(ペパーミント、ブラックミント、パイナップルミント)、ローズマリー、パセリ、パクチー、紫蘇を猫の額のようなベランダでささやかに育てています。プランターから育ったハーブを刈ってきてざっと洗ってそのままサラダやパスタに放り込むのは醍醐味〜。というわけで、プランターで育てた生バジルを使ったサラダ。

材料。生バジルの葉8枚、トマト大玉1個、絹ごし豆腐1丁(以上2人分の分量)。それに加え、調味料はオリーブオイルと塩の最小限だけでよいです。以上。
作り方。絹ごし豆腐を長方形上に8分の1にスライス。トマトも8分の1にカット。以上。それだけ。
盛り付け。皿の上にまず豆腐を並べる。豆腐の上にトマトを載せる。トマトの上にバジルを載せる。最後にオリーブオイルをたっぷりとかけ、控えめに塩を振る。以上。それだけ〜。

もちろん、本場のカプレーゼは水牛のモツァレラチーズを使うので、それが手にはいればモツァレラでもOKです。でも豆腐で十分安くて美味しいよ。生バジルがないときはスーパーでも手に入る乾燥バジルでもOK(ちょっと多めに贅沢にどっぱり振る)。バジルの香りが苦手な方は、大葉(紫蘇)でもOK。その場合は、オリーブオイルと醤油を合わせて和風ドレッシングにするとよいかも。…って、ここまで来るともはやカプレーゼ(カプリ風)の面影が殆ど残りませんが…。

二品目:スパイスカレー

二品目。スパイスといったらやはりカレーでしょう。最近はイギリス風のカレーでも本場インド風のカレーでもなく、「スパイスカレー」という独自の文化が流行ってるそうですが(「スパイスカレー」を掲げているカレー屋さんは何故か大阪で多いそうです)、おうちでも簡単にできます。レトルトやルーではなくスパイスからつくるカレーはかつては本格派の凝り凝りの趣味というイメージもありましたが、最近は印度カリー子さんの「布教」のおかげで、お手軽に身近になりました。なんたって、夫婦揃ってステイホームの在宅勤務のお昼に15分かそこらでパパッとスパイスカレーが作れちゃう。ちなみに、印度カリー子さんは「スパイスカレーと標準化」という論考も書いてるので、規格とか標準化に馴染みのある再エネ業界エンジニアの方は必見です。

材料。スパイス数種。市販のスパイスパウダーでOK。うちはネット通販でちょっと大きめの袋をまとめ買いしています。小瓶に入ったものであればスーパーでも手に入ります。組み合わせは何でもいいけど、我が家の標準はクミン、カルダモン、ターメリック、カスリメティ(フェネグリーク・リーフ)、カイエンヌ・ペッパー。その他お好みでナツメグやシナモンを入れてもOK。その日の気分でテキトーでOK。

上記に加え、ジンジャーとガーリックとペッパー。これらはパウダーでなく、生姜とニンニクはみじん切りにして準備、胡椒は出来上がり直前に黒胡椒もしくは白胡椒の粒をペッパーミルで挽くのがベスト。ちなみに我が家のペッパーミルはプジョーです。プジョーって、あの高級車のプジョー Peugeot 社と同じオリジンで、もともと粉挽き屋さんです。トヨタが紡織機からスピンアウトしたというのと似てますね。プジョーのペッパーミルは使えば使うほど手に馴染みます。一家に一台、プジョー。

カレー本体は玉ねぎ大1個、トマト大2個程度(トマト缶でもOK)、ココナツミルク(なくても可。あるとオリエンタル感倍増)。我が家では、玉ねぎは休日にまとめてみじん切りしてフライパンでじっくり炒めて小分けにして冷凍してます(第4回参照)。ここまで準備できていれば、平日のお昼に15分で作れます。具はテキトーにその日の冷蔵庫と相談。お肉が好きな人は肉を入れて下さい。我が家はベジカレーなので豆や野菜が基本です。おっと、米を炊くのを忘れずに。

作り方。フライパンで生姜とニンニクのみじん切りを軽く炒る。玉ねぎ(既に炒めたもの)を投入。続いてトマトのざく切りを投入。スパイスを投入。ココナツミルクを投入。混ぜる。具材を投入。具材に火が通ったら完成。以上。簡単〜♪

盛り付け。皿にご飯を盛る。カレーを盛る。あまり考えずにワイルドにテキトーでOK。以上。平日のお昼は15分で作って15分でガツガツ食べる。忙しい日にはスパイスカレーだねぃ〜。

スパイス・ハーブは経済的

以上の我が家の手抜き料理を見て頂ければお分かりの通り、スパイスやハーブは何も難しい顔をしてうんちくを垂れながら凝った料理を作るためのものというより、割と手軽に手抜きで簡単に料理を(作るのも食べるのも)楽しむためのアイテムだと思います。

仮にスパイスやハーブ、調味料が一切ない状態でものを食べなければならないとしたら、どうなるでしょうか。我々はエネルギーを取得するために食ベ物を摂取しますが、エネルギー的に価値がある食べ物だけ食べていれば満足というわけではありません。調味料やスパイス・ハーブがないと、食べ物を摂取する行為自体も魅力的でなくなり場合によっては苦痛になります。調味料は決して贅沢のためのものではありません。

もしかしたら高級で新鮮な肉や魚は、塩やコショウやスパイスも一切なしでただ焼いただけとかただ切っただけでも感動的な味を味わうことができるかもしれませんが、それは産地から遠い都会では入手しづらく誰でも気軽に毎日できるものではありません。調味料、スパイス、ハーブは、むしろ手頃な値段の素材をそれ以上の価値に高めるための手段でもあるのです。実際、生鮮食品の輸送手段や保存方法が十分発達していなかった近代以前は、劣化した品質を補う(場合によってはごまかす)ためにもスパイスやハーブが使われていました。もちろん、古代ローマ時代や大航海時代など、コショウに代表されるスパイスが高価で宝石以上の価値で取引されていた時代もありましたが、現在は余程レアな品種でない限り市場にあふれており、多くはスーパーマーケットでも手軽な値段で手に入ります。

例えば、我が家でもベランダのミニ家庭菜園が復活しましたという話は既に述べましたが、バジルに関しては、近くのホームセンターの園芸売場で150円で買ったポット(苗木)を植木鉢に移し替えて摘心したらワシワシと育ったので、購入後1ヶ月程度で5倍くらいの量が収穫できてます。もし生バジルをスーパーで買おうとすると、ちょっとしか入ってない袋詰めの葉っぱ(しかも1~2日しかもたない)が300〜600円くらいと日本では超高いので、150円の投資で10〜20倍くらいの価値を生み出したことになります。今後、向こう1ヶ月も同量の収穫が期待できます。うはうは。

仮に150円で購入したポットを育てずにすぐ収穫したとしても、スーパーの袋詰め生バジルと同じ分量程度は見込めるので、2~4倍の価値は出ます。実際、イギリスなど海外のスーパーでは袋詰めの生バジルではなく、バジルポットが1~2ポンドほどで売られており(しかも日本より大きくワサワサでボリューム感あり)、台所に飾ってそれを直接むしって料理に投入したりしてます(イギリスの料理番組で見た)。欧州や北米では、スーパーで売ってるバジルポットは贅沢品ではなく、むしろ経済的なやりくり上手のアイテムです。いや、ここは日本だし、バジルには興味ないよ…という方は、大葉(紫蘇)で是非どーぞ。紫蘇はバジル以上に管理がラクでワッサワサに増殖するので、更に期待できます。

さて、我が家の場合、バジルをバルコニーで育てる場合、植木鉢や土や肥料のコストは入ってませんが、それも以前買ったものの使い回しなので限界費用 marginal(生産物をもう1単位追加的に生産するために必要となる費用の増加額)はほぼゼロ。私と家族の労働力もコストに入ってませんが、まあベランダの緑が増えて癒される〜という効用 utility(財のある組み合わせを選択することによって得られる、個人の楽しみの水準)に対する支払意思 willingness to pay(財に対して人が払ってもよいと思う最大金額)は、我が家では150円を超えているので、バジルポットを買ったことにより大きな便益 benefit(消費者が財・サービスの消費から得る満足度)を得ていることになります。

…以上、もっともらしく経済学用語を多用してみました。まあこのコラムはなんちゃって連載なので経済学用語は単なるカッコ付けですが、ホームセンターでバジルポット片手に「このバジルがもたらす便益は…」と3秒くらい熟慮するのは人生をちょっとだけ豊かにするお手軽で安価な方法かもしれません。

スパイス・ハーブは付加価値を生む

もうひとつ重要な点は、めんどくさいスパイスやハーブを使うのを避け、スーパーなどで手軽に手に入る「既製品」の調味料を選択すると、そちらの方が結果的にコストが高くつく場合が多いことです。

我が家では市販のドレッシングは一切買わず、サラダにかけるのは基本はオリーブオイルと塩だけなので(ハーブや他の調味料などを即席で混ぜて作ることも)、市販のドレッシングとほぼ同等のコストで我が家好みの付加価値の高い素晴らしく旨まうまーっ!なドレッシングが楽しめます。

あと、厳密には調味料には入るかどうかビミョーですが、我が家では柚子や酢橘やかぼすやシークワーサーの100%ジュースを冷蔵庫に常備して、これをドレッシングとして使います。高知では塩が入った「ゆの酢」が特産ですが、単に100%のジュースだけでも結構イケます。柑橘系の100%ジュース、添加物が一切入ってないものでも開栓後数週間、風味も長持ちします(あくまでドレッシングとして)。柑橘系のジュースを一振りかけるだけでもサラダが断然美味しくなりますし(一度お試し下さい!)、その日の気分で気まぐれにオリーブオイルやハーブと混ぜるとバラエティが広がります。

逆に言うと、多くの方がこのハーブやスパイスを「あらかじめ準備する」「直前に混ぜる」という労働作業を回避するために既製の市販品を購入するとしたら、それはこの労働力回避(つまり、めんどくさい手間を省く)ために対価を支払うことを認め、その支払意思額に見合った既製品を購入していると言えるでしょう。ちなみに我が家の場合は、余計な添加物がバリバリ入ってて自分好みにならない既製品ドレッシングに対する支払意思額は0円です。やっぱり自分で作った方が断然美味しい。まあ人それぞれですが。

同様に、普段よりワンランク上の調味料に切り替えると、食卓の味が抜群に変わって料理も断然美味しくなり、人生楽しめます(経済学的に言うと、より多くの便益が得られる)。高い調味料を使うことは、実はそれほど贅沢な経済行為というわけでもありません。例えば一般的な大手醤油メーカーの標準商品は750mlのペットボトルで350円程度の小売価格ですが(安売りスーパーではもっと安いかも)、我が家は湯浅(関西の醤油の聖地です!)や龍野(うすくち醤油と言えばここ!)から取り寄せた750mlで2,000円程度の最高級クラスのものを使ってます。その差約6倍。

しかし、1本2,000円の醤油は1日で使い切ってしまうわけではありません(1本2,000円の日本酒だったらソッコーで空になるお宅も多いかもしれませんが…)。大抵、消費するのに1~3ヶ月はかかるでしょう。小さじ一杯(5ml)あたりだと一般的な醤油が2.3円に対して最高級クラスの醤油でも13円程度なので、一食あたり数十円の追加費用で贅沢な気分が味わえます。安っいお肉や豆腐でもワンランク上の醤油を垂らすとお味が全然違いますよ…。是非お試しあれ。醤油単体で考えると6倍のコスト増ですが、その日の食費全体から考えると限界費用はわずかで大きな便益が得られます。実に経済的。

スパイス・ハーブはアンシラリーサービス

さて、このようにスパイスやハーブ、もう少し幅広にとって調味料全般は、決して贅沢品ではなく、我々が生きるために必要な「エネルギー摂取」の補助ツールとして、単に生命維持や健康に必要な栄養摂取だけでない、付加価値を高める重要な役割を担っていることがわかります。

電力の世界も同様で、このスパイスやハーブ、そして調味料に相当するものはアンリラリーサービス ancillary serviceと呼ばれています。最近では海外ではより上位の概念として柔軟性 flexibilityが専ら議論されています。

電力システムは、実際のエネルギー(電力量)を生産し輸送し消費するだけで済むわけではありません。そこには周波数調整や電圧管理などといった付随的なサービスが必要となります。アンシラリーとは直訳すれば「付随的」という意味ですが、食べ物(人間に取ってのエネルギー源)に対するスパイスやハーブの役割と同じく、もはや「付随的」なものではなく、なくてはならないものになっており、本体の価値を高めるものでもあります。

電気の本体、すなわち電力市場で取引される商品としての電力量(kWh)は、日本では現在、平均7円/kWh程度の価値で取引されていますが、今後、燃料費がタダで限界費用が安価な再エネが大量導入されるに従って、平均取引価格も漸減していくことが見込まれます。それは消費者にとっては良いことですが、その商品を生産(発電)する発電事業者や取引サービス業としての小売事業者・アグリゲーターにとっては利ざやが少なくなることを意味し、ビジネスとしてますます厳しくなっていきます。

そこで注目されるのがアンシラリーサービスや柔軟性による高付加価値化であり、実際に欧州では、当日市場や需給調整市場で取引される柔軟性の方がエネルギー本体よりも高く取引されています。アンシラリーサービスは、従来は主に電力会社が持つ大規模発電所の調整によって提供されていたため、このサービスに対する対価(価値)が明示的に示されておらず、無料サービスかのように勘違いされがちですが、今後はこのアンシラリーサービスや柔軟性を市場で適切に価値付けすることが重要となります。日本で現在議論されている「ΔkW価値」もそのひとつです(この「ΔkW価値」という用語自体は英訳しても海外に通用しないガラパゴス用語なので、1日も早く国際的議論に合わせ「柔軟性」という用語を採用して欲しいのですが…)。

例えば、出力抑制 curtailmentはエネルギー(kWh)商品の逸失利益(機会損失)が発生するので、特に日本では再エネ発電事業者にとって目の敵にされる行為ですが、海外のいくつかの市場ではこれを下方予備力 downward reserveとして需給調整市場で高値で売ることも可能です。スペインや英国などでは実際にそのような市場行動が見られています。出力を減すことで高く売れるんですよ…。塩分控えめにしたらお値段高めでも売れる醤油みたいですね。「出力抑制はけしからん!」と憤るだけでなく、そういう将来の「しくみづくり」の議論に参加する必要があります。

スパイスやハーブは組み合わせにより自分にとって(あるいはさまざまな顧客にとって)さまざまに好みの味になりますが、それと同様、さまざまな発電方式やさまざまな場所に配置された電源を組み合わせることによって、さまざまな柔軟性のポートフォリオが用意できます。スパイスやハーブを自分で組み合わせるのはめんどくさい!という人は、出来合いの市販の調味料を買ってくるという選択肢もあるかもしれませんが、その場合、生産コストや手数料が上乗せされて高くつくかもしれません。

小規模発電事業者や小売事業者が、他社が提供するアンシラリーサービスの単なる利用者になるのか、自らの顧客の好みにマッチした魅力的で市場価値のあるアンシラリーサービスを提供する側になるのか、刺激のある辛いスパイスを噛み締めながら、少し先の未来を考えてみるも一興です。(おっと、うっかり真面目な話で終わってもうた…。)

次回は、食べ物系の話の続きで、お茶とコーヒー。サステナブルな話。たぶん。

(イラスト:ヤマサキタツヤ)

参照
全日本スパイス協会
印度カリー子
スパイスカレーと標準化

連載 食と文化と再生可能エネルギー
第4回 ゆるく楽しくベジタリアン。
第3回 ワインを飲む旅。旅するワイン。
第2回 ウィスキーを巡る時空の旅。
第1回 泡のない温いビールはお好きですか?

 

安田陽
安田陽

1989年3月、横浜国立大学工学部卒業。1994年3月、同大学大学院博士課程後期課程修了。博士(工学)。同年4月、関西大学工学部(現システム理工学部)助手。専任講師、助教授、准教授を経て2016年9月より京都大学大学院経済学研究科 再生可能エネルギー経済学講座 特任教授。博士(工学)。日本風力エネルギー学会理事。IEA Wind Task25(風力発電大量導入)、IEC/TC88/MT24(風車耐雷)などの国際委員会メンバー。 現在の専門分野は風力発電の耐雷設計および系統連系問題。技術的問題だけでなく経済や政策を含めた学際的なアプローチによる問題解決を目指している。 主な著作として「世界の再生可能エネルギーと電力システム」シリーズ(インプレスR&D)、翻訳書(共訳)として「風力発電導入のための電力系統工学」(オーム社)など多数。