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非化石証書と、変わる「再エネ」表示:第50回「制度設計専門会合」

非化石証書と、変わる「再エネ」表示:第50回「制度設計専門会合」

2020/09/24

審議会ウィークリートピック

再生可能エネルギーの電気と火力発電の電気は、使う時点では同じ電気であっても、発電時の環境負荷は異なる。環境に関する価値をどのように表示し、流通させるのかは、かねてより課題であったが、非化石証書の登場によって、あらためてこの課題が浮上する。今回は2020年9月8日に開催された電力・ガス取引監視等委員会の第50回「制度設計専門会合」について報告する。

消費者にとってわかりやすい「再エネ」とは

非化石証書を用いた電力は「再エネ」と呼べるのか。「実質再エネ」とは何か。

非化石証書制度の変更に伴い、「電力の小売営業に関する指針」(以下、小売営業GL)の改正が議論されている。

今回お届けする、電力・ガス取引監視等委員会(以下、監視等委員会)の第50回「制度設計専門会合」では、一旦資源エネルギー庁が出した結論を覆す波乱があった。このようなマレなことが起こるほど、環境価値に関する制度設計は難しいものである。

再エネ電源主力化にあたり、環境価値に関する議論は一層重要性が増すと考えられるため、まずは現状から丁寧に振り返っておきたい。

鍵を握るのは需要家の理解、消費者の「分かりやすさ」である。

非化石証書制度の概要

再エネや原子力等の非化石電源には、電気そのものの価値と環境価値が存在する。現在の取引所取引では、その環境価値を適切に評価することが出来ないため、電気の取引とは別に、非化石証書を取引する制度が導入された。

第50回制度設計専門会合事務局提出資料「非化石証書制度の変更を踏まえた小売営業ガイドラインの改定について」(2020年9月8日)より

電気に携わる事業者であればこの説明をそのまま理解するであろうが、一般消費者が日常生活において「環境価値」などという言葉を使うことはなく、それを「分離する」ということや、分離された「証書」とは何かを理解することは難しいだろう。

図1のようなイメージ図を見れば理解は進むと考えられるが、通常の小売電気事業の営業断面においては望み薄であろう。

また、説明を聞いて頭で理解することと、納得する・腑に落ちることは全く別物である。消費者が発する「分かりにくい」という言葉は、心理的な抵抗感が表現されている可能性がある。

非化石証書は、「非化石価値(高度化法の非化石電源比率算定時に計上できる価値)」、「ゼロエミ価値(ゼロエミッション価値=温対法上のCO2排出係数が0kg-CO2/kWhである価値)、「環境表示価値(小売電気事業者が需要家に対して付加価値を表示・主張することができる価値)の3つを有すると整理されている。

また、非化石証書には「再エネ指定」と「指定なし」の2種類があり、前者のみが環境表示価値を持つ、という違いがある。

非化石証書は誰がどのような目的で購入するのか。

年間販売電力量が5億kWh以上の小売電気事業者は、エネルギー供給構造高度化法で定められた目標達成のため、一定量の非化石証書を調達する必要がある。いわゆるコンプライアンス需要である。

また、CO2ゼロエミ価値や環境表示価値を付加価値として訴求することにより、新たな顧客を開拓したい小売電気事業者が自主的に調達することも考えられる。ただしこの「営業需要」とコンプライアンス需要は、量としては重複していることには留意すべきである。

消費者に対する環境価値の訴求・表示に関しては、従来からFIT由来非化石証書の取り扱いを小売営業GLにおいて定めていたが、2020年度からは新たに、大型水力等の非FIT再エネ非化石電源や原子力発電が非再エネの非化石電源として対象となることにより、小売営業GLの改定が必要とされていた。

全ての非化石電源において非化石価値が分離される・非化石価値を手放すことにより、全ての非化石電源は一旦「抜け殻」のような状態となる。従来は相対取引により、電気価値と環境価値を一体的に取引可能であったが、今後は別途、非化石証書の調達が必要となる。

資源エネルギー庁案と過去の整理

非化石証書制度の変更は以前から決まっていたことである。このため資源エネルギー庁(以下、エネ庁)の制度検討作業部会では、非化石証書を活用した際の「再エネ」の訴求等について、すでに2020年1月の時点で以下のように一旦整理済みである。

第50回制度設計専門会合事務局提出資料「非化石証書制度の変更を踏まえた小売営業ガイドラインの改定について」(2020年9月8日)より

第50回制度設計専門会合事務局提出資料「非化石証書制度の変更を踏まえた小売営業ガイドラインの改定について」(2020年9月8日)より

非化石証書制度が開始する以前から、FIT電気については「再エネ」と表示することは出来なかった。まず消費者が直感的に理解しがたいのはこの点であろう。

FIT電気は需要家が支払う再エネ賦課金を原資とした補助を受けていることから、その環境価値は全ての需要家に帰属すると整理されており、特定の小売電気事業者が再エネとしての付加価値を訴求することは適切ではないとされている。

よって非化石証書制度の開始後は、非化石証書を使用した電気を「実質的に再エネ」と表現することが小売営業GLで定められた。

非化石証書に関する小売営業GL改定の論点

エネ庁が図2の整理を公表して以来、消費者や事業者から以下のような指摘や要望が寄せられている。

指摘1.「FIT電気+再エネ指定証書」は「再エネ」と表示すべき。
FIT電源は元々再エネであり、「実質再エネ」とするのは消費者にとって直感的に理解しがたい。

指摘2.化石電源や原発、JEPX調達電力に再エネ指定証書を合わせたものは「実質再エネ」とすべきではない。
消費者が、実際の調達電源が再エネであるかのように誤認するおそれあり。

ただし指摘1に関しては、すでに図2内に注記されているとおり、「FIT電気+再エネ指定証書」の扱いについては今年1月に初めて示された案ではなく、現行の小売営業GLに規定された表示方法であって、2016年11月から具体案が論じられてきたものである(第3回 総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会 電力システム改革貫徹のための政策小委員会 市場整備ワーキンググループ)。つまり消費者や事業者等からの今回の指摘・要望は、制度設計議論をずいぶん遡ったものであると言える。

再エネに対する需要家の関心の高まり、そこにビジネスチャンスを見出す事業者の機運の高まりにより、非化石証書の調達意欲が沸く制度とすることが求められていると考えられる。

監視等委員会による変更案

上記指摘を受けた監視等委員会による、制度設計専門会合での変更案は以下のとおりである。

筆者作成

パターンAのFIT電気に再エネ指定証書を付加する場合は、「実質」を取り除き、「再エネ」と表示・訴求することを可能とする案である。

FIT電気については従来から、非FIT再エネ(FIT制度の補助を受けない電源)と区別することが求められており、小売営業GL上では以下3つの要件を説明するよう定められている。

  • (ア)「FIT電気」である点について誤解を招かない形で説明すること
  • (イ)当該小売電気事業者の電源構成全体又は電源を特定しないメニューに占める割合を説明すること
  • (ウ)FIT制度の説明をすること

監視等委員会では、これら3要件を求めることで非FIT再エネ電源との区別が一定程度可能である(「実質」を削除可能)と判断した。

パターンBについては、消費者等からの指摘2をしりぞけ、原案どおり「実質再エネ」と表示する案である。

国際的イニシアティブであるRE100においても、「取引所電力+再エネ証書」の組み合わせは再エネ電力の調達手段の1つとして認められており、仮にパターンBを実質再エネとして認めない場合、企業の再エネ調達手段を減じることとなるためでもある。

そもそも非化石証書制度は、証書に環境価値を化体したものであり、仮にパターンBが需要家に十分アピールできる環境価値を持たないと制限する場合、小売電気事業者があえて高価な再エネ指定非化石証書を購入しようとするインセンティブを無くしてしまい、証書取引が低迷することが懸念される。

ただし、「実質再エネ」という表現が分かりにくいことは事実であり、他によい表現が無いかどうか、次回の専門会合においても審議継続する予定である。

また、消費者が実際の調達電源が再エネであるかのように誤認することを避けるため、環境価値の表示と近接する分かりやすい場所に、電源構成や主な電源の表示を行うことや、再エネ指定証書を使用している旨の説明を行うことが求められる。細かい「注記」が多くなることは本制度の悩みどころである。

非化石証書の情報開示

非化石証書に関する小売営業GLのもう一つの大きな変更は、非化石証書の情報開示である。現行の小売営業GLでは電源構成の開示が「望ましい行為」と位置付けられているが、今後は、非化石証書についても、その情報を開示することが望ましいとされる。

第50回制度設計専門会合事務局提出資料「非化石証書制度の変更を踏まえた小売営業ガイドラインの改定について」(2020年9月8日)より

ただし、このイメージ図は、1つの小売電気事業者として見た場合の姿と考えられる。多くの場合、小売電気事業者は「再エネ電力メニュー」のように、メニュー単位で電源構成や証書構成を表示することになると予想されるため、現実には左の円グラフは「再エネ指定証書100%」のような姿になると予想される。

旧一般電気事業者の内外無差別取引

大規模水力や原発の大半は旧一般電気事業者(以下、旧一電)各社が保有しており、新電力はその電力や非化石価値にアクセスすることが困難であった。

第50回「制度設計専門会合」では実に多様なテーマが議論されており、その一つが旧一電の発電・小売間の不当な内部補助防止策である。

本稿では紙幅の都合上、詳細には踏み入らないが、旧一電各社は、発電から得られる利潤を最大化するという考え方に基づき、社内外の取引条件を合理的に判断し、内外無差別に電力卸売を行うことをコミットすると公表した。

これにより今後は、適切な価格や取引条件をオファーすれば、新電力も大規模水力等の非化石価値を入手できるはずである。内外無差別な取引は、買い手の新電力だけでなく、売り手としての旧一電の利益を最大化し、非化石証書制度の狙いである新規再エネ電源の開発が進むことが期待される。

(Text:梅田あおば)

梅田あおば
梅田あおば

ライター、ジャーナリスト。専門は、電力・ガス、エネルギー・環境政策、制度など。 https://twitter.com/Aoba_Umeda