8月10日、住宅や建築物の脱炭素化に向けた政策を議論する審議会が開かれ、2030年までに新築住宅6割に太陽光発電を搭載し、太陽光の設置義務化も検討するといった原案がとりまとめられ、了承を得た。国土交通省が中心となり、住宅などの脱炭素化に向け、エネルギー政策を推進していくことになる。
国交省や経済産業省、環境省の3省は今年4月から「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」を開催し、住宅などの脱炭素に向けた政策を議論してきた。
しかし、7月20日に開かれた検討会は、脱炭素型住宅であるZEHや太陽光発電の導入などに関し、国交省の責任の明確化などをめぐり、議論は紛糾。とりまとめ案が継続審議となる事態となっていた。
8月10日に開かれた検討会では、改めて原案が提示された。
原案では国交省の役割がより明確化され、「住宅・建築行政を所管する国土交通省は当該分野における省エネルギーの徹底、再生可能エネルギー導入拡大に責任を持って主体的に取り組む」。さらに「住宅政策における脱炭素化の取組である省エネ・創エネを組み合わせたZEHの普及拡大について、住宅行政を所管する立場として、最終的な責任を負って取り組む」ことなどが明示された。
実現に向けては、一般消費者の負担軽減を目指し、補助政策に加えて融資や税制においても支援策に取り組むとした。
また太陽光発電の普及に関しては、「2030年において新築戸建住宅の6割に太陽光発電設備が設置されることを目指し、将来における太陽光発電設備の設置義務化も検討する」などと示された。
原案に対し、諸富 徹 京都大学大学院経済学研究科教授から「IPCCの報告書が明らかとなり、2040年にも世界の平均気温が1.5℃上昇するとの予測が出た。新築住宅6割から、10割搭載へと目標の引き上げが求められるのではないか」。「住宅政策においてもエネルギー政策が重要となる転換点となった。恒久的にエネルギー政策を展開する体制を確立すべきだ」という意見が出された。
鳥取県の平井伸治知事は、「ZEHなどの補助金は季節ものであり、住宅建設の当事者団体から使いにくいという意見が出されている。十分に予算を確保し、年間を通じて利用できる支援制度に見直すべき」といった意見や、太陽光発電の設置に向け「施主がメリットを実感でき、多雪地など地域の実情を踏まえた財政支援を国として講じる必要がある」と指摘した。
このほか、「(太陽光設置)義務化は慎重な議論を」(清家 剛 東京大学大学院新領域創成科学研究科教授)、「IPCC第6次報告により、脱炭素に向けた施策の強化と前倒しが求められることになった。2030年以降に新しくつくられるものは、太陽光発電100%、断熱性能のさらなる強化が必要ではないか」(竹内 昌義 東北芸術工科大学デザイン工学部建築・環境デザイン学科長)という意見が出たものの、とりまとめ案は了承された。
2030年新築住宅6割など、すでに達成が危ぶまれる施策がある。住宅などの脱炭素に向け、国交省の役割がますます重要となっていく。
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