シンガポールでグリーン・ファイナンスの研究と人材育成を推進するセンター・オブ・エクセレンスとなる、Singapore Green Finance Centreが設立された。今後、アジアへの持続可能な投資のための新しいエコシステムを構築し、気候変動対策に向けた投資を呼び込んでいく。
東南アジアのグリーン・ファイナンスの半分はシンガポールドル
2020年10月13日、Imperial College Business SchoolとSingapore Management University(SMU)の Lee Kong Chian School of Businessは、Singapore Green Finance Centre(SGFC)を設立した。これはシンガポール初の、グリーン・ファイナンスの研究と人材育成を専門とする研究所になる。設立にあたっては、シンガポール金融庁(MAS)の支援を受け、設立パートナーとして、中国銀行、BNPパリバ、HSBC、三井住友銀行、ゴールドマンサックスなど9つの金融機関が参加している。
SGFCは持続可能な投融資を行うため、金融経済学に気候変動などの環境要素を考慮したグリーン・ファイナンスに関する研究を行うと同時に、学部学生、大卒者、専門職者向けの教育を行い、政策立案にも反映させることを狙う。
主導するのは、SMUのDavid Fernandez教授とImperial College Business SchoolのCharles Donovan博士。また、これら2つの学術機関、MASおよび9つの創設パートナーによる諮問委員会がSGFCの戦略的方向性に関するガイダンスを提供する。
Singapore Green Finance Centreの主要研究テーマは3つ
SGFCの研究テーマは、次の3つをカバーする。
- 気候変動関連のデータとESGにおいて考えるべき事項を意思決定に統合することで、ビジネスを変革する。
- グリーン・ファイナンス市場の効率を改善できる政策と新しいイニシアチブを設計する。
- グリーン・ファイナンス・ソリューションの開発促進
また、人材育成にあたっては、学部や大学院などさまざまなレベルのコースを提供する。これにより、金融機関などがチームを拡大し、グリーン・ファイナンスの人材の強力なパイプラインができるという。
MASのマネージング・ディレクターである、Ravi Menon氏は、「SGFCは、環境科学と金融経済学の2つの主要な学術機関を結集し、このエコシステムの重要な一部となるでしょう。SGFCの成功の鍵を握るであろう産業界からの強力な支援を特に心強く感じています」と述べている。
Fernandez教授は、「アジアは持続可能性と成長のバランスを見出さなければならない。SGFCは、気候変動をビジネス戦略に組み込むための触媒としての役割を果たします」と述べる。
Donovan博士は、「アジアは世界を低炭素の未来に導く可能性がある。アジアの資本市場は、この機会を把握する必要があります。SGFCは、気候変動に関する投資家と政策立案者の間のギャップを埋めるものとなるでしょう。世界の主要な金融機関は、この機会を捉えており、それがSGFCを支援している理由です」と述べている。
授業は来年(2021年)6月に始まり、ロンドンのインペリアル・カレッジとシンガポール経営大学内に教室が設けられ、対面授業とオンライン授業を組み合わせて行う。
シンガポールは2017年以来、80億シンガポールドル(約6,200億円)を超えるグリーン債券を発行し、これは東南アジアで発行されたグリーン債券の50%近くに及んでいる。
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