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火力発電は環境に悪い?メリット・デメリットをご紹介

火力発電は環境に悪い?メリット・デメリットをご紹介

EnergyShift編集部
2021/03/08

火力発電は、日本の主要な発電方式。2019年時点では電源構成の75.1%を占めており、今後もしばらく主力電源としての役割を担う見込みです。

ここでは火力発電の仕組みやメリット・デメリット、環境に対する影響についてご説明します。私たちは火力発電をどう認識し、どのように付き合っていくべきなのか一緒に考えていきましょう。

火力発電とは

火力発電は、石油・石炭・天然ガス ・廃棄物などの化石燃料の反応熱エネルギーを電力へ変換する発電方法の一つで、日本において主力となっている発電方式です。発電出力の微調整、発電量の安定性といった観点から優れた発電方式であり、再生可能エネルギーの普及が進んでいく今後も重要な役割を担います。

火力発電が発電する仕組み

火力発電には複数の種類があるものの、基本的には以下のような仕組みで成り立っています。

*電気事業連合会「汽力発電」

  1. ボイラーで燃料を燃やし、水を沸騰させる
  2. 沸騰して生じる水蒸気でタービンを回転させる
  3. タービンに繋がれた発電機が稼働し、発電する
  4. 水蒸気は水に戻されて再度ボイラーへ入る

火力発電所はこのような仕組みで稼働していることから、石炭を燃やして水を沸騰させることで、車輪を動かす蒸気機関車に例えられることも多々あります。火力発電に使われる燃料は主に3種類あり、それぞれコストや二酸化炭素排出量が異なります。

燃料の種類燃料の特徴
LNG(液化天然ガス)二酸化炭素排出量が少なく、長期契約によって安定的に供給されるが、輸送費・燃料費は高額
石油貯蔵・運搬は他の燃料よりも容易である一方、価格変動が大きく石炭に比べて高額
石炭他の燃料より安価であり、資源量が豊富であるものの、発電により排出する二酸化炭素が多量

近年、火力発電の技術開発は積極的に行われており、石炭火力発電は従来に比べて環境負荷の大幅削減が実現しました。以下の資料は、クリーンコール技術と呼ばれる方法により、大気汚染物質の排出を削減した横浜市にある磯子石炭火力発電所のデータです。

*資源エネルギー庁「なぜ、日本は石炭火力発電の活用をつづけているのか?~2030年度のエネルギーミックスとCO2削減を達成するための取り組み

資料右上のグラフから読み取れるように、リプレース(建て替え)後はNOx(窒素酸化物)・SOx(硫黄酸化物)・PM(粒子状物質)がそれぞれ80~90%削減されています。また、右下のグラフを参照すると、NOx・SOxのいずれもが世界的に低い水準にあると分かります。環境保全の観点から、火力発電には悪いイメージを抱きがちですが、日本の火力発電は時代にあわせて進化しているのです。

火力発電が占める割合

資源エネルギー庁が公表する電力調査統計などをもとに、環境エネルギー政策研究所が作成した資料によれば、2019年度における日本全体の電源構成は以下の通りです。

*環境エネルギー政策研究所「2019年(暦年)の自然エネルギー電力の割合(速報)」

2019年時点では、電源構成の75.1%を火力発電が占めています。政府の方針では、2030年度に火力発電の割合を56%(LNG27%・石油3%・石炭26%)に近付けることを目指していましたが、2020年10月に菅首相が脱炭素社会の実現へ注力することを宣言。2050年に日本の温室効果ガスを実質ゼロにすると表明しており、火力発電の立ち位置が今後どのように変化するのか注目が集まります。

一方、日本以外の国における電源構成は、以下のような割合になっています。

2019年の電源構成:世界15カ国

*自然エネルギー財団「統計|国際エネルギー」

上記データは2019年時点のものです。黒が石炭、灰色が石油、薄灰色がガスを示しているため、黒~薄灰色の3色はすべて火力発電を示しています。原子力発電や再生可能エネルギーの割合が大きな地域もありますが、いまだ火力発電に頼っている国は多いといえるでしょう。

火力発電のメリット

火力発電には悪いイメージを抱きがちですが、メリットが多いからこそ現在まで主要電源として活用されてきました。まずは、他の発電方式と比較して、火力発電がどのようなメリットを持っているのか確認していきましょう。

エネルギー変換効率が高い

火力発電は、水力発電を除く他の発電方式よりエネルギー変換効率に優れています。エネルギー変換効率が高いほど、元のエネルギーから電力に変換される際に失われるエネルギーが少なく、効率的に発電できます。

各種発電方式別にみたエネルギー変換効率

*関西電力「再生可能エネルギーへの取り組み」

柔軟に出力調整ができる

火力発電は出力の微調整を得意としており、電力の需要にあわせて発電量を変えられます。太陽光発電や風力発電など、発電量が天候に依存する発電方式は微調整が難しく、水力発電や原子力発電などの「長期固定電源」と呼ばれる発電方式も、短時間で細かく出力を調整できません。そのため、刻々と変動する電力需要へ対応するために、火力発電は重要な役割を担っているのです。

出力の微調整が可能である点は、再生可能エネルギーが普及しても火力発電がなくならない、主な理由の1つでもあります。

発電量が安定している

火力発電は、燃料さえあれば安定的に発電できます。稼働率を自然に依存する発電方式では発電量が安定しないため、2020年現在、多くが稼働停止となっている原子力発電の代わりを火力発電が担う形となっています。

大きな土地を必要としない

風力発電なら、一定以上の風速が期待できる場所に設備を設置する必要があります。水力発電も河川やダムが必要であり、地熱発電は火山近くの平地が良いなど、それぞれに制約があり設置場所の自由度は低いのです。

一方、火力発電は上記のような制約が少なく、比較的小さな面積の土地に建設できます。都市部に近い場所にも建設できるため、送電ロスを抑えつつ都市部に電力を供給できる点も魅力です。

事故の被害が広範囲に及びづらい

原子力発電所で事故が起こった場合、有害な放射能により長期間にわたって人体や自然環境に重大な影響を及ぼします。一方の火力発電は、放射性物質を生成しないため、万が一事故が起こったとしても被害は限定的で済みます。

放射性物質という、管理次第では危険を招く燃料を使わない点で、火力発電は比較的安全だといえるでしょう。

火力発電のデメリット

長らく日本の主要電源として活用されてきた火力発電にも、多くのデメリットがあります。ここでは、火力発電が抱えるデメリットについてご説明します。

二酸化炭素を排出する

燃料を燃やして発電する特性上、火力発電は他の発電方式より多くの二酸化炭素を排出します。以下は、燃料を燃やした際に発生する二酸化炭素のほか、燃料輸送や設備建設などから発生する二酸化炭素の総量である「ライフサイクルCO2排出量」を発電方式ごとにまとめたデータです。

*電力中央研究所「日本における発電技術のライフサイクルCO2排出量総合評価」

*電力中央研究所「日本における発電技術のライフサイクルCO2排出量総合評価

燃料を燃やす火力発電は、他の発電方式に比べて大幅に二酸化炭素の排出量が多いことが分かります。LNGを使った火力発電は、石油や石炭を使うより二酸化炭素排出量を抑えられますが、 それでも他の発電方式とは比較にならないほどの二酸化炭素を排出しているのです。

二酸化炭素を始めとする温室効果ガスの排出は、生態系や私たちの健康へ悪影響を及ぼす地球温暖化を招きます。地球温暖化によってもたらされる問題や、地球温暖化を解決するための取り組みは、以下の記事で解説しています。本記事とあわせてご参照ください。

 

燃料を国内で調達できない

火力発電に利用する燃料の調達は、いずれも海外からの輸入に依存しています。エネルギー供給を外部に依存しないよう、再生可能エネルギーによる発電を普及させて、燃料を輸入する火力発電の割合を減らさない限り、日本のエネルギー自給率は改善されません。

化石燃料は有限の資源である

火力発電が燃料とする、LNG・石油・石炭といった化石燃料は、すべて採取量に限りのある資源です。

2018年時点では、天然ガス・石油は今後50年程度、石炭は132年後に尽きてしまう計算です。今後も火力発電を利用し続ければ、やがて化石燃料は底をつき、つぎの世代に資源を残せなくなってしまいます。

火力発電の将来性

日本では再生可能エネルギーの普及が徐々に進んでおり、2030年には電源構成の20%超を再生可能エネルギーが担う計画となっています。これに伴い、火力発電の割合は2030年に56%に縮小する見込みです。菅首相の「エネルギー基本計画の見直しを行う」といった表明により、さらに縮小のスピードが速まる可能性はあるものの、出力調整の柔軟性や発電量の安定性が優れているため、完全に廃止されることはないものと考えられます。

今後は、IGCC(石炭ガス化複合発電プラント)のような技術がさらに発展し、発電量あたりの温室効果ガス排出量がより少なくなることが期待されます。IGCC/GTCCにまつわる用語の解説は、以下にご用意しました。

用語概要
IGCC(石炭ガス化複合発電プラント)ガス化炉を用いて石炭をガス化し、GTCC(ガスタービン・コンバインドサイクル発電)と組み合わせて発電効率・環境負荷を改善した火力発電システム
GTCC(ガスタービン・コンバインドサイクル発電)ガスタービンで発電し、排熱を用いて蒸気タービンでも発電することで高い発電効率を実現した火力発電システム

 おわりに

日本の主要な発電方式である、火力発電についてご説明しました。メリットだけでなく、デメリットもある発電方式ではあるものの、なぜ火力発電が主力電源とされているのかお分かりいただけたはずです。

なお、私たちが火力発電の課題に直接アプローチすることは難しいのですが、再生可能エネルギーの普及に貢献したり、消費電力の削減に努めたりすることは可能です。それぞれ、個人でも始められる取り組みですので、以下の記事を参考にしてください。

 

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