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インドに燃料電池駆動の列車が走る日

インドに燃料電池駆動の列車が走る日

2020/12/18

カーボンニュートラルを実現するにあたって、運輸部門は課題が多い。鉄道も各国の非電化区間は、現状では主にディーゼルエンジン駆動の気動車が用いられている。鉄道車両を燃料電池車両に置き換えようという取り組みが国内外で行われており、インドでは、来年2021年末頃に、路線に導入するという。YSエネルギー・リサーチ代表の山藤泰氏が鉄道大国の新たな取り組みを紹介する。

旅客キロ世界最大の国、インド

インドの鉄道路線を運用する国営の鉄道会社「Indian Railways」がこのほど、2021年末頃に燃料電池で走る4両編成の旅客列車を投入する計画を発表し、入札の手続きに入った。

インドは2024年迄に国内全路線を電化する方針を出しているが、現時点の電化率は58%に留まる(ちなみに、日本の鉄道路線電化率は70%ほど)。

燃料電池列車は未電化路線でも走行できることから、導入が実現すれば未電化路線で使われているディーゼルエンジン駆動の列車からの大気汚染物質や、温暖化ガスである炭酸ガスの排出を防ぐことが出来る。

インドの路線規模は、アメリカ、ロシア、中国に次いで4番目。アジアの鉄道路線に燃料電池列車が導入されるのは初めてとなる。中国では、路面電車や燃料電池バスが既に多くの都市で使われているが、郊外路線にはまだ走っていないのではないかと思われる。JETROのインド鉄道市場の概要(2017)によれば、世界の年間旅客キロ数比較ではインドがトップであり、中国がそれに続いている。インドに燃料電池列車が普及すれば、世界の環境負荷を大きく下げることができるだろう。

年間列車輸送における旅客キロ 上位10ヶ国
(基本単位:10億(人))


JETRO資料(2017年)より

ドイツではすでに燃料電池列車が定期運行

ドイツの北西部、ニーダーザクセン州ハノーバー近郊にある郊外路線(100km)に燃料電池列車が世界で初めて定期運航を始めたのが2018年9月16日。その車両であるCoradia iLintを製造したのはフランスのAlstom社だ。ドイツに続いて2020年11月には、同じCoradia iLintがオーストリア政府から走行の認可を取得している。


Coradia iLint 写真 Credit: René Frampe

さらに、英国、フランス、オランダなどヨーロッパ諸国、そしてカナダでも、燃料電池列車が導入間近になっている。初の商用運転がドイツで開始されて後、わずか3年でインドの実路線で走るようになるということは、この事実だけで世界の鉄道で燃料電池列車普及が急速に進むことを予測させるものだ。

1回の水素供給で1,000km走行

燃料電池列車の普及は、コストがかかる鉄道路線の電化を代替することができることだけではない。今後、地球温暖化対応策として急増する再生可能エネルギーからの電力を使い、水を電気分解して燃料である水素を製造する、すなわち、製造過程も含めてCO2を排出しない燃料で列車を走行させることによって、環境負荷の高いディーゼル列車をなくすことができることを意味する。

いまドイツで走行している燃料電池列車は、一編成2車両。最高時速140kmでディーゼル列車とほぼ同等になる。

車両の屋根上には2本の高圧水素タンクと2基の燃料電池(200kW/基)が設置されている。車両に使われている燃料電池はカナダのHydrogenics社が製造した固体高分子電解質型のものだ。

水素タンクの燃料を使い発電された電力は、床下に設置された2基のリチウムイオン電池(225kW/基)を充電し、この電池を動力として列車は走行する。列車がブレーキをかけて減速するときには、回生電力で蓄電池を充電し、水素の消費効率を上げている。

高圧水素タンクに1回水素を充填すれば、1,000kmの走行ができるため、路線100kmに対して一ヶ所の水素充填設備があるだけだが、これでこの路線に走る2編成(2021年には12編成に拡大)の列車への水素充填が余裕をもってできるとしている。水素ガス充填にはわずか20分ほどしかかからない。

この燃料電池列車が最初に走ったのがドイツ北西部であることにも意味がある。ドイツ北部では、北海で急増している洋上風力発電からの電力を消費しきれない状況にあり、この電力を水素製造に消費させることも考慮し、燃料電池列車を導入したのではないだろうか。

インドでは風力発電でグリーン水素を製造か

インドへの燃料電池列車導入についても、再生可能エネルギーと密接な関係があると考えられる。

インドは中国、米国、ドイツに次いで風力発電導入量が多い。太陽光発電についても、2019年の新設量は、中国、米国に次ぐ3位。2030年迄に総発電量の60%を再生可能エネルギー起源にするという目標を掲げている。

風力発電や太陽光発電は天候によって出力が不規則に変動する。変動する電力に合わせて、水の電気分解を制御すれば水素製造装置そのものが、電力の変動を吸収する蓄電効果を生むことになり、送電系統の安定性を大きく高めることができる。そしてこの方式で製造される水素で燃料電池列車を走らせれば、大気汚染に悩むインドの環境改善効果は大きいだろう。

菅首相は、日本を2050年迄にカーボンニュートラルにするという目標を示している。そうであれば、無電化路線の多い北海道や四国に、このような燃料電池列車を導入できないだろうか。

2020年10月にJR東日本、トヨタ自動車、日立製作所が共同で水素燃料電池と蓄電池を併用するハイブリッド試験車両を開発すると発表している。鉄道総研が2001年から継続してきた燃料電池列車の技術開発成果も取り込んで、中国、インドに次いで燃料電池列車を早く走らせて欲しいものだ。

山藤泰
山藤泰

1961年大阪ガス株式会社入社。1980年代に40kWリン酸型燃料電池のフィールドテスト責任者、1985年ロンドン事務所長、1994年エネルギー・文化研究所長を経て2001年退社。2006年YSエネルギー・リサーチ代表。 最近の訳書に「スモール・イズ・プロフィタブル」(省エネルギーセンター 2005年) 「新しい火の創造」(ダイヤモンド社 2012年)。最近の著書では、「よくわかるスマートグリッドの基本と仕組み」(秀和システム2011年改訂)など、訳書・著書多数。

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