9月24日、自民党総裁選の討論会が外交・安全保障・環境・エネルギーをテーマに行われた。そこで各候補のエネルギー・気候変動に対する考え方が改めて表明されたが、それらの考えから、各候補の脱炭素に関するスタンスも分かりやすく見て取ることができた。表向きはカーボンニュートラル継承といいつつも、その実、真剣に脱炭素に取り組む考えを持っているのは誰なのか、各候補はこの論点についてしっかり勉強できているのか。個別の質問とそれへの各候補の回答ぶりを一つ一つ見ていくと、それらが不思議なほど見えてくるので、その分析をお伝えしたい。
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まず、エネルギー・環境関連で出た質問が、現在の日本のエネルギーの中東依存度の高さについて問題視する指摘に始まり、エネルギーミックスについての考え方を聞くものであったが、この質問、各候補のエネルギー・脱炭素に対する本音と建前がかなり見える結果となった非常にいい質問であった。この質問に対する各候補の回答を整理したい。
高市氏はこの質問に対し、総務大臣時代に再生可能エネルギーを含む地産地消のエネルギーインフラ整備を行ったとして、今後もこれを強化していく考えを示しつつ、それによって中東等に流れている資金が国内循環すると説明。一方で、可変性の高いエネルギーに依存すると産業や医療等が立ち行かなくなるとして、小型モジュール炉などの次世代原子力に期待する旨も言及した。
また、併せて安定的な電力供給の重要性について強調。総裁選に入り、繰り返し述べてきた次世代原子力の重要性、これが高市氏の考えの軸であることがうかがえるとともに、カーボンニュートラル時代に再エネ推進の方向性であることは一応要素として入れつつ、本音ベースでは再エネの不安定さについて懸念をもっていることを暗にうかがわせる回答ぶりとなった。
続いて回答をした野田氏は、エネルギーミックスに賛成であるとの総論を述べた上で、個人として地熱を重視してきたことを紹介。今後については技術革新に伴う様々なエネルギーミックスを都度考えながら、電力の安定供給を実現していくと述べた。地熱はこれまでもエネルギーについて聞かれた際に答えてきていたため、その持論を再度展開した格好であるが、化石燃料についての見解を問われたことについては回答しなかった他、地熱以外の具体論についても言及をしなかったあたりに、他のテーマに比べて野田氏のエネルギー・脱炭素感がうかがえた格好だ。
3人目の回答者は河野氏。河野氏は、温暖化の切り口から説明を開始。温暖化対策を考えた場合、石油・石炭を電力用途に使用することをやめる必要があると説明。その上で、省エネでエネルギー消費そのものを減らすとともに、再エネを最大限増やしていく方針も示した。また、天然ガスについても長期的には低減をしていかなくてはならないと説明をしつつ、エネルギー供給が不足する分については当面は原発で補っていく以外にはないのではないかとの考えを示した。
脱炭素及び再エネ推進の方向性はこれまで通りであるが、原発については総裁選に入って以降、反対のトーンが弱まっていたところ、今回改めて原発についてはエネルギーミックスに入れる方向性が示されたことで、再エネ・原発の2つを軸としつつ、まずはCO2排出を減らしていくという考えが見えた格好だ。
最後に岸田氏が回答。2050年カーボンニュートラルを掲げる中で、クリーンエネルギーのメニューを揃えていくことについて、その重要性は論をまたないとしつつも、今後、デジタル化が進展することが予見され、電力需要も増加が見込まれる中、電力の安定供給及びコストの論点も大事になってくる旨を言及。原発、水素、カーボンリサイクルなども重要になるとの考えを示した。
岸田氏の考えは、他の論点についても、基本的に現時点での政府方針の延長線上にあることが多い傾向にあるが、改めてその姿勢が浮き彫りになったともいえる内容である。特に、再エネは総論重要であるとしつつ、安定供給に言及することで、暗に調整力としての火力の重要性やベースロードとしての原発の必要性も強調した格好であり、またコストについても再エネが他の電源に比してまだ高いという認識を持っていることもまたうかがえる内容となった。
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