太陽光関連事業者の淘汰が止まらない。帝国データバンクによると、固定価格買い取り制度(FIT)の買取り価格の引き下げ、さらにコロナ禍による経済低迷が重なった結果、2021年のプレーヤー数は5,423社と2018年比で約3割減少、市場規模は22.5兆円と半減した。太陽光関連事業者にとって厳しい経営環境が続く中、大規模太陽光発電は2022年4月から電力の市場価格に一定のプレミアムを上乗せした金額で買い取るFIP制度に移行する。さらなる縮小に向かうのか、それとも民間企業で導入機運が高まるオフサイトPPAの起爆剤となり、再び成長軌道に乗るのか。
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帝国データバンクが2月10日に発表した太陽光関連動向調査によると、太陽光関連業者のDI(景気動向指数)は新型コロナウイルスの感染拡大がはじまった2020年2月以降、景況感の急激な悪化に伴って太陽光関連のDIが急落、2020年4月には28.6をつけた。その後、徐々に回復し、2021年12月には42.7まで上昇している。
2021年の太陽光パネルの国内出荷量は5,322MWと2014年比で46.1%減少。FITに基づく買取り価格は家庭用が1kWhあたり19円と2012年比でほぼ半減し、10kW以上50kW未満の産業用に至っては12円と3分の1以下まで低下した。その一方で、太陽光パネルなどのコスト低減も進み、太陽光発電の投資利回りは再生可能エネルギーの採算性の目安とされる10%を確保できている。ただし、利率が変わらずとも利幅は確実に減少しており、市場環境は依然として厳しいままだ。
市場規模は2018年比で54.4%減となる22.5兆円とマーケットの半分が消失しており、太陽光関連事業者の淘汰が止まらない。2021年のプレーヤー数は5,423社と2018年比で29.2%減少した。
プレーヤー数と市場規模の推移
出典:帝国データバンク「太陽光関連動向調査(2021 年) 」をもとに編集部再編集
2021年の倒産件数は前年比横ばいの84件だったものの、大型倒産が多く発生したことにより、負債額は3.4倍増の816億円まで膨らんだ。2006年以降、倒産した負債総額上位20社のうち、JCサービス(2021年3月民事再生法、負債約153億4,200万円)、テクノシステム(2021年5月任意整理、負債約150億円)、グリーンインフラレンディング(2021年4月破産、負債約128億円)、アンフィニ(2021年9月民事再生、負債約87億円)など8件が2021年に破綻したものだ。
太陽光関連を主業とする企業の主な倒産
企業コード | 商号 | 都道府県 | 業態 | 倒産年月日 | 倒産態様 | 負債(百万円) |
582757111 | 株式会社JCサービス | 東京都 | 太陽光発電事業 | 2021年 3月 | 民事再生法 | 15,342 |
967820079 | 株式会社テクノシステム | 神奈川県 | 太陽光発電事業 | 2021年 5月 | 任意整理 | 15,000 |
035019392 | 株式会社グリーンインフラレンディング | 東京都 | 再生可能エネルギーのソーシャルレンディング事業 | 2021年 4月 | 破産 | 12,800 |
570280469 | アンフィニ株式会社 | 大阪府 | 特定規模電気事業(PPS)。太陽光発電システムの製造販売も | 2021年 9月 | 民事再生法 | 8,700 |
123021229 | 株式会社ZEN POWER | 福岡県 | 太陽光発電パネル製造・販売業 | 2017年 4月 | 破産 | 5,200 |
500275491 | 株式会社エバテック | 京都府 | 太陽電池パネル用製造装置の製造 | 2008年 11月 | 民事再生法 | 4,800 |
800600954 | 株式会社ヤマダエコソリューション | 東京都 | 太陽光発電システム設置工事・分譲事業 | 2020年 9月 | 破産 | 3,771 |
201645051 | 株式会社パシフイック・コースト・インダストリー | 神奈川県 | 太陽光発電システム設置工事 | 2019年 5月 | 破産 | 3,170 |
740073664 | 株式会社TY商事 | 愛媛県 | 太陽光発電システム用パワーコンディショナー製造 | 2017年 5月 | 特別清算 | 2,900 |
156008562 | かぶちゃんメガソーラー株式会社 | 長野県 | 太陽光発電事業 | 2018年 9月 | 破産 | 2,852 |
967322011 | 株式会社TS商事 | 愛媛県 | 太陽光発電システム用シリコンスライス製造 | 2017年 5月 | 特別清算 | 2,600 |
201965855 | PVG Solutions株式会社 | 神奈川県 | 太陽電池セル製造 | 2017年 2月 | 破産 | 2,200 |
261101533 | 株式会社エイジー・ジャパン | 千葉県 | 太陽光発電システム販売。蓄電池の販売も | 2021年 10月 | 破産 | 2,104 |
454010873 | 株式会社エナジーネクスト | 神奈川県 | 太陽光発電システム販売、施工 | 2019年 2月 | 破産 | 2,000 |
906009518 | 株式会社ジャパンエネルギーグループ | 岡山県 | 太陽光発電システム卸 | 2015年 12月 | 破産 | 1,808 |
967799430 | 株式会社リベルテ | 東京都 | 太陽光発電システム販売 | 2015年 3月 | 破産 | 1,730 |
333007541 | アラインジャパン株式会社 | 愛知県 | 太陽光発電システム設置工事 | 2021年 9月 | 破産 | 1,657 |
760015720 | ECI株式会社 | 岡山県 | 太陽光発電システムなど自然エネルギー関連商品卸 | 2021年 2月 | 特別清算 | 1,600 |
372002643 | 電現ソリューション株式会社 | 東京都 | メガソーラー開発、販売 | 2017年 10月 | 破産 | 1,550 |
出典:帝国データバンク
帝国データバンクは、FITの制度改正により、2020年度から小規模(10kW以上50kW未満)の産業用が全量買取り制度から余剰電力買取り制度に移行、250kW以上の大規模産業用には入札制度が導入され、これらの制度変更と、プレーヤー数の減少、市場規模の縮小、倒産件数の高止まりとの間には、強い相関関係があると指摘する。
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