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新しい国際サステナビリティ開示基準へ IFRS財団、CDPからのCDSBとの統合を完了

2022年02月10日

金融機関からも、企業からも求められていた統一基準

こうした気候変動関連の開示基準策定に関しては、各国、各金融機関などで様々な指標が使われている。

そのため、投資者及び他の資本提供者は、高品質でグローバルなサステナビリティ開示基準を望んでいた。これまでの自発的な報告のフレームワークやガイダンスは、それらが断片的であるため、投資者、企業、さらに国の規制当局のコストと複雑さが年々大きくなっていたからだ。

多くの投資者や規制当局は、IFRS財団に対し、市場主導の取組みを基礎とした国際的な会計基準策定の経験を活用し、気候変動、ならびにサステナビリティ事項についての基準づくりを要望してきた。日本でも金融庁や経団連、日本取引所グループなどからなるIFRS対応方針協議会によるサステナビリティ基準策定を歓迎する書簡が昨年8月にIFRS財団へ送られている。

メアリー・シャピロTCFD事務局長は11月のリリースで、「TCFDはISSB(国際サステナビリティ基準審議会)の設立を歓迎する。ISSBは、国際的に認められているTCFDのフレームワーク及びサステナビリティ基準設定の作業を基礎につくられる。ISSBは、一貫した比較可能でグローバルな報告基準を確立するための大きな一歩である」とコメント。TCFDもまた、ISSBの基準づくりにより深く関わっていく。

今回、CDSBが統合され、さらにはVRFもこのIFRS財団のISSB枠組みに統合される。「国際的に比較可能な、透明性のある」気候変動開示基準作りが一気に進みそうだ。

CDSBのリソースには引き続きアクセス可能

この統合はCDSBの閉鎖を確認するものであり、CDSBはISSBに完全に統合される。CDP-CDSBとIFRS財団との共同契約により、CDSBのリソースは引き続き旧ウェブサイト(さらに通知があるまで維持される)を通じてアクセス可能。

CDSBフレームワーク及び最近の技術的ガイダンス(「水」、「生物多様性」及び「社会」に関する開示)と、より幅広いリソースは、ISSBがIFRSサステナビリティ開示基準を公表する時まで、依然として企業にとって目的適合性があり、適用されるものとなる。

CDPとIFRS財団は、双方の組織にとって互いに便益となる将来の取決めを共同で検討している。これにはISSB基準の採用を推進するため、どのように相互が協力できるのかの検討が含まれている。

CDP質問書にも変化

ISSBがサステナビリティ全般の開示基準作成を目指すように、CDPもこれまでの気候変動、水セキュリティ、フォレストの枠組みを超え、他の環境分野に拡大していくことを発表している。個別の環境課題は他の様々な課題と複雑に関連しあっているからだ。

その第一弾として、今年(2022)のCDP質問書には、気候変動質問書に生物多様性の質問が追加となった。また金融機関に対しては、気候変動だけでなく、水セキュリティ、森林(フォレスト)の各質問書が統合された質問書を送付する(金融機関以外のテーマ統合は2023年以降を予定)。(今年の質問書:英語のみ)

日本のCDPジャパンオフィスは、こうした動きをいち早く日本企業に伝え、サポートできるよう取り組んでいくという。

日本企業に対しては「グローバルでの急速な動きに対応できるよう、従来みられたような内向きの対応だけでなく、常にグローバルの視点を持った活動をしていただきたい」(CDPジャパン)とのことだ。

こうしたグローバル対応の一つとして、今年のCDP質問書を送付する対象の日本企業を、プライム市場上場企業全体にまで拡大した。「TCFDに沿った開示が求められるこれら(プライム市場上場)の企業が、TCFDに整合したCDP質問書に対応することで、TCFDではどのような開示が求められているのかを理解いただくことができると考えています。
ISSBも気候変動分野についてはTCFDと連携しているため、CDPとしては質問書を通して日本企業のサポートをすることが、グローバル基準での情報開示促進につながると思っております」(CDPジャパン)。

各団体コメント

IFRS財団評議員会のエルッキ・リーカネン議長

「これは、新しく創設されたISSBが我々の設定した野心的な日程に合わせてIFRSサステナビリティ開示基準を作成するために必要となる技術的専門性をISSBに提供する上での不可欠の一歩である。CDPが CDSBを運営し、切れ目のない移行を可能にしてISSBが必要としている素早いスタートを提供するにあたっての支援に感謝したい。今後数年、両組織間の実りある協力を維持したいと考えており、当財団への新しい同僚を歓迎する」

CDPのポール・シンプソンCEO

「CDSBのIFRS財団への統合は、CDSBのビジョン(サステナビリティ報告を財務会計とともに主流のものとする)の実現に向けての心躍る一歩となる。CDPは、15年前のCDSBの設立以来、CDSBの国際事務局を務めてきたことを誇りに思っており、価値ある指導的思考で開示の風景を変えたCDSBのチームとともに働いてきたことは名誉であった。

CDSBはCDPと同じ屋根の下ではなくなるが、CDPはIFRS財団と緊密に協力して環境報告のための国際的な財務基準に関する作業を支援していきたい。CDSB及びCDPのチーム、並びにこれを可能にしたCDSBの業務への資金提供者及び他の多数の協力者に感謝する」

エマニュエル・ファベールISSB議長

「CDSBの仲間をIFRS財団に歓迎する。開示フレームワークの開発及び市場との効果的な対話における彼らの豊かな経験から学ぶことを楽しみにしている」

 

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小森岳史
小森岳史

EnergyShift編集部 気候変動、環境活動、サステナビリティ、科学技術等を担当。

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