あふれる再エネの世界を、想像してみよう | EnergyShift

脱炭素を面白く

EnergyShift(エナジーシフト)

あふれる再エネの世界を、想像してみよう

あふれる再エネの世界を、想像してみよう

2020/12/15

再生可能エネルギーが十分に広がった社会とはどのようなものか。カーボンゼロ(脱炭素)となった社会においては、エネルギーはどのように使われているのか。新型コロナ後の世界について、日本再生可能エネルギー総合研究所の北村和也氏が、現在の技術に裏付けられた想像力と創造力によって、来るべき地域社会の姿を描く。

あふれる再生エネ電力の世界

今回は、『あふれる再生エネによって創り上げられる理想の地域社会』の最終回になる。

これまで、地域の再生エネ資源によって電気、熱、交通すべてを賄うという理想社会をその意義と実現可能性などの観点から見てきた。最後は、まとめとして、もっと具体的に頭の中に浮かべてみたい。そう、頭の中で描く『絵』のようなものである。よりファンタジーの要素が強くなってしまうが、許してもらいたい。

それでは、ある地方での想像の世界へ。

地域で発電する電力は、すべて地域の中にある再生エネ発電施設から生み出されるものである。太陽光発電を中心に、小高い場所や海岸線には風力発電も見える。地元の木質バイオマスを使ったCHP(コジェネ)と生ごみなどを利用したバイオガス発電も存在している。運のよいことに、落差と一定水量を持った川もあるため、小さ目ではあるがいくつかの小水力発電が動いている。

公共施設や民間の建物には太陽光発電設備が載っていて、基本的には自家消費で利用する。蓄電池は定置型とEV(電気自動車)の両方が備えられていて需要拡大時はもちろん、非常用とピークカット、DR(デマンドレスポンス)などに使えるようにシステム化されている。すでに、地域内で使われる電力はすべて地域内の再生エネ発電所から供給されるようになっている。もちろん、前提として、徹底的な省エネとエネルギー利用の効率化を行ったことは言うまでもない。

豊富な再生エネ電力を目当てに多くの企業が工場やオフィスをこの地域に移してきている。RE100企業やそのサプライチェーン、RE Action参加団体はこの地域に来れば確実に再生エネ電力が長期的に手に入ることを知っているのである。

電力の余剰はエリア内での融通を行うが、残りは地域外へ販売して利益を地域にもたらすようになっている。さらに、EVを含めた蓄電池は調整力としてもキープされ市場にも対応している。

これらの調整力利用や域内と広域の電力販売などはすべて地域の新電力によって行われている。地域新電力は単なる電気の小売りではなく、アグリゲータでもある。各家庭や建物の太陽光発電施設は、基本的にはPPA(第三者所有の発電システム)によって設置されたものである。可能な限り建物内の消費が行われているが、不足分供給などを地域新電力が問題なく行っている。

あふれる再エネの世界を想像してみよう

地域に残る付加価値

PPAを含む発電施設の多くは地元所有である。そこでは、地域の金融機関のファイナンスが大きな役割を果たしている。もちろん、設備のほとんどは地元の設備施工業者が建設していて、メンテナンスも請け負っている。

かくして、地域で生まれる再生エネ電力による付加価値のほぼすべてが地域に残ることになる。エネルギー費の流出はほぼゼロである。

発電施設の多くは、減価償却が終わっても一定の機材交換などを経て運転を続けることができている。バイオマスを除けば、太陽光や風力などの原料費がかからないVRE(可変的再生エネ)、つまり限界費用ゼロの発電である。電気の料金はどんどん下がり、安くなり続けていく。ここでの問題は設備投資意欲の減少であるが、すでに発電設備は公共設備というとらえ方がされていて、地域自治体もしくは関連団体による設置、保有が進んでいる。

基本的には大型の蓄電設備は必要としないが、大量かつ長期の貯蔵のために水素貯蔵が行われ、水素利用(電気、熱、交通)が始まっている。

あふれる再生エネ電力とその使い方(交通編)

再生エネ電力100%を達成するためには、あふれるほどの再生エネ電力の存在と電力の融通、貯蔵など柔軟性の確保が重要となる。ただし、蓄電池などへの過大な投資や固定的な調整力(日本で導入される容量市場など)はコストアップになるので十分にケアしている。

この地域では、大量の余剰電力をあえて発生させ交通エネルギーや熱にも利用している。いわゆるセクターカップリングという手法である。

特にEVの役割は大きい。地域の交通を再生エネだけで動かせるだけでなく、余剰電力を吸収し、必要な時に放電して使うことができるダブルの役割を果たせるからである。先を行く海外メーカーの影響もあり、日本政府も2035年までのガソリン車の新車販売の禁止をずいぶん前に決めている。

この地域では、すべての自動車がEV化されている。最初は自治体が導入し、公共施設との電気のやり取りや公共駐車場での充電を行った。さらに地域新電力も絡めた電力の柔軟性利用(調整力、VPP、DRなど)に進み、順次、民間や家庭に普及していった。

EV利用は、自動運転化と軌を一にしている。

住民の買い物難民や病院利用には、比較的小型のEVバスが多くの路線で自動運転化されている。カーシェアリングも進んでいて、ここはいわゆる大都市からある程度離れた地方であるが、自家用車の保有率は必ずしも高くない。いくつかある鉄道駅や役所、病院などのスポットには、ラストワンマイルの交通シェアリングポイント(自動車、自転車、バイク)が必ず設置されている。地域外からの観光、ビジネス客も気軽に利用できるのでなかなかの評判である。

あふれる再生エネ電力とその使い方(熱編)

熱は基本的に太陽熱利用である。

屋根上の太陽熱利用設備は、かなり前からもっとも安い熱を作り出している。また、地域内にいくつかの熱供給ポイントを作り、木質バイオマス(バークや端材)の焼却を主とした熱供給を温水で行っている。熱運搬の効率を考えて、温度は低めに設定する第四世代である。
大きな施設では、地域に存在する木質バイオマスをコジェネ使用し、独立して熱を賄えるように工夫している。特に、ごみ焼却所が役所などの公共施設からそう遠くないため、電熱ともにエリアで利用できている。

この地域でも、熱利用にはかなり苦労した。

第一に、熱を無駄にしないための断熱である。日本の建築物の断熱仕様は世界でも大変遅れており、新築はともかく既存の建物の改修にはかなり時間と費用がかかった。しかし、現在は、必要な熱エネルギー自体をこれまでの半分以下にすることに成功している。

家庭での熱利用は、現時点では多くが太陽熱に頼っている。新しく開発されるエリアでは、温水ラインを敷設したうえで住宅などが建設される。公共施設などの新設も同様となっており、いずれ再生エネによる熱がくまなく行き届くようになる。

また、熱供給システムの中には一定の大きさの熱貯蔵(温水貯蔵)が組み込まれていて、熱需要の変動に対応している。一方で、電力からのセクターカップリング(最先端のヒートポンプやプリミティブな電熱線による熱変換など)などで大量の温水による熱貯蔵も行われている。貯蔵期間は半年間でも十分可能であり、2割以内の温度下降で保たれる。

こんな地域社会を想像してみた。

この地域は、SDGsで見ても実現度が高いはずである。理想の地域社会に近いと考える。

終わりに

これを書いていて、一番に思ったことがある。

想像するのが楽しい』のである。

筆者は、この理想の地域は、決して夢ではないと思っている。まったくの私見だが、20年後にはどこかで出現するかもしれない。技術的に言えば、多くが現在のテクノロジーで達成できる。

思い出すのは、ロッキーマウンテン研究所のエイモリー・ロビンス氏が来日したときの講演の言葉である。脱化石燃料、脱原発への道筋を描いた彼の著書「新しい火の創造」でも語られているが、いつまでも心に残っている。まとめると、以下のようになる。

私が描いた新しい火の創造(脱化石燃料)には、新しい技術は必要としない。すべて、日本にある技術であり、みなさんはすでにそれを手にしている」。

世界に迫られて仕方なしではあるが、菅首相の「2050年カーボンニュートラル」宣言は評価できる。ただ、実現のための方策が「新しいテクノロジーの開発」に偏りすぎている。「2030年の脱炭素の中間目標」を60%にまで引き上げた、欧州議会議長のダビド・サッソリ氏は、「将来の進歩を期待して待つより、今行動する方がコストは低い」と訴えたことに注目する。

脱炭素は待ったなしであり、今すぐに対応できることがたくさんあることを忘れてはならない。

連載:新型コロナのエネルギーへの影響を概観してみた

北村和也
北村和也

日本再生可能エネルギー総合研究所 代表、株式会社日本再生エネリンク 代表取締役。 1979年、民間放送テレビキー局勤務。ニュース、報道でエネルギー、環境関連番組など多数制作。番組「環境パノラマ図鑑」で科学技術映像祭科学技術長官賞など受賞。1999年にドイツへ留学。環境工学を学ぶ。2001年建設会社入社。環境・再生可能エネルギー事業、海外事業、PFI事業などを行う。2009年、 再生エネ技術保有ベンチャー会社にて木質バイオマスエネルギー事業に携わる。 2011年より日本再生可能エネルギー総合研究所代表。2013年より株式会社日本再生エネリンク代表取締役。2019年4月より地域活性エネルギーリンク協議会、代表理事。 現在の主な活動は、再生エネの普及のための情報の収集と発信(特にドイツを中心とした欧州情報)。再生エネ、地域の活性化の講演、執筆、エネルギー関係のテレビ番組の構成、制作。再生エネ関係の民間企業へのコンサルティング、自治体のアドバイザー。地域エネルギー会社(地域新電力、自治体新電力含む)の立ち上げ、事業支援。